[P1-C-0301] 退院後に日常生活活動能力と自己効力感が向上した一症例
Keywords:退院後訪問調査, 自己効力感, 退院時支援
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ)は,日常生活活動能力の向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としている。今田は,日常生活活動能力は退院後においてもさらなる改善が図れることが多く,退院後の生活様式や機能上の予後とそれらに適した社会資源を調整する重要性を述べている。入院中は,身体能力に合わせて家屋評価や改修,試験外泊,外出を行い,在宅復帰まで支援しているが,退院後の日常生活活動状況を知る機会は少ない。芳野らは,退院1ヶ月後において日常生活活動能力が低下する恐れがあると報告している。歩行障害を中心とした身体機能の低下,転倒恐怖感による行動範囲の縮小や活動範囲の減少が,身体活動量の低下に繋がることは周知の通りであり,退院後の日常生活活動能力や生活の活動範囲を調査していく必要がある。自宅へ退院した症例に対して退院後訪問を実施し,日常生活活動能力の把握と生活状況を調査した。
【方法】
脳梗塞にて回復期リハへ入院し,自宅へ退院した1例に対して退院後訪問を実施した。症例は,50歳代の女性で退院時の機能的自立度評価法の運動項目は76点,日常生活活動能力は入浴動作以外修正自立から自立しており,自宅内はT字杖を使用し歩行している。要介護3の介護認定を受けており,週3回の訪問リハビリ,週2回のデイサービスを利用し入浴していた。退院後訪問は,回復期リハを退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月に訪問し,機能的自立度評価法の運動能力項目(以下,FIM-m)およびElderly Status Assessment Set(以下,E-SAS)を用いて評価を行った。各質問に対する回答は,直接症例から聴取した。FIM-mとE-SASの結果をそれぞれ退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月で比較した。
【結果】
FIM-mの得点は,退院後1ヶ月81点,退院後3ヶ月81点,6ヶ月84点と80点台前半で推移しており,屋内歩行自立レベルであった。FIM-mの項目別では,清拭が退院後1ヶ月と3ヶ月で4点,退院後6ヶ月には6点に向上した。移乗浴槽は退院後1ヶ月と3ヶ月で4点,退院後6ヶ月には5点に向上した。他の項目においては,退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月において6点から7点で推移し,FIM-mの点数に変動はなかった。E-SASでは「生活のひろがり」,「ころばない自信」,「自宅での入浴動作」,「人とのつながり」の点数が向上した。「生活のひろがり」は退院後1ヶ月と3ヶ月は5点であったが,退院後6ヶ月には10点と向上した。「ころばない自信」は,退院後1ヶ月10点,3ヶ月15点,6ヶ月で65点に向上した。「自宅での入浴動作」は退院後1ヶ月15点,3ヶ月80点,6ヶ月で100点となり,「人とのつながり」は退院後1ヶ月70点,退院後3ヶ月,6ヶ月で80点に向上した。
【考察】
FIM-mは,清拭,移乗浴槽の入浴動作に関連した項目の点数が上り,E-SASでは入浴動作能力と転倒に対する自己効力感尺度が向上した。段らは,施設入所者を対象とした研究で,転倒に対する自己効力感は日常生活動作の自立度と関連があるとしている。本症例は,E-SASにおいて転倒に対する自己効力感が退院後3ヶ月の時点で向上したこと,FIM-mの入浴動作に関連した項目の自立度が退院後6ヶ月の時点で向上したことから,転倒に対する自己効力感が入浴動作に影響を与え,自立度の向上につながったと考えた。また,転倒に対する自己効力感は,退院後3ヶ月と比較して退院後6ヶ月でさらに向上した。退院後1ヶ月で入浴動作に関連した清拭,移乗浴槽がFIM-m4点と最小介助が必要な状態で,入浴サービスを利用していたことから,本症例は入浴動作に不安があることが推察された。魚尾らは,成功体験から得られた意欲が自己効力感を作り出し,ADLの拡大へ影響力が強いと報告している。自己効力感は心理,精神的側面も関与しているため,不安のあった入浴動作が改善したことで自己効力感が向上したと考えた。田口らは,自己効力感を向上させるためには,歩行能力と複合動作能力が必要であると報告している。本症例は,清拭,移乗浴槽動作以外の日常生活活動能力を維持出来ていたことも,自己効力感が向上した一つの要因と考えた。
【理学療法学研究としての意義】
退院後訪問を行い,日常生活活動能力の維持,向上と転倒に対する自己効力感の向上は関連している可能性が示唆された。地域における生活範囲を広げるために,家屋評価や改修,試験外泊や外出だけでなく,不安な動作が安全に行えるよう動作方法を指導する必要性がある。
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ)は,日常生活活動能力の向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としている。今田は,日常生活活動能力は退院後においてもさらなる改善が図れることが多く,退院後の生活様式や機能上の予後とそれらに適した社会資源を調整する重要性を述べている。入院中は,身体能力に合わせて家屋評価や改修,試験外泊,外出を行い,在宅復帰まで支援しているが,退院後の日常生活活動状況を知る機会は少ない。芳野らは,退院1ヶ月後において日常生活活動能力が低下する恐れがあると報告している。歩行障害を中心とした身体機能の低下,転倒恐怖感による行動範囲の縮小や活動範囲の減少が,身体活動量の低下に繋がることは周知の通りであり,退院後の日常生活活動能力や生活の活動範囲を調査していく必要がある。自宅へ退院した症例に対して退院後訪問を実施し,日常生活活動能力の把握と生活状況を調査した。
【方法】
脳梗塞にて回復期リハへ入院し,自宅へ退院した1例に対して退院後訪問を実施した。症例は,50歳代の女性で退院時の機能的自立度評価法の運動項目は76点,日常生活活動能力は入浴動作以外修正自立から自立しており,自宅内はT字杖を使用し歩行している。要介護3の介護認定を受けており,週3回の訪問リハビリ,週2回のデイサービスを利用し入浴していた。退院後訪問は,回復期リハを退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月に訪問し,機能的自立度評価法の運動能力項目(以下,FIM-m)およびElderly Status Assessment Set(以下,E-SAS)を用いて評価を行った。各質問に対する回答は,直接症例から聴取した。FIM-mとE-SASの結果をそれぞれ退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月で比較した。
【結果】
FIM-mの得点は,退院後1ヶ月81点,退院後3ヶ月81点,6ヶ月84点と80点台前半で推移しており,屋内歩行自立レベルであった。FIM-mの項目別では,清拭が退院後1ヶ月と3ヶ月で4点,退院後6ヶ月には6点に向上した。移乗浴槽は退院後1ヶ月と3ヶ月で4点,退院後6ヶ月には5点に向上した。他の項目においては,退院後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月において6点から7点で推移し,FIM-mの点数に変動はなかった。E-SASでは「生活のひろがり」,「ころばない自信」,「自宅での入浴動作」,「人とのつながり」の点数が向上した。「生活のひろがり」は退院後1ヶ月と3ヶ月は5点であったが,退院後6ヶ月には10点と向上した。「ころばない自信」は,退院後1ヶ月10点,3ヶ月15点,6ヶ月で65点に向上した。「自宅での入浴動作」は退院後1ヶ月15点,3ヶ月80点,6ヶ月で100点となり,「人とのつながり」は退院後1ヶ月70点,退院後3ヶ月,6ヶ月で80点に向上した。
【考察】
FIM-mは,清拭,移乗浴槽の入浴動作に関連した項目の点数が上り,E-SASでは入浴動作能力と転倒に対する自己効力感尺度が向上した。段らは,施設入所者を対象とした研究で,転倒に対する自己効力感は日常生活動作の自立度と関連があるとしている。本症例は,E-SASにおいて転倒に対する自己効力感が退院後3ヶ月の時点で向上したこと,FIM-mの入浴動作に関連した項目の自立度が退院後6ヶ月の時点で向上したことから,転倒に対する自己効力感が入浴動作に影響を与え,自立度の向上につながったと考えた。また,転倒に対する自己効力感は,退院後3ヶ月と比較して退院後6ヶ月でさらに向上した。退院後1ヶ月で入浴動作に関連した清拭,移乗浴槽がFIM-m4点と最小介助が必要な状態で,入浴サービスを利用していたことから,本症例は入浴動作に不安があることが推察された。魚尾らは,成功体験から得られた意欲が自己効力感を作り出し,ADLの拡大へ影響力が強いと報告している。自己効力感は心理,精神的側面も関与しているため,不安のあった入浴動作が改善したことで自己効力感が向上したと考えた。田口らは,自己効力感を向上させるためには,歩行能力と複合動作能力が必要であると報告している。本症例は,清拭,移乗浴槽動作以外の日常生活活動能力を維持出来ていたことも,自己効力感が向上した一つの要因と考えた。
【理学療法学研究としての意義】
退院後訪問を行い,日常生活活動能力の維持,向上と転倒に対する自己効力感の向上は関連している可能性が示唆された。地域における生活範囲を広げるために,家屋評価や改修,試験外泊や外出だけでなく,不安な動作が安全に行えるよう動作方法を指導する必要性がある。