第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター9

内部障害/がん・その他

2015年6月6日(土) 11:25 〜 12:25 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0413] 顕微鏡下リンパ管静脈吻合術後に対する複合的治療の経験

~圧迫療法の変更により改善が得られた一例~

大段裕樹1, 藤井暁2, 佐藤明紀3, 信太雅洋4 (1.北見赤十字病院リハビリテーション科部, 2.北見赤十字病院形成外科, 3.KKR札幌医療センター斗南病院リハビリテーション科, 4.北海道千歳リハビリテーション学院理学療法学科)

キーワード:リンパ浮腫, 複合的治療, 圧迫療法

【目的】
本邦においてリンパ浮腫の外科的治療は,顕微鏡下リンパ管静脈吻合術(LVA)が推奨されている。術後管理として複合的治療(CDP)が重要とされているが,術後CDPの報告は少ない。今回LVA後に圧迫療法の変更によりリンパ浮腫の改善が得られた症例を経験したので報告する。
【症例提示】
70歳代男性,X-23年直腸癌により直腸切断術施行し,X-11年から左下肢の浮腫を自覚。その後X年3月から浮腫が悪化し同年11月にA病院にてLVA施行。術後,CDP目的で当院外来通院となる。
【経過と考察】
左下肢術前周径は大腿部最大(C)51.9cm,下腿部最大(c)43.4cm。A病院退院時に(C)-2.3cm,(c)-4.7cm改善を認めたが下腿部で皮膚硬化が残存した。退院時,弾性ストッキングに筒状包帯を追加し,当院でCDPを継続したところ,(C)-6.8cmと順調に改善したが,下腿は性状,周径ともに変化が乏しかった。そこでX+1年10月より圧迫圧の上昇を目的に筒状包帯から弾性包帯へ変更したところ,下腿部の硬化と周径が改善した。X+2年6月には(C)-8.0cm,(c)-7.6cmとなり,下肢左右差1cm以下となった。
症例はLVA後に改善を認めたが,その後下腿部の改善が乏しかった。その要因は活動量増加やCDPのセルフケア不足,そして浮腫発症からの期間が長く皮下が繊維化し硬化が強いことが考えられた。今回,弾性包帯の圧迫に変更することで左右差1cm以下まで改善を認めた。これは臨床所見に合わせて圧迫圧を自由に調整できる弾性包帯を用いることで,リンパ還流能や繊維化の改善により周径の減少に結びついたと考える。圧を変更させる時期について,本症例では有効であったが,包帯による術後早期圧迫に伴い,吻合部機能不全を及ぼす可能性もあり,今後も症例を重ねて圧迫圧の調整を兼ねた検討が必要である。