第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

生体評価学3

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0539] 動的バランス評価としての足踏み動作の有効性の検討(第2報)

足踏みリズムの違いからの検討

河西謙吾1, 小澤拓也2, 政田純兵1, 河合あづさ1 (1.社会医療法人協和会加納総合病院, 2.社会医療法人協和会)

Keywords:足踏み動作, リズム, 動的バランス評価

【目的】
我々は動的バランス評価としての足踏み動作の有効性について検討を進めており,バランス能力が低下している症例ほど総合立脚期平均割合(両脚支持期も含む)・総合両脚支持期平均割合(以下立脚期・両脚期とする)が増加,総合遊脚期平均割合(以下遊脚期とする)が減少,総合COP外周面積・総合COP前後幅(以下外周面積・前後幅とする)が増大することを報告している。しかし,検討は任意の速度のみであり,異なるリズムでの反応の変化については検討していない。そこで今回はリズムの違いが足踏み動作へ及ぼす影響について調査し,動的バランス評価としての足踏み動作の最適条件を検討したので報告する。
【方法】
対象は平成25年7月から平成26年9月に当院へ入院し,支持なく足踏みが可能な患者53名(平均年齢65.0±15.3歳,運動器疾患24名,脳血管疾患29名)とした。足踏み動作は測定板上のマーカーを足底中央で踏み,前方を注視する姿勢を開始肢位とした。測定条件は任意速度・0.8Hzのリズムに合わせた速度(以下任意・0.8Hzとする)の2条件とし,出来る限りその場で足踏みを行うように指示した。測定項目は立脚期・遊脚期・両脚期,外周面積・前後幅とし,アニマ社製ツイングラビコーダーGP-6000を用いて,3歩目から左右各々15歩(合計30歩)を取り込み周期100Hzで採取した。分析は全ての患者を対象としてリズム間の差を比較した。次に対象をBerg Balance Scaleの46点を基準として高得点群と低得点群に分類し,リズム毎に高得点群と低得点群の各測定項目を比較した。また高得点群と低得点群毎に任意と0.8Hzでの測定結果を比較した。これらに用いた統計学的手法は正規性の検定,F検定を実施した上でStudent’s t-test・Welch’s t-test・Mann-Whitney U testを用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】
全ての患者を対象者としたリズム毎の比較では0.8Hzでの足踏み動作にて両脚期が有意に延長したが,その他は有意差を認めなかった。高得点群と低得点群をそれぞれのリズム毎に比較した結果,任意・0.8Hzの両条件ともに低得点群で立脚期と両脚期が延長し,遊脚期が短縮した。外周面積と前後幅は任意で低得点群の動揺が増大したが,0.8Hzでは有意差を認めなかった。各群内でリズム間での比較の結果,低得点群の0.8Hzの条件にて立脚期と両脚期が有意に延長,遊脚期が短縮した。高得点群の全ての項目と,低得点群の外周面積・前後幅には有意差を認めなかった。

【考察】
全ての患者を対象者としたリズム間の比較では0.8Hzでの両脚期が有意に延長したことから0.8Hzでの足踏み動作は両脚期が延長することが分かる。更に高得点群と低得点群に分けて,リズム毎に比較をした結果,任意では低得点群の方が有意に立脚期・両脚期が延長,遊脚期が短縮し,外周面積と前後幅が増大していた。しかし,0.8Hzでは低得点群の方が有意に立脚期・両脚期が延長,遊脚期が短縮していたが,外周面積と前後幅は有意差を認めなかった。これら,リズムの変化に対する反応をバランス能力の良否から検討すると,歩行周期では任意・0.8Hzの条件共に高得点群の反応が優れていると考えられるが,重心動揺では低得点群は任意でのみ,高得点群に比して揺れていることになる。つまり,バランス能力が低下すると,立脚期が延長,取分け両脚期が延長し,その反面,遊脚期が短縮する。また,これに加えて重心動揺が増大するが,これらは既に明らかにされている事と一致する。任意ではこのような反応となるが,0.8Hzという遅いリズムでは反応に幾分の変化が生じるものと考えられる。0.8Hzでは低得点群の立脚期,両脚期が延長するため,むしろ重心の動揺がより減少することが考えられる。このことは各群内でのリズムの違いによる反応がこの根拠を示している。高得点群における任意と0.8Hzはすべての項目で有意差を認めないが,低得点群の任意と0.8Hzを比較した場合,有意に立脚期・両脚期が延長し,遊脚期が短縮している。また,有意差はないものの,重心動揺減少の差異はより大きいという傾向を示している。つまり,任意に比して,0.8Hzでは重心動揺の差がバランス能力を反映しにくい状況になると考えられた。このことから足踏み動作を動的バランス評価として使用する上では,歩行周期,重心動揺ともに変化を認めることのできる,任意のリズムで実施することがバランス能力の低下した症例を抽出する上で有効であると考えられた。

【理学療法学研究としての意義】
リズムの変化に伴う足踏み動作の特性を知ることは,動的バランス評価として安全で簡易な足踏み評価として確立する上での一助となる。