[P2-A-0490] 難度の違いによる二重課題の干渉効果について
キーワード:二重課題, 重心動揺, 姿勢制御
【はじめに】
立位姿勢の評価は立位姿勢のみを課題として行うSingle-task法だけでなく,姿勢制御以外に注意を向けさせたDual-task法でも評価し,変化に注目する必要があると言われている。このDual-task法については先行研究において干渉効果と認知課題の難度の違いについての報告がある。しかし,運動課題の難度の違いによる干渉効果の報告はない。そこで本研究では,運動課題,認知課題の難度を変えることによってDTの干渉効果について検討した。
【方法】
整形外科疾患および神経疾患が無い者40名(男性25名,女性15名)とした。被験者には2分間の安静座位をとらせ,Single-task(以下ST)として運動課題,認知課題の順にそれぞれ評価を行い,再び2分間の安静座位をとらせ,その後でDTの評価を行った。運動課題は両足立位(両足)または片脚立位(片脚)を,認知課題は一桁×一桁(一桁)または二桁×一桁の掛算(二桁)を用い,DTでは運動課題と認知課題で行ったものを同時に行った。
運動課題の評価には重心動揺計を用い,重心動揺計の上には裸足で立ち,両上肢は体側に沿って下垂,視線は2m前方に目線の高さに合わせて設置した注意点を注視させ,計測時間は30秒とした。なお,静止立位では両足の内側の間を10cmに設定し,片脚立位では重心動揺計の中心に足を接地させた。重心動揺は総軌跡長(LNG),左右軌跡長(XLNG),前後軌跡長(YLNG)を記録した。認知課題は験者が口頭にて問題を読み上げ,それに対して口頭にて返答させ,その正答数を記録した。また,認知課題の難度については先行研究に基づき決定した。なお,測定条件は両足・一桁,両足・二桁,片脚・一桁,片脚・二桁の4種類とし,被験者ごとにランダムに振り分け行い,各種記録を比較・検討した。
【結果】
STとDTの変化については,計算問題の正答数で両足・二桁と片脚・二桁においてDT時の正答数がST時の正答数と比較して有意に低下していた(p<0.05)。そのため,それぞれの掛け算成績の減少量を比較した結果,低下の度合いには有意差は認められなかった。また,YLNGが片脚二桁でST時と比較してDT時に有意な増加が確認された(p<0.05)。
【考察】
認知課題に用いた掛け算課題の難度について検討すると,一桁×一桁と計二桁×一桁の正答数において大きな差があるため課題難度の設定は適切であったと判断する。
認知課題の変化についてみると両足と片脚のどちらにおいても一桁×一桁の掛け算では成績の変化がみられず,二桁×一桁の掛け算では両足と片脚のどちらにおいても成績の有意な低下が認められた。そこで二桁×一桁の掛け算成績の減少量を比較したところ,差はみられなかった。このことから,認知課題の成績は運動課題の難度に関わらず,認知課題の課題難度に強く影響を受けることが考える。注意というのは要領に限界のある処理資源を処理機構の各方面に配分することである。城野らは,DTによる認知課題の成績の低下は,dual-task干渉効果で認知課題に向ける注意資源容量が減少し,認知課題の要求する注意資源容量を満たさなかったためと考えられると報告している。本研究でも二桁×一桁の掛け算を行った群では成績の低下を示していたことから,これと同様の結果になったと考える。
重心動揺の変化についてみると,片脚・二桁のYLNGで有意に増加した。この要因としては姿勢制御に必要な注意資源容量を満たさなかったことが挙げられる。これは認知課題の難度が高くなったためにより多くの注意資源が必要となり,そちらに多くの注意資源が回され,姿勢制御に必要な量を満たせなかったためと考える。しかし運動課題が違い,同じ難度の認知課題を行った両足・二桁では変化が見られなかった。そのため注意資源が必要量を満たせなかった理由として運動課題の難度が上がったことにより姿勢制御に必要な注意資源が増大したことが考えられる。運動課題,認知課題の難度がともに高くなったことにより,全体で必要となる注意資源が大きく増大したために注意資源が不足し,前後の重心動揺が増えたものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
DT下では本研究の様に姿勢制御に影響を与えることが考えられる。また認知機能は個人によって違ってくる。そのため運動機能,認知機能ともに個別に評価する必要があると考える。しかし本研究の結果から,難度を変えたDTではSTでは分からない個人の注意資源容量の評価に利用,また詳細な姿勢評価に応用できると考える。
立位姿勢の評価は立位姿勢のみを課題として行うSingle-task法だけでなく,姿勢制御以外に注意を向けさせたDual-task法でも評価し,変化に注目する必要があると言われている。このDual-task法については先行研究において干渉効果と認知課題の難度の違いについての報告がある。しかし,運動課題の難度の違いによる干渉効果の報告はない。そこで本研究では,運動課題,認知課題の難度を変えることによってDTの干渉効果について検討した。
【方法】
整形外科疾患および神経疾患が無い者40名(男性25名,女性15名)とした。被験者には2分間の安静座位をとらせ,Single-task(以下ST)として運動課題,認知課題の順にそれぞれ評価を行い,再び2分間の安静座位をとらせ,その後でDTの評価を行った。運動課題は両足立位(両足)または片脚立位(片脚)を,認知課題は一桁×一桁(一桁)または二桁×一桁の掛算(二桁)を用い,DTでは運動課題と認知課題で行ったものを同時に行った。
運動課題の評価には重心動揺計を用い,重心動揺計の上には裸足で立ち,両上肢は体側に沿って下垂,視線は2m前方に目線の高さに合わせて設置した注意点を注視させ,計測時間は30秒とした。なお,静止立位では両足の内側の間を10cmに設定し,片脚立位では重心動揺計の中心に足を接地させた。重心動揺は総軌跡長(LNG),左右軌跡長(XLNG),前後軌跡長(YLNG)を記録した。認知課題は験者が口頭にて問題を読み上げ,それに対して口頭にて返答させ,その正答数を記録した。また,認知課題の難度については先行研究に基づき決定した。なお,測定条件は両足・一桁,両足・二桁,片脚・一桁,片脚・二桁の4種類とし,被験者ごとにランダムに振り分け行い,各種記録を比較・検討した。
【結果】
STとDTの変化については,計算問題の正答数で両足・二桁と片脚・二桁においてDT時の正答数がST時の正答数と比較して有意に低下していた(p<0.05)。そのため,それぞれの掛け算成績の減少量を比較した結果,低下の度合いには有意差は認められなかった。また,YLNGが片脚二桁でST時と比較してDT時に有意な増加が確認された(p<0.05)。
【考察】
認知課題に用いた掛け算課題の難度について検討すると,一桁×一桁と計二桁×一桁の正答数において大きな差があるため課題難度の設定は適切であったと判断する。
認知課題の変化についてみると両足と片脚のどちらにおいても一桁×一桁の掛け算では成績の変化がみられず,二桁×一桁の掛け算では両足と片脚のどちらにおいても成績の有意な低下が認められた。そこで二桁×一桁の掛け算成績の減少量を比較したところ,差はみられなかった。このことから,認知課題の成績は運動課題の難度に関わらず,認知課題の課題難度に強く影響を受けることが考える。注意というのは要領に限界のある処理資源を処理機構の各方面に配分することである。城野らは,DTによる認知課題の成績の低下は,dual-task干渉効果で認知課題に向ける注意資源容量が減少し,認知課題の要求する注意資源容量を満たさなかったためと考えられると報告している。本研究でも二桁×一桁の掛け算を行った群では成績の低下を示していたことから,これと同様の結果になったと考える。
重心動揺の変化についてみると,片脚・二桁のYLNGで有意に増加した。この要因としては姿勢制御に必要な注意資源容量を満たさなかったことが挙げられる。これは認知課題の難度が高くなったためにより多くの注意資源が必要となり,そちらに多くの注意資源が回され,姿勢制御に必要な量を満たせなかったためと考える。しかし運動課題が違い,同じ難度の認知課題を行った両足・二桁では変化が見られなかった。そのため注意資源が必要量を満たせなかった理由として運動課題の難度が上がったことにより姿勢制御に必要な注意資源が増大したことが考えられる。運動課題,認知課題の難度がともに高くなったことにより,全体で必要となる注意資源が大きく増大したために注意資源が不足し,前後の重心動揺が増えたものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
DT下では本研究の様に姿勢制御に影響を与えることが考えられる。また認知機能は個人によって違ってくる。そのため運動機能,認知機能ともに個別に評価する必要があると考える。しかし本研究の結果から,難度を変えたDTではSTでは分からない個人の注意資源容量の評価に利用,また詳細な姿勢評価に応用できると考える。