第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター8

内部障害/呼吸

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0408] 重症有機リン中毒患者における離床開始時期の検討

2例の経過から

山崎允1, 梅田幸嗣1, 眞渕敏1, 児玉典彦2, 道免和久3 (1.兵庫医科大学病院リハビリテーション部, 2.兵庫医科大学リハビリテーション部, 3.兵庫医科大学リハビリテーション医学教室)

Keywords:有機リン中毒, 離床, 指標

【目的】有機リン中毒では,体内のアセチルコリンエステラーゼ活性が阻害され,神経シナプスでアセチルコリンが過剰蓄積することで様々な症状が出現する。今回人工呼吸器など長期全身管理を要した重症例を2例経験した。中毒症状の重症度の指標として用いられる血清コリンエステラーゼ値(ChE値:正常値168~470 U/lで低値ほど重症)や臨床症状から離床開始時期について検討したので報告する。

【症例提示】(症例1)50歳代,女性。自殺企図で農薬(マラチオン)摂取。同日当院救急搬送,搬入時人工呼吸器管理となる。意識障害のため自発的な運動は認めず。(症例2)50歳代,男性。自殺企図で農薬(スミチオン)摂取。2日後に当院救急搬送。傾眠だったが自発的な運動はみられた。全身状態増悪し,9病日人工呼吸器管理となる。

【経過と考察】(症例1)呼吸理学療法から開始し,全身状態改善に伴い26病日ヘッドアップ開始。31病日人工呼吸器完全離脱。35病日端座位・立位訓練開始。46病日歩行訓練開始。最終的に病棟内物的介助下での移動が可能となり,56病日転院した。(症例2)人工呼吸器管理後呼吸理学療法施行。全身状態改善に伴い25病日ヘッドアップ開始。37病日端座位訓練開始。39病日立位訓練開始。41病日人工呼吸器完全離脱。46病日歩行訓練開始。最終的に独歩での移動が可能となり,65病日に救急入院終了した。離床開始時期は2症例ともにChE値がともに改善傾向にあった。受動座位であるヘッドアップ開始日でそれぞれ正常値下限の76%と42%で,自動座位である端座位訓練開始日ではそれぞれ80%と102%だった。先行報告で強い疲労なく運動負荷が可能となった時期のChE値は正常値下限の70%超だったとあるが,概ね今回の2例の自動座位開始時も同様だった。離床開始にあたり全身状態改善が最重要だが,経過のなかで臨床症状とともにChE値の変化を追うことは必要だと考える。