第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

卒前教育・臨床実習2

2015年6月5日(金) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-C-0360] 使用学習方略と定期試験結果

渡邊祥子, 中村直人, 内田成男, 宮下正好 (富士リハビリテーション専門学校)

キーワード:学習方略, 定期試験, 学習指導

【はじめに,目的】
日本理学療法士協会の教育ガイドラインにおいて,卒前教育が果たす役割は,理学療法士として生涯にわたり活躍するための資質,知識,技術に関する基礎を築くこととされている。本校では知識に関する教育として,授業だけではなく学習の促しや補習などで対応してきたが,結果に出ないなど効果的な指導が行えていないように感じることがある。そこで学生が使用している学習方略に合わせて学習指導を行うことで解決できないかと考え,学習方略の使用状況について調査し,定期試験の結果を踏まえて好ましい学習方略はどのようなものなのかを検討した。
【方法】
本校理学療法学科1年生で,同意を得られた58名(男性39名,女性19名,平均年齢20.7±4.6歳)に対し,前期定期試験直前に現在使用している学習方略について佐藤らの「学習方略の使用尺度」を用いてアンケートを行った。これは31の方略を,勉強しているとき,自分がわからないところはどこかを見つけようとするなどの柔軟的方略,勉強するときは,最初に計画を立ててから始めるなどのプランニング方略,勉強で大切なところは,繰り返して書いたりして覚えるなどの作業方略,勉強するときは,最後に友達と答え合わせをするようにするなどの友人リソース方略,新しいことを勉強するとき,今までに勉強したことと関係があるかどうかを考えながら勉強するなどの認知的方略の5方略に分け,「とてもつかう」「すこしつかう」「どちらともいえない」「あまりつかわない」「まったくつかわない」の5件法で使用状況について尋ねるものである。「とてもつかう」に5点,「まったくつかわない」に1点が振られる。対象者を定期試験の平均点で,A:80点以上,B:70~79点,C:60点~69点,D:60点以下の4グループに分け,定期試験結果と使用学習方略について二元配置分散分析と多重比較を用いて,有意水準5%にて検討した。統計処理はJMP11(SAS Institute Japan)を使用した。
【結果】
定期試験は11科目行われ,Aに該当する学生は13名,Bは17名,Cは18名,Dが10名であった。グループごとの方略使用の平均は,柔軟的方略,プランニング方略,作業方略,友人リソース方略,認知的方略の順に,Aは4.05±1.20,3.92±1.17,4.13±1.24,3.63±1.23,4.37±0.91,Bは3.80±0.88,3.70±0.91,3.94±0.89,3.85±1.15,3.90±0.80でCは3.52±0.94,3.38±0.97,3.71±1.09,3.90±0.97,3.67±0.94,Dは3.31±0.90,3.40±0.90,3.63±0.95,3.45±1.07,3.54±0.86であった。成績結果の主効果は有意差が認められなかったが(F=2.57,p<0.06),学習方略ごとの主効果及び交互作用に有意差を認めた(順に,F=4.43,p<0.001;F=2.25,p<0.01)。多重比較においては,プランニング方略と,柔軟的方略及び認知的方略の間に有意差を認めた(順にp<0.03;p<0.01)。
【考察】
成績上位の学生は,自分の状況に合わせて学習方法を柔軟に変えながら,理解や精緻化,集中力といった認知的な行動を取って自己学習を行っている。成績下位の学生は,勉強で分からない時はやる順番を変えるといった柔軟な対応が取れず,分からない部分で止まってしまうか,自己学習がなされなくなるのではないかと思われる。そして内容を自分の知っている言葉で理解するようにするなどの認知的な行動で学習が行えないようである。どの学習方略を使用するかは,動機づけや自己効力感などが関係すると言われており,なおかつその学習方略に有効感を持っていないと使われない。柔軟的方略や認知的方略を使用する経験がない,使用できる力が備わってないと使用されない。これらが成績下位の学生が使用していない原因となっているのかは今後更に調査が必要である。しかしながら単に学習の仕方を指導するのではなく,使用している学習方略を確認し,柔軟的方略や認知的方略が使える状況であるかを確認した上で指導した方が効果的であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
学習方略は自己調整学習の1要素とされおり,自ら学ぶ力の基礎となる。そのため学生が使用している学習方略を確認し,適切な学習方略を修得させることは,自ら学ぶ力の育成につながると考える。