[P2-A-0493] 頭頸部屈伸筋持久力比および頸部位置覚とバランス能力との関連
Keywords:頭頸部屈伸筋持久力比, 頸部位置覚, バランス能力
【はじめに,目的】
頭部を支える頸部筋は固有受容器が豊富にあり,身体の姿勢制御,眼球運動制御に重要な感覚情報を提供している。頸部筋の筋紡錘は,1gあたりの数および筋の直列配列が僧帽筋や下肢筋などと比較して非常に多い。また,頸部筋への振動刺激は,立位姿勢を前方へ傾斜させることから,姿勢制御において頸部の感覚入力の重要性が指摘されている。一方,頭部の前方突出時および頸部伸筋の筋疲労時に姿勢動揺が増加することから,頭頸部屈曲および伸展筋の持久力は,姿勢制御において頭頸部を保持する上で重要な役割を果たしている。また,頚部深層筋は,タイプI線維の割合が多く持久性に優れている。姿勢制御における頭頚部定位において,頭頸部の筋持久力を評価することは重要である。しかし,健常成人を対象とした頭頸部屈曲および伸展の筋持久力比,頸部位置覚,バランス能力の関連についての報告は少ない。本研究では,健常成人を対象に頭頸部屈曲および伸展の筋持久力比,頸部位置覚,バランス能力の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常若年女性12名,平均年齢20.6±1.1歳であった。バランス能力は重心動揺計twingravicoder6100(ANIMA)を用いて測定した。重心動揺の測定は,閉脚立位で開眼および閉眼を各60秒間行った。頸部関節位置覚の測定(relocation test,以下RT)は,椅子座位にて頭部にレーザーポインタを装着し,100cm前方の壁に投射した。安静時の投射点に対する,閉眼で頚部最大屈曲および伸展後に自覚的出発点に戻した時の投射点の距離を測定し,誤差を算出した。また,投射点の撮影は,測定時に被験者後方の三脚上に設置したデジタルカメラNEX-5(SONY)を使用し,画像解析ソフトImage J(NIH)を使用して解析した。測定条件は,屈曲および伸展を交互にそれぞれ10回行い,平均値を補正式に投入して代表値を算出した。頭頸部屈曲筋持久力(以下,MEf)は,診療台の上で対象者を背臥位とし,頭部を支えた状態でベット端より頭部を出し,支えを除いた後の頭頸部中間位保持時間を測定した。この際,前額部にスマートフォンiphone5s(apple)を設置し,傾斜角計測アプリケーションiRodin(University of Aizu)を起動し,アプリケーションの角度が3秒間5度傾いた状態で終了とした。頭頸部伸展筋持久力(以下,MEe)は,対象者を腹臥位で頭部に5 kgの重錘を設置し,他は頭頸部屈曲筋持久力と同様に測定した。頭頸部屈伸筋持久力比(以下,MEf/e)は,MEf/MEeにて算出した。統計解析は,FreeJSTAT version13.0(南江堂)を用いて分析し,有意水準5%とした。
【結果】
RTは,開眼(r=0.81,p<0.01)および閉眼(r=0.78,p<0.05)の総軌跡長と有意な正の相関があった。MEf/e(r=-0.85,p<0.05)およびMEf(r=-0.77,p<0.05)は,総軌跡長のロンベルク率と有意な負の相関があった。
【考察】
本研究の結果,RTは,開眼および閉眼における総軌跡長と有意な正の相関があった。姿勢制御において視覚,体性感覚および前庭覚の情報は統合され,身体平衡を維持している。開眼時の姿勢制御は,視覚情報が空間における身体の定位を行っており,視覚により制御される割合が高い。本研究の結果,頸部位置覚は,頭部の安定化に寄与するため,開眼時および閉眼時の両条件で身体平衡を保つために利用されていると考えられる。一方,MEf/eおよびMEfは総軌跡長のロンベルク率と負の相関があった。閉眼時は,視覚情報の欠如による空間での身体定位の代償として,頭部の定位に頭頸部屈曲および伸展筋の持続的な収縮が関与していると考えられる。さらに,頭頸部屈曲筋は,頸部の生理的前弯を支持し,頭部定位のために重要な筋であることが報告されている。このため,頭頸部屈曲筋および伸展筋の筋持久力がアンバランスであることや頭頸部屈曲筋持久力が低いことが,閉眼時の頭部の定位を保てず,重心動揺が増加したと推察される。
本研究の結果,MEf/eおよびMEfは,総軌跡長のロンベルク率と有意な負の相関があり,RTは,開眼および閉眼における総軌跡長と有意な正の相関があったことから,MEf/eおよびMEf,RTは,バランス能力と関連し,姿勢制御に影響を及ぼしている可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
健常成人を対象に,MEf/eおよびMEf,頸部位置覚とバランス能力との関連を調査することは,頸部機能と姿勢制御の関係を明らかにする上で重要である。
頭部を支える頸部筋は固有受容器が豊富にあり,身体の姿勢制御,眼球運動制御に重要な感覚情報を提供している。頸部筋の筋紡錘は,1gあたりの数および筋の直列配列が僧帽筋や下肢筋などと比較して非常に多い。また,頸部筋への振動刺激は,立位姿勢を前方へ傾斜させることから,姿勢制御において頸部の感覚入力の重要性が指摘されている。一方,頭部の前方突出時および頸部伸筋の筋疲労時に姿勢動揺が増加することから,頭頸部屈曲および伸展筋の持久力は,姿勢制御において頭頸部を保持する上で重要な役割を果たしている。また,頚部深層筋は,タイプI線維の割合が多く持久性に優れている。姿勢制御における頭頚部定位において,頭頸部の筋持久力を評価することは重要である。しかし,健常成人を対象とした頭頸部屈曲および伸展の筋持久力比,頸部位置覚,バランス能力の関連についての報告は少ない。本研究では,健常成人を対象に頭頸部屈曲および伸展の筋持久力比,頸部位置覚,バランス能力の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常若年女性12名,平均年齢20.6±1.1歳であった。バランス能力は重心動揺計twingravicoder6100(ANIMA)を用いて測定した。重心動揺の測定は,閉脚立位で開眼および閉眼を各60秒間行った。頸部関節位置覚の測定(relocation test,以下RT)は,椅子座位にて頭部にレーザーポインタを装着し,100cm前方の壁に投射した。安静時の投射点に対する,閉眼で頚部最大屈曲および伸展後に自覚的出発点に戻した時の投射点の距離を測定し,誤差を算出した。また,投射点の撮影は,測定時に被験者後方の三脚上に設置したデジタルカメラNEX-5(SONY)を使用し,画像解析ソフトImage J(NIH)を使用して解析した。測定条件は,屈曲および伸展を交互にそれぞれ10回行い,平均値を補正式に投入して代表値を算出した。頭頸部屈曲筋持久力(以下,MEf)は,診療台の上で対象者を背臥位とし,頭部を支えた状態でベット端より頭部を出し,支えを除いた後の頭頸部中間位保持時間を測定した。この際,前額部にスマートフォンiphone5s(apple)を設置し,傾斜角計測アプリケーションiRodin(University of Aizu)を起動し,アプリケーションの角度が3秒間5度傾いた状態で終了とした。頭頸部伸展筋持久力(以下,MEe)は,対象者を腹臥位で頭部に5 kgの重錘を設置し,他は頭頸部屈曲筋持久力と同様に測定した。頭頸部屈伸筋持久力比(以下,MEf/e)は,MEf/MEeにて算出した。統計解析は,FreeJSTAT version13.0(南江堂)を用いて分析し,有意水準5%とした。
【結果】
RTは,開眼(r=0.81,p<0.01)および閉眼(r=0.78,p<0.05)の総軌跡長と有意な正の相関があった。MEf/e(r=-0.85,p<0.05)およびMEf(r=-0.77,p<0.05)は,総軌跡長のロンベルク率と有意な負の相関があった。
【考察】
本研究の結果,RTは,開眼および閉眼における総軌跡長と有意な正の相関があった。姿勢制御において視覚,体性感覚および前庭覚の情報は統合され,身体平衡を維持している。開眼時の姿勢制御は,視覚情報が空間における身体の定位を行っており,視覚により制御される割合が高い。本研究の結果,頸部位置覚は,頭部の安定化に寄与するため,開眼時および閉眼時の両条件で身体平衡を保つために利用されていると考えられる。一方,MEf/eおよびMEfは総軌跡長のロンベルク率と負の相関があった。閉眼時は,視覚情報の欠如による空間での身体定位の代償として,頭部の定位に頭頸部屈曲および伸展筋の持続的な収縮が関与していると考えられる。さらに,頭頸部屈曲筋は,頸部の生理的前弯を支持し,頭部定位のために重要な筋であることが報告されている。このため,頭頸部屈曲筋および伸展筋の筋持久力がアンバランスであることや頭頸部屈曲筋持久力が低いことが,閉眼時の頭部の定位を保てず,重心動揺が増加したと推察される。
本研究の結果,MEf/eおよびMEfは,総軌跡長のロンベルク率と有意な負の相関があり,RTは,開眼および閉眼における総軌跡長と有意な正の相関があったことから,MEf/eおよびMEf,RTは,バランス能力と関連し,姿勢制御に影響を及ぼしている可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
健常成人を対象に,MEf/eおよびMEf,頸部位置覚とバランス能力との関連を調査することは,頸部機能と姿勢制御の関係を明らかにする上で重要である。