[P1-C-0349] 学習動機づけおよび学業に取り組む姿勢と成績の関係
キーワード:学習動機づけ, 学力向上, 成績
【はじめに,目的】
理学療法士および作業療法士(PT・OT)を目指す学生の増加に伴い,学力の低い学生も増えており,学力向上への対策が必要となっている。学力の向上には動機づけの促進が必要とされており,その方法について数多く研究されてきた。そのような中,看護師をはじめとする専門職を目指す学生は入学時から学習への動機が強いという報告があり(佐藤,2012),PT・OTを目指す学生も同様の可能性が考えられる。学習への動機が強いことが学力向上に繋がるならば,入学以降の成績も向上するはずであるが,成績の変化は学生によってばらつきがあり,学力向上を促すには動機づけ以外の影響も考慮する必要があると考えられる。そこで,まずPT・OTを目指す学生を対象に成績と動機づけの強さの関連について検討して,さらに学業に影響を及ぼすと考えられる項目についてアンケート調査を行い,それらが成績に及ぼす影響について検討した。
【方法】
2014年5月に研究の趣旨を説明し同意を得た本学リハビリテーション学科1・3年生(計197名)を対象に,自己決定理論に基づく学習動機づけ尺度(安藤,2005),自律性欲求尺度(安藤,2007)についてアンケートを行った。学習動機づけ尺度は,「他者からの強制で行動する外的調整」,「消極的だが自分の意思が入る取り入れ的調整」,「自分にとって大切だからやる同一化的調整」,「自分がしたいからする内発的動機づけ」について数値化が可能である。自律性欲求尺度は,「自分で考えて決定したいという自己決定因子」と,「他者に従いたくないという独立因子」について数値化が可能である。また,アンケートには自分の成績がクラス内でどのレベルにあるかを上位,中位,下位の3段階に分けて自己申告させ,他にPT・OTを目指す意志の強さ,勉強の必要性,勉強への意欲,勉強の難しさ,勉強に費やす時間について5段階で記入させた。成績グループ間の比較にはMann-Whitney検定を行い,同一成績グループ内の多重比較にはWilcoxon検定後Bonferroni法を用いて補正した。データ間の相関にはSpearmanの順位相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
アンケートの回収率は74.9%であった。自己申告による成績は,上位11名,中位73名,下位61名であった。学習動機づけ尺度の結果,全ての成績グループで「同一化的調整」「取り入れ的調整」「内発的動機づけ」「外的調整」の順に値が大きく,それぞれの間に有意な差が認められた(p<0.01)。成績グループ間に有意な差はなかった。自律性欲求尺度の結果では,「自己決定因子」および「独立因子」ともに成績グループ間で有意な差はなかった。「成績」と「勉強を難しく感じる」の間に有意な負の相関(r=-0.30)があり,成績下位のものほど勉強を難しく感じていた。「勉強の必要性の高さ」と「勉強を難しく感じる」の間に正の相関(r=0.37)があり,勉強の必要性を感じている学生ほど勉強を難しく感じていた。また,「PT・OTを目指す意志の強さ」と「学習意欲の高さ」に有意な正の相関(r=0.40)があり,PT・OTになりたいという意志が強い学生ほど学習意欲が強かった。さらに,「学習意欲の高さ」と「学習時間」に有意な正の相関(r=0.49)があり,学習意欲が高い学生ほど学習時間も長かった。
【考察】
学習動機づけ尺度の結果が「同一化的調整」「取り入れ的調整」「内発的動機づけ」「外的調整」となったことから,看護職を対象とした研究結果と同様に,PT・OTを目指す学生も学習に対する自律性が高いことが明らかになった。しかしながら,動機づけ尺度の結果と成績の間に有意な相関はなかった。Burtonら(2006)は自己決定理論に基づく動機づけ尺度は将来の学業成績を予測しうると報告している。動機の強さは現在の学習に対する自律性を明らかにしたものであり,成績へと結びつくには時間がかかるのかもしれない。また,勉強を難しく感じている学生は成績が低い傾向にあったが,勉強の必要性の高さは実感していた。成績と学習時間の長さに強い関連があることは数多く報告されている。PT・OTを目指す意志の強い学生ほど学習時間が長いことから,分かりやすい講義と,PT・OTになりたいという意志を育むことが成績の向上に繋がると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
PT・OTを目指す学生の学習動機づけ尺度と成績の関連性が明らかになった。また,アンケートの結果から成績向上への介入方法が示唆された。PT・OTを目指す学生に対する学力向上への介入方法を検討する際の基礎的資料となりうる。
理学療法士および作業療法士(PT・OT)を目指す学生の増加に伴い,学力の低い学生も増えており,学力向上への対策が必要となっている。学力の向上には動機づけの促進が必要とされており,その方法について数多く研究されてきた。そのような中,看護師をはじめとする専門職を目指す学生は入学時から学習への動機が強いという報告があり(佐藤,2012),PT・OTを目指す学生も同様の可能性が考えられる。学習への動機が強いことが学力向上に繋がるならば,入学以降の成績も向上するはずであるが,成績の変化は学生によってばらつきがあり,学力向上を促すには動機づけ以外の影響も考慮する必要があると考えられる。そこで,まずPT・OTを目指す学生を対象に成績と動機づけの強さの関連について検討して,さらに学業に影響を及ぼすと考えられる項目についてアンケート調査を行い,それらが成績に及ぼす影響について検討した。
【方法】
2014年5月に研究の趣旨を説明し同意を得た本学リハビリテーション学科1・3年生(計197名)を対象に,自己決定理論に基づく学習動機づけ尺度(安藤,2005),自律性欲求尺度(安藤,2007)についてアンケートを行った。学習動機づけ尺度は,「他者からの強制で行動する外的調整」,「消極的だが自分の意思が入る取り入れ的調整」,「自分にとって大切だからやる同一化的調整」,「自分がしたいからする内発的動機づけ」について数値化が可能である。自律性欲求尺度は,「自分で考えて決定したいという自己決定因子」と,「他者に従いたくないという独立因子」について数値化が可能である。また,アンケートには自分の成績がクラス内でどのレベルにあるかを上位,中位,下位の3段階に分けて自己申告させ,他にPT・OTを目指す意志の強さ,勉強の必要性,勉強への意欲,勉強の難しさ,勉強に費やす時間について5段階で記入させた。成績グループ間の比較にはMann-Whitney検定を行い,同一成績グループ内の多重比較にはWilcoxon検定後Bonferroni法を用いて補正した。データ間の相関にはSpearmanの順位相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
アンケートの回収率は74.9%であった。自己申告による成績は,上位11名,中位73名,下位61名であった。学習動機づけ尺度の結果,全ての成績グループで「同一化的調整」「取り入れ的調整」「内発的動機づけ」「外的調整」の順に値が大きく,それぞれの間に有意な差が認められた(p<0.01)。成績グループ間に有意な差はなかった。自律性欲求尺度の結果では,「自己決定因子」および「独立因子」ともに成績グループ間で有意な差はなかった。「成績」と「勉強を難しく感じる」の間に有意な負の相関(r=-0.30)があり,成績下位のものほど勉強を難しく感じていた。「勉強の必要性の高さ」と「勉強を難しく感じる」の間に正の相関(r=0.37)があり,勉強の必要性を感じている学生ほど勉強を難しく感じていた。また,「PT・OTを目指す意志の強さ」と「学習意欲の高さ」に有意な正の相関(r=0.40)があり,PT・OTになりたいという意志が強い学生ほど学習意欲が強かった。さらに,「学習意欲の高さ」と「学習時間」に有意な正の相関(r=0.49)があり,学習意欲が高い学生ほど学習時間も長かった。
【考察】
学習動機づけ尺度の結果が「同一化的調整」「取り入れ的調整」「内発的動機づけ」「外的調整」となったことから,看護職を対象とした研究結果と同様に,PT・OTを目指す学生も学習に対する自律性が高いことが明らかになった。しかしながら,動機づけ尺度の結果と成績の間に有意な相関はなかった。Burtonら(2006)は自己決定理論に基づく動機づけ尺度は将来の学業成績を予測しうると報告している。動機の強さは現在の学習に対する自律性を明らかにしたものであり,成績へと結びつくには時間がかかるのかもしれない。また,勉強を難しく感じている学生は成績が低い傾向にあったが,勉強の必要性の高さは実感していた。成績と学習時間の長さに強い関連があることは数多く報告されている。PT・OTを目指す意志の強い学生ほど学習時間が長いことから,分かりやすい講義と,PT・OTになりたいという意志を育むことが成績の向上に繋がると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
PT・OTを目指す学生の学習動機づけ尺度と成績の関連性が明らかになった。また,アンケートの結果から成績向上への介入方法が示唆された。PT・OTを目指す学生に対する学力向上への介入方法を検討する際の基礎的資料となりうる。