第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

呼吸2

2015年6月5日(金) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0334] 急性期呼吸リハビリテーション患者においてADLスコアを用いた臨床指標作成の試み

渡邊寿彦1, 三岡相至1, 深川祥平1, 押田翠2, 吉田生馬3 (1.葛西昌医会病院リハビリテーション科, 2.葛西昌医会病院整形外科, 3.葛西昌医会病院消化器内科)

キーワード:呼吸リハ, 日常生活活動, 臨床指標(Clinical Indicator)

【はじめに,目的】急性期リハビリテーション(以下,リハ)の目的は日常生活活動(以下,ADL)を早期に拡大し,入院日数を減少させることである。また,急性期リハにおいても高頻度かつ集中的にサービスを提供するリハシステムの構築が重要であり,矢野らによれば臨床指標の導入と活用が推奨されている。しかし,一日当たりのリハ実施単位数,リハ開始日とADL能力改善に関する報告は疾患別によっても異なるが,呼吸リハ患者に対する急性期リハの分析についての報告が少ない。そのため,急性期呼吸リハ患者に対してリハ実施単位数,リハ開始病日とADL能力の改善に関する関係性を検討・分析し知見を得たので報告する。
【方法】<対象>期間は2014年6月~8月。疾患別リハビリテーションにおいて呼吸器リハビリテーション料(I)に該当する22名のうち,消化器疾患2名は除外。性別は男性7名,女性13名。疾患は肺炎18名,気胸2名。転帰は自宅退院13名,施設退院5名,転院2名。平均年齢は86.3±8.9歳であった。<方法>調査項目は診療録より,年齢,性別,一日当たりの実施単位数(リハ実施総単位/リハ実施日数),入院からリハ開始日数,リハ開始日のADL能力,退院日のADL能力とした。ADL能力はBarthel Index(以下,BI)を用いて評価した。ADL能力の改善度は退院時BI点数と入院時BI点数の差とした。統計処理はExcel(2010)を使用し,偏相関係数(一日当たりのリハ単位数平均とADL改善度,リハ開始病日とADL改善度),重回帰モデルを用いて,BI改善度の予測値(一日当たりのリハ単位数とADL改善度の重回帰係数,リハ開始病日とADL改善度の重回帰係数,定数)を求めた。なお,偏相関係数の有意水準は5%未満とした。
【結果】1日当たりの実施単位数平均:5.2±1.2。リハ開始病日平均:3.8±2.4日。ADL改善度は16.0±21.5点。一日当たりの実施単位とADL改善度の偏相関係数:0.36。リハ開始病日とADL改善度の偏相関係数:0.54。一日当たりの実施単位とADL改善度の重回帰係数:5.18。リハ開始日とADL改善度の重回帰係数:4.56。定数:-27.0。すなわち,BI改善度の予測値は「BI改善度の予測値=一日当たりの実施単位数×5.18+リハ開始病日×4.56-27.0」となる。
【考察】一日当たりのリハ単位数とADL改善度の偏相関係数とリハ開始病日とADL改善度の偏相関係数を比較すると,リハ開始病日とADL改善度は有意水準を超える値であり有意に関係性があることが示唆された。これは急性期の呼吸リハ患者に対してリハ開始日が早期化することでADL能力改善に繋がることが示唆された。また,BIの予測値では一日当たりの単位数が増大すればするほど,ADL能力改善に繋がることが示唆された。反対に,リハ開始日とADL改善度の重回帰係数は正の値を示しており,超急性期はADL能力の改善を認めにくいことが示唆された。これは疾患の状態像として不安定な時期はADL能力の拡大につながりにくいと考えられる。定数は負の値を示しているため,リハ単位数が減少することによりADL能力低下をもたらすことが明らかにされた。これは臥床期間延長により廃用症候群への移行を招いてしまうのではないかと考える。ただし,ADL改善度をもたらす要因は生活歴(入院前の活動度),栄養状態,治療方針(安静の指示がある場合),投薬状況等多岐に渡る可能性があり,今後も臨床指標の精度向上に向けて症例数の増加および多岐の条件を踏まえた上での分析が必要である。
【理学療法学研究としての意義】呼吸リハ患者に対して早期からリハオーダーシステムを構築させるエビデンスとなり,医療の質を向上させる。臨床指標を導入することで質の高い医療におけるプロセス・アウトカムを明確にして,何に対して医療資源を導入すべきかを明確化させる。