[P1-C-0313] 生活期脳卒中者の生活機能に関連する因子の縦断的検討
Keywords:脳卒中, デイケア, 生活支援
【はじめに,目的】
デイケアに通う要介護・要支援高齢者に対して,生活機能や主観的健康観と,運動機能や自己効力感,住環境,社会的役割などの横断的な関連性が多く報告されている。我々の昨年度の研究では,短時間デイケア利用者における生活機能,主観的健康観に関係する因子を運動機能,心理的因子,社会経済的因子の3つの側面から検討し,生活機能は手段的サポート(提供),情緒的サポート(受領),運動機能,自己効力感と関係することが示唆された。
一方,対象を生活期脳卒中者に限定した報告では,身体活動量に関連する要因を身体機能(田代,2014)や心理的要因(福尾,2014)などから検討したものは見られるが,生活機能に関して縦断的に検討した報告はない。
そこで本研究では,生活期脳卒中者の生活機能の縦断的変化を追い,それらに関連する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は,昨年度にベースライン調査を実施した当院短時間デイケアを利用している生活期脳卒中者35名のうち,追跡可能だった29名(年齢65.4±9.0歳,男性22名・女性14名,要支援1~要介護3)とした。
ベースライン調査時(T1),1年後の追跡調査時(T2)でそれぞれ運動機能測定とアンケート調査を実施した。
調査・測定項目は,老研式活動能力指標(TMIG-IC),運動機能(Timed up & Go Test[TUG],30秒起立回数),心理的因子(虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー[歩行SE,階段SE,上肢SE]),及び社会的サポート(情緒的サポート[受領/提供],手段的サポート[受領/提供])とした。
解析方法として,まず①Wilcoxonの符号付き順位検定を用いてT1とT2の各調査項目の得点の比較を行った。そして,②TMIG-ICの変化量(ΔTMIG-IC)と他調査項目の変化量との関係をSpearmanの相関係数にて検討した。解析にはSPSS ver.17.0を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
①T1からT2の各項目の中央値(四分位範囲)は,TMIG-IC:10(8-11)点から11(8-12)点,TUG:12.5(11.0-16.1)秒から12.6(10.8-15.8)秒,30秒起立回数:10.5(8-13)回から13.0(10.3-15.8)回,歩行SE:21(19.0-23.8)点から22(17-23)点,階段SE:19(13.5-22.0)点から19(15.5-21.5)点,上肢SE:19(15-23)点から19(16-23.5)点であった。
社会的サポートについて,T1からT2で情緒的サポートを受領していた者:21名から25名/提供していた者:21名から19名,手段的サポートを受領していた者:25名から25名/提供していた者:21名から26名であった。
これらの項目のうち,30秒起立回数のみ,T1からT2で有意な向上を認めた(p<0.01)。
②ΔTMIG-ICは,Δ階段SE(r=0.61),Δ上肢SE(r=0.46)と有意な相関関係を認めた(p<0.01)。
【考察】
1年間で,対象者の生活機能の有意な向上はみられなかった。一方,下肢筋力を反映しているとされる30秒起立回数は有意に向上し,デイケアでのマシントレーニングによるものと考えられた。
1年間で生活機能が向上した者は,階段や上肢に対する自信の向上がみられた。下肢筋力を反映する30秒起立回数が向上しても実際の生活機能に直結する者は少なく,生活場面での自己効力感の向上が生活機能に影響することが示唆された。歩行SEについて,階段SEや上肢SEに比較し得点の分布が高く,天井効果により生活機能の変化量と関連しなかったと考えられた。
昨年度の横断的検討では,社会的サポートが多い者ほど生活機能が高い結果であった。しかし実際に生活機能を向上させる過程では,社会的サポートを意図的に増加させることは難しく,自己効力感などの社会的サポート以外の要因が生活機能の向上に寄与する可能性が示唆された。
以上より,生活期における脳卒中片麻痺者の生活機能を向上させるためには,生活場面での自己効力感の向上が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
デイケアにおいて,生活期脳卒中者の生活機能向上に向けての理学療法士の役割は大きい。その中でも心理・社会的因子,特に自己効力感に対する介入は,生活機能向上の観点から地域在住高齢者と同様に重要であると示唆され,今後の介入方法の構築に意義があると考える。
デイケアに通う要介護・要支援高齢者に対して,生活機能や主観的健康観と,運動機能や自己効力感,住環境,社会的役割などの横断的な関連性が多く報告されている。我々の昨年度の研究では,短時間デイケア利用者における生活機能,主観的健康観に関係する因子を運動機能,心理的因子,社会経済的因子の3つの側面から検討し,生活機能は手段的サポート(提供),情緒的サポート(受領),運動機能,自己効力感と関係することが示唆された。
一方,対象を生活期脳卒中者に限定した報告では,身体活動量に関連する要因を身体機能(田代,2014)や心理的要因(福尾,2014)などから検討したものは見られるが,生活機能に関して縦断的に検討した報告はない。
そこで本研究では,生活期脳卒中者の生活機能の縦断的変化を追い,それらに関連する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は,昨年度にベースライン調査を実施した当院短時間デイケアを利用している生活期脳卒中者35名のうち,追跡可能だった29名(年齢65.4±9.0歳,男性22名・女性14名,要支援1~要介護3)とした。
ベースライン調査時(T1),1年後の追跡調査時(T2)でそれぞれ運動機能測定とアンケート調査を実施した。
調査・測定項目は,老研式活動能力指標(TMIG-IC),運動機能(Timed up & Go Test[TUG],30秒起立回数),心理的因子(虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー[歩行SE,階段SE,上肢SE]),及び社会的サポート(情緒的サポート[受領/提供],手段的サポート[受領/提供])とした。
解析方法として,まず①Wilcoxonの符号付き順位検定を用いてT1とT2の各調査項目の得点の比較を行った。そして,②TMIG-ICの変化量(ΔTMIG-IC)と他調査項目の変化量との関係をSpearmanの相関係数にて検討した。解析にはSPSS ver.17.0を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
①T1からT2の各項目の中央値(四分位範囲)は,TMIG-IC:10(8-11)点から11(8-12)点,TUG:12.5(11.0-16.1)秒から12.6(10.8-15.8)秒,30秒起立回数:10.5(8-13)回から13.0(10.3-15.8)回,歩行SE:21(19.0-23.8)点から22(17-23)点,階段SE:19(13.5-22.0)点から19(15.5-21.5)点,上肢SE:19(15-23)点から19(16-23.5)点であった。
社会的サポートについて,T1からT2で情緒的サポートを受領していた者:21名から25名/提供していた者:21名から19名,手段的サポートを受領していた者:25名から25名/提供していた者:21名から26名であった。
これらの項目のうち,30秒起立回数のみ,T1からT2で有意な向上を認めた(p<0.01)。
②ΔTMIG-ICは,Δ階段SE(r=0.61),Δ上肢SE(r=0.46)と有意な相関関係を認めた(p<0.01)。
【考察】
1年間で,対象者の生活機能の有意な向上はみられなかった。一方,下肢筋力を反映しているとされる30秒起立回数は有意に向上し,デイケアでのマシントレーニングによるものと考えられた。
1年間で生活機能が向上した者は,階段や上肢に対する自信の向上がみられた。下肢筋力を反映する30秒起立回数が向上しても実際の生活機能に直結する者は少なく,生活場面での自己効力感の向上が生活機能に影響することが示唆された。歩行SEについて,階段SEや上肢SEに比較し得点の分布が高く,天井効果により生活機能の変化量と関連しなかったと考えられた。
昨年度の横断的検討では,社会的サポートが多い者ほど生活機能が高い結果であった。しかし実際に生活機能を向上させる過程では,社会的サポートを意図的に増加させることは難しく,自己効力感などの社会的サポート以外の要因が生活機能の向上に寄与する可能性が示唆された。
以上より,生活期における脳卒中片麻痺者の生活機能を向上させるためには,生活場面での自己効力感の向上が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
デイケアにおいて,生活期脳卒中者の生活機能向上に向けての理学療法士の役割は大きい。その中でも心理・社会的因子,特に自己効力感に対する介入は,生活機能向上の観点から地域在住高齢者と同様に重要であると示唆され,今後の介入方法の構築に意義があると考える。