[P1-C-0340] 慢性閉塞性肺疾患患者におけるバランス能力と身体活動量との関係性
キーワード:慢性閉塞性肺疾患, バランス, 身体活動量
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)患者ではバランス能力が低下することが指摘され,COPD患者のバランス能力と身体活動量(Physical Activity:PA)には関連があることが報告されている。COPD患者のバランス能力とPAとの関係を検討した研究では,バランス評価としてスペースと時間を要すBalance Evaluation Systems Test(BESTest)や転倒回数を聞き取り調査する手法が用いられているのが現状で,BESTestでは評価可能な環境が限られ,転倒回数聞き取り調査では客観性に劣るという欠点がある。地域包括ケアシステム構築へ向けた取り組みが推進され,住宅内で実施可能な評価の必要性が高まっている本邦においては,バランス能力とPAとの関係性を,住宅内で実施可能かつ簡便性,客観性を備えたバランス評価を用いて検討することは意義がある。
以上より,本研究では上記の条件を満たす評価としてCOPD患者のバランス評価で用いられているShort Physical Performance Battery(SPPB)とOne Leg Stance Test(OLST)を採用し,COPD患者のバランス能力とPAとの関係性を検討することと,SPPBとOLSTの有用性を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,当院へ外来通院している安定期COPD患者12名(年齢:69.3±7.5歳,BMI:21.2±2.2kg/m2,VC:3.33±0.62L,%VC:91.5±14.1%,FEV1:1.39±0.66L,%FEV1:49.8±22.9%)とした。バランス評価であるSPPBは,立位バランス,4m歩行試験,5回起立着座試験の3項目からなり,それぞれ0~4点で採点し合計点を求める。点数は最低が0点,最高が12点となる評価方法である。OLSTは,患者はどちらかの足を任意で選び,上肢を体側に下垂し,介助なしで片脚立ち位をとり保持する評価法である。継続時間は最大60秒で,60秒に達しない場合は2回まで検査を行い,最大値を採用した。PA評価には,1軸加速度計のLifecorder GS4TM(スズケン,東京)を用いた。評価期間は2週間とし,1日ごとの歩数の平均値をPAとして採用した。また,PAと関連するとされる大腿四頭筋筋力(weight bearing index:WBI),呼吸困難感(modified Medical Research Council:mMRC),運動耐容能(6-min walk distance:6MWD),健康関連QOL(COPD assessment test:CAT)を評価した。
解析はバランス能力とPAとの関連と,SPPBとOLSTの有用性を検討するため以下の手順で行った。はじめに,歩数とバランス能力・その他の評価項目の関連をPearsonの積率相関係数(r),Spearmanの順位相関係数(rs)を算出することで検討した。その後,PAと有意な相関を示した項目との関連をさらに分析するために,従属変数を歩数,独立変数を歩数と有意な相関を示した項目としてステップワイズ法を用いた重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。解析にはSPSS version.22を用いた。加えて,有用性の指標の1つとしてSPPBとOLST実施に要した時間を大まかに算出した。
【結果】
評価結果(平均±SD)は,OLST:35.9±20.6秒,SPPB:10.6±1.6点,歩数:5510.9±4742.2歩,WBI:65.3±16.8%,6MWD:428.1±176.5m,CAT:14.3±5.6点であった。
歩数と有意な相関を示したのは,OLST(r=.873,p=.005),SPPB(rs=.728,p=.041),VC(r=.788,p=.036),FVC(r=.798,p=0.031)であった。
重回帰分析では,独立変数としてOLSTが抽出され(R=.873,R2=.762,F=19.175,p=.005),以下の回帰式が得られた。回帰式:Y=277.098+129.987X(Y=歩数,X=OLST,β=.873,t=4.379,p=.005)
評価に要した時間はSPPBが10分,OLSTが3分程度であった。
【考察】
OLST,SPPBと歩数には強い相関関係が認められた。OLSTは重回帰分析においても有意な独立変数として抽出され,その寄与率は76.2%と歩数との関連が強かった。
以上のことからCOPD患者のバランス能力とPAは関連している可能性が示唆された。加えて所要時間も短く簡便に行えることからOLST,SPPBの有用性も示唆され,住宅環境でCOPD患者のバランス評価として利用可能と考えられる。本研究ではPAと関係する年齢や身体組成,大腿四頭筋筋力,呼吸困難感,運動耐容能とPAに有意な相関関係がみられなかった。これは対象者の不足による可能性があり,今後対象者を増やし検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
現在,COPD患者のバランス能力とPAとの関連を縦断的に検討した研究は無く,COPD患者のバランス能力とPAとの因果関係は明らかになっていない。よって本研究ではバランス能力とPAとの因果関係を,地域在住COPD患者を対象に縦断的に検討してくための基礎的知見を示した。
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)患者ではバランス能力が低下することが指摘され,COPD患者のバランス能力と身体活動量(Physical Activity:PA)には関連があることが報告されている。COPD患者のバランス能力とPAとの関係を検討した研究では,バランス評価としてスペースと時間を要すBalance Evaluation Systems Test(BESTest)や転倒回数を聞き取り調査する手法が用いられているのが現状で,BESTestでは評価可能な環境が限られ,転倒回数聞き取り調査では客観性に劣るという欠点がある。地域包括ケアシステム構築へ向けた取り組みが推進され,住宅内で実施可能な評価の必要性が高まっている本邦においては,バランス能力とPAとの関係性を,住宅内で実施可能かつ簡便性,客観性を備えたバランス評価を用いて検討することは意義がある。
以上より,本研究では上記の条件を満たす評価としてCOPD患者のバランス評価で用いられているShort Physical Performance Battery(SPPB)とOne Leg Stance Test(OLST)を採用し,COPD患者のバランス能力とPAとの関係性を検討することと,SPPBとOLSTの有用性を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,当院へ外来通院している安定期COPD患者12名(年齢:69.3±7.5歳,BMI:21.2±2.2kg/m2,VC:3.33±0.62L,%VC:91.5±14.1%,FEV1:1.39±0.66L,%FEV1:49.8±22.9%)とした。バランス評価であるSPPBは,立位バランス,4m歩行試験,5回起立着座試験の3項目からなり,それぞれ0~4点で採点し合計点を求める。点数は最低が0点,最高が12点となる評価方法である。OLSTは,患者はどちらかの足を任意で選び,上肢を体側に下垂し,介助なしで片脚立ち位をとり保持する評価法である。継続時間は最大60秒で,60秒に達しない場合は2回まで検査を行い,最大値を採用した。PA評価には,1軸加速度計のLifecorder GS4TM(スズケン,東京)を用いた。評価期間は2週間とし,1日ごとの歩数の平均値をPAとして採用した。また,PAと関連するとされる大腿四頭筋筋力(weight bearing index:WBI),呼吸困難感(modified Medical Research Council:mMRC),運動耐容能(6-min walk distance:6MWD),健康関連QOL(COPD assessment test:CAT)を評価した。
解析はバランス能力とPAとの関連と,SPPBとOLSTの有用性を検討するため以下の手順で行った。はじめに,歩数とバランス能力・その他の評価項目の関連をPearsonの積率相関係数(r),Spearmanの順位相関係数(rs)を算出することで検討した。その後,PAと有意な相関を示した項目との関連をさらに分析するために,従属変数を歩数,独立変数を歩数と有意な相関を示した項目としてステップワイズ法を用いた重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。解析にはSPSS version.22を用いた。加えて,有用性の指標の1つとしてSPPBとOLST実施に要した時間を大まかに算出した。
【結果】
評価結果(平均±SD)は,OLST:35.9±20.6秒,SPPB:10.6±1.6点,歩数:5510.9±4742.2歩,WBI:65.3±16.8%,6MWD:428.1±176.5m,CAT:14.3±5.6点であった。
歩数と有意な相関を示したのは,OLST(r=.873,p=.005),SPPB(rs=.728,p=.041),VC(r=.788,p=.036),FVC(r=.798,p=0.031)であった。
重回帰分析では,独立変数としてOLSTが抽出され(R=.873,R2=.762,F=19.175,p=.005),以下の回帰式が得られた。回帰式:Y=277.098+129.987X(Y=歩数,X=OLST,β=.873,t=4.379,p=.005)
評価に要した時間はSPPBが10分,OLSTが3分程度であった。
【考察】
OLST,SPPBと歩数には強い相関関係が認められた。OLSTは重回帰分析においても有意な独立変数として抽出され,その寄与率は76.2%と歩数との関連が強かった。
以上のことからCOPD患者のバランス能力とPAは関連している可能性が示唆された。加えて所要時間も短く簡便に行えることからOLST,SPPBの有用性も示唆され,住宅環境でCOPD患者のバランス評価として利用可能と考えられる。本研究ではPAと関係する年齢や身体組成,大腿四頭筋筋力,呼吸困難感,運動耐容能とPAに有意な相関関係がみられなかった。これは対象者の不足による可能性があり,今後対象者を増やし検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
現在,COPD患者のバランス能力とPAとの関連を縦断的に検討した研究は無く,COPD患者のバランス能力とPAとの因果関係は明らかになっていない。よって本研究ではバランス能力とPAとの因果関係を,地域在住COPD患者を対象に縦断的に検討してくための基礎的知見を示した。