[P1-C-0337] 基礎疾患のある小児科患者の急性肺炎に対し早期介入を行った1症例
キーワード:呼吸理学療法, 小児, 離床
【はじめに,目的】脳性麻痺や染色体異常等,小児期からの疾患を呈する患者は,筋緊張異常や脊柱の変形による拘束性換気障害等を合併していることが多い。さらに呼吸機能低下により排痰困難が生じ易く,肺炎となった場合は悪化しやすい。また,急性期呼吸器疾患に対する早期からの呼吸理学療法や離床の介入は呼吸ケア,ADLの維持,改善からも重要とされている。今回,急性肺炎にて人工呼吸器管理となったNoonan症候群,頭蓋骨早期癒合症患者に対して早期より呼吸理学療法,離床を行い,発病前と同レベルでのADLで自宅退院に至った症例を経験したので報告する。
【方法】急性肺炎にて当院小児科に入院した患者1名に対して,急性期より呼吸理学療法と離床を行った。[症例]20歳,女性,身長140cm,体重31kg診断名 :急性肺炎,急性呼吸不全 既往歴 :Noonan症候群,頭蓋骨早期癒合症,軟口蓋裂,左足尖足,側彎 入院前ADL :母との二人暮らし。車椅子レベルで全般的に要介助。トイレ動作時手すり把持での数歩の伝い歩きは可。発語は1,2語程度,頷きや首振りでの表出は可。バーサルインデックス(以下BI):30/100点。現病歴 H26年6月21日より咳嗽出現,22日夕方増悪し,夜間にSpO2:80%台に低下したため自宅でO2:0.5L/min投与(普段は睡眠時無呼吸症候群あり夜間のみ0.25L/min使用)。23日朝も症状改善せず当院入院。[経過]入院時所見:血液ガス分析(以下BGA)(動脈血)pH:7.24,PCO2:64mmHg,HCO3-:27.4,白血球数(以下WBC):7670μl,CRP:3.9mg/dl,体温:38.2度,心拍数:140bpm,呼吸数25回/min。胸部X線:右肺門部に浸潤影あり。急性肺炎にて抗菌薬,吸入,去痰薬,絶食,輸液管理にて治療開始された。6月24日昼より努力呼吸出現しBiPAP装着,3時間後吸引後にSpO2低下,心拍数上昇あり,急性呼吸不全のため人工呼吸器管理,ICU入室となった。6月25日CTで右上葉,左下葉にコンソリデーション認めた。7月2日抜管。7月5日BGA(静脈血)pH:7.35,PCO2:77 mmHg,HCO3-:42.5,WBC:5980μl,CRP:0.4 mg/dl.7月7日嚥下食から経口摂取開始。7月8日一般病棟へ転棟,7月23日自宅退院となった。
【結果】入院翌日の6月24日午前より一般病棟にて呼吸理学療法開始。初期評価時SpO2:92~93%(O2:12Lマスク)。胸部エア入り両側ともに弱く副雑音有り,特に左下葉減弱。活気乏しく母親の声かけにかろうじて頷きで反応あり。吸引や体交で容易にSpO2低下あり。BI:0/100点。体位ドレナージ,呼吸介助にて排痰援助行った。人工呼吸器管理中はRASS(Richmond Agitation-Sedation Scale):-1~0であり,gatch up座位や四肢自動介助運動行い,可能な限り廃用予防に努めた。抜管後はインスピロンでの酸素投与行いながらgatch up座位での呼吸介助,上下肢自動運動,端座位へと離床を行った。呼吸介助や端座位への姿勢変換でラトリングや咳嗽増加が認められ,吸引での排痰が得られた。一般病棟へ転棟後は,車椅子移乗,起立等行い,ADL場面での離床時間が確保できるよう介入を行った。7月16日より入院前のADLレベル再獲得,運動耐容能up目的にリハビリ室での平行棒内起立・歩行開始し,退院前日の7月22日まで介入継続した。最終評価時SpO2:95%以上(O2:0~0.5L/min鼻カニュレ),脈拍80~100/min,呼吸数18回/min。単語レベルでの発語あり,頷きや首振りで表出良好。食事は全粥食を介助で摂取,トイレ動作は車椅子トイレ使用し,母親の介助にて可。BI:30/100点。日中リハビリ時を中心に車椅子座位で過ごすことが可能となり,入院前とほぼ同レベルでのADLにて7月23日自宅退院となった。
【考察】安静臥床による筋骨格系や心肺機能への弊害は多数報告されており,近年,早期からのリハビリがICU-AW(Intensive Care Unit acquired weakness)予防として重要視されている。本症例では人工呼吸器装着後早期より介入し,gatch up座位や四肢自動介助運動を継続実施することで,ICU-AWを予防できたと考える。また,挿管中のリハビリ介入時において鎮静がLight sedationを維持出来ていたことも効果を高めた一因であり,適切な鎮静コントロールの重要性を再認識した。さらに,早期からの積極的な離床は換気量,咳嗽力upが推測され,呼吸状態改善に繋がり,入院中のADL改善,在宅復帰に向けてのADL再獲得へとつながったと考える。本症例はこれまでに肺炎を繰り返しており,加齢と共に1回の入院期間が長期化している傾向にある。今後の課題としては,肺炎再発予防にむけたアプローチも重要であり,介護者に対しての日常生活上の指導等も行っていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】基礎疾患のある小児科患者の急性肺炎に対して,早期より呼吸理学療法,積極的な離床を行うことは,呼吸ケアとADL改善双方の面から有効であったことが確認できた症例であった。
【方法】急性肺炎にて当院小児科に入院した患者1名に対して,急性期より呼吸理学療法と離床を行った。[症例]20歳,女性,身長140cm,体重31kg
【結果】入院翌日の6月24日午前より一般病棟にて呼吸理学療法開始。初期評価時SpO2:92~93%(O2:12Lマスク)。胸部エア入り両側ともに弱く副雑音有り,特に左下葉減弱。活気乏しく母親の声かけにかろうじて頷きで反応あり。吸引や体交で容易にSpO2低下あり。BI:0/100点。体位ドレナージ,呼吸介助にて排痰援助行った。人工呼吸器管理中はRASS(Richmond Agitation-Sedation Scale):-1~0であり,gatch up座位や四肢自動介助運動行い,可能な限り廃用予防に努めた。抜管後はインスピロンでの酸素投与行いながらgatch up座位での呼吸介助,上下肢自動運動,端座位へと離床を行った。呼吸介助や端座位への姿勢変換でラトリングや咳嗽増加が認められ,吸引での排痰が得られた。一般病棟へ転棟後は,車椅子移乗,起立等行い,ADL場面での離床時間が確保できるよう介入を行った。7月16日より入院前のADLレベル再獲得,運動耐容能up目的にリハビリ室での平行棒内起立・歩行開始し,退院前日の7月22日まで介入継続した。最終評価時SpO2:95%以上(O2:0~0.5L/min鼻カニュレ),脈拍80~100/min,呼吸数18回/min。単語レベルでの発語あり,頷きや首振りで表出良好。食事は全粥食を介助で摂取,トイレ動作は車椅子トイレ使用し,母親の介助にて可。BI:30/100点。日中リハビリ時を中心に車椅子座位で過ごすことが可能となり,入院前とほぼ同レベルでのADLにて7月23日自宅退院となった。
【考察】安静臥床による筋骨格系や心肺機能への弊害は多数報告されており,近年,早期からのリハビリがICU-AW(Intensive Care Unit acquired weakness)予防として重要視されている。本症例では人工呼吸器装着後早期より介入し,gatch up座位や四肢自動介助運動を継続実施することで,ICU-AWを予防できたと考える。また,挿管中のリハビリ介入時において鎮静がLight sedationを維持出来ていたことも効果を高めた一因であり,適切な鎮静コントロールの重要性を再認識した。さらに,早期からの積極的な離床は換気量,咳嗽力upが推測され,呼吸状態改善に繋がり,入院中のADL改善,在宅復帰に向けてのADL再獲得へとつながったと考える。本症例はこれまでに肺炎を繰り返しており,加齢と共に1回の入院期間が長期化している傾向にある。今後の課題としては,肺炎再発予防にむけたアプローチも重要であり,介護者に対しての日常生活上の指導等も行っていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】基礎疾患のある小児科患者の急性肺炎に対して,早期より呼吸理学療法,積極的な離床を行うことは,呼吸ケアとADL改善双方の面から有効であったことが確認できた症例であった。