[P2-A-0560] 両側同時人工膝関節全置換術と片側人工膝関節全置換術の術後膝関節機能の回復過程の検討
キーワード:両側同時人工膝関節全置換術, 片側人工膝関節全置換術, 回復過程
【はじめに,目的】
当院では両側同時人工膝関節全置換術(以下,両側TKA)と片側人工膝関節全置換術(以下,片側TKA)を施行している。先行研究ではTKA患者の入院中の身体機能の回復過程についての検討は散見されるものの,退院後の回復過程について検討した研究は少ない。そのため,本研究の目的は,両側TKAと片側TKAそれぞれの術前から術後3ヶ月までの膝関節機能の回復過程を明らかにするとともに,その違いについて検討することとした。
【方法】
対象は平成25年4月から平成26年10月の間に当院にて両側TKA,あるいは片側TKAを施行した者のうち,術前,退院時,術後3ヶ月の計3回,膝関節機能測定が実施可能であった32例とした。内訳は両側TKAを施行した13例(以下,両側TKA群),片側TKAを施行した19例(以下,片側TKA群)であった。検討は術肢数を採用し,両側TKA群26膝,片側TKA群19膝として検討を行った。測定時期について,術前測定は手術前日,退院時測定は退院前日,術後3ヶ月測定は手術日より3ヶ月後の外来リハビリテーション時とした。測定項目は体重,降段動作時痛,関節可動域,最大等尺性膝関節筋力(以下,膝関節筋力)とし,術後入院期間は術前と退院時の測定日より算出した。膝関節筋力はハンドヘルドダイナモメーター(μ-TAS FI,アニマ社製)を使用し,端坐位にて膝関節屈曲・伸展の最大等尺性筋力を測定した。解析には測定値を体重で除した%BWを使用した。統計学的解析について,術前,退院時,術後3ヶ月の各時期における両側TKA群と片側TKA群の調査項目の比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いて検討した。また,両側TKA群と片側TKA群それぞれの術前,退院時,術後3ヶ月の測定項目の比較には,Friedman検討後にBonferroni補正を行った上でWilcoxonの符号付き順位検定を用いて検討した。統計学的処理にはIBM SPSS Statistics Ver.22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
術後入院期間は,両側TKA群54.3±17.3日,片側TKA群34.9±9.8日と有意な差が認められた(p<0.01)。術後3ヶ月の膝関節伸展筋力は両側TKA群22.6±4.3%BW,片側TKA群31.6±7.0%BW(p<0.01),屈曲筋力は両側TKA群13.1±5.4%BW,片側TKA群17.5±4.5%BW(p<0.05)と,片側TKA群が両側TKA群に比べ有意に高値を示し,その他の項目では群間に有意な差は認められなかった。また,両側TKA群の伸展筋力は術前26.3±7.9%BW,退院時19.1±4.6%BW,術後3ヶ月22.6±4.3%BWと,術前が退院時と術後3ヶ月に対して有意に高値を示し,退院時と術後3ヶ月の間に差は認められなかった。屈曲筋力に有意な差は認められなかった。片側TKA群の伸展筋力は術前26.9±7.0%BW,退院時18.9±5.5%BW,術後3ヶ月31.6±7.0%BWと,術前が退院時に対して有意に高値を示し,退院時に対して術後3ヶ月が有意に高値を示した。術前と術後3ヶ月の間に有意差は認められなかった。屈曲筋力は術前14.1±3.2%BW,退院時15.0±3.4%BW,術後3ヶ月17.1±5.2%BWと,術後3ヶ月が術前と退院時に対して高値を示すものの,有意な差は認められなかった。
【考察】
両側TKA群の術後入院期間は片側TKA群に比べ有意に長いにもかかわらず,退院時測定において両群の膝関節筋力に有意な差は認められなかった。また,術後3ヶ月の膝関節筋力は片側TKA群が有意に高値を示した。このことから,両側TKA群の術後回復過程は片側TKA群に比べ遅いことが示唆された。当院のTKA術後初期の理学療法は,術創部周囲の炎症症状や疼痛のコントロール,関節可動域への介入が中心に行われ,改善とともに筋力トレーニングや歩行練習へと移行していく。両側TKA群では,両側の膝関節に対して介入を行う必要があるため,片側TKA群よりも筋力トレーニングや歩行練習への移行時期が遅くなり,回復過程に差が認められたと考える。また,両側TKA群の膝関節筋力は退院時と術後3ヶ月の間に変化はなく,片側TKA群では退院時に比べ術後3ヶ月で有意な改善が認められた。このことから両側TKA群と片側TKA群では筋力の回復過程に差があり,両側TKA群では術前レベルまで回復するには3ヶ月以上の期間を要することが示唆された。両側TKA群の回復過程を明らかにするためには術後3ヶ月以降の膝関節機能についても検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
両側TKAと片側TKAそれぞれの術後の膝関節機能の回復過程が異なることが示唆された本研究の結果は,術後の介入スケジュールや目標を設定していく上で有用な結果であると考える。
当院では両側同時人工膝関節全置換術(以下,両側TKA)と片側人工膝関節全置換術(以下,片側TKA)を施行している。先行研究ではTKA患者の入院中の身体機能の回復過程についての検討は散見されるものの,退院後の回復過程について検討した研究は少ない。そのため,本研究の目的は,両側TKAと片側TKAそれぞれの術前から術後3ヶ月までの膝関節機能の回復過程を明らかにするとともに,その違いについて検討することとした。
【方法】
対象は平成25年4月から平成26年10月の間に当院にて両側TKA,あるいは片側TKAを施行した者のうち,術前,退院時,術後3ヶ月の計3回,膝関節機能測定が実施可能であった32例とした。内訳は両側TKAを施行した13例(以下,両側TKA群),片側TKAを施行した19例(以下,片側TKA群)であった。検討は術肢数を採用し,両側TKA群26膝,片側TKA群19膝として検討を行った。測定時期について,術前測定は手術前日,退院時測定は退院前日,術後3ヶ月測定は手術日より3ヶ月後の外来リハビリテーション時とした。測定項目は体重,降段動作時痛,関節可動域,最大等尺性膝関節筋力(以下,膝関節筋力)とし,術後入院期間は術前と退院時の測定日より算出した。膝関節筋力はハンドヘルドダイナモメーター(μ-TAS FI,アニマ社製)を使用し,端坐位にて膝関節屈曲・伸展の最大等尺性筋力を測定した。解析には測定値を体重で除した%BWを使用した。統計学的解析について,術前,退院時,術後3ヶ月の各時期における両側TKA群と片側TKA群の調査項目の比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いて検討した。また,両側TKA群と片側TKA群それぞれの術前,退院時,術後3ヶ月の測定項目の比較には,Friedman検討後にBonferroni補正を行った上でWilcoxonの符号付き順位検定を用いて検討した。統計学的処理にはIBM SPSS Statistics Ver.22を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
術後入院期間は,両側TKA群54.3±17.3日,片側TKA群34.9±9.8日と有意な差が認められた(p<0.01)。術後3ヶ月の膝関節伸展筋力は両側TKA群22.6±4.3%BW,片側TKA群31.6±7.0%BW(p<0.01),屈曲筋力は両側TKA群13.1±5.4%BW,片側TKA群17.5±4.5%BW(p<0.05)と,片側TKA群が両側TKA群に比べ有意に高値を示し,その他の項目では群間に有意な差は認められなかった。また,両側TKA群の伸展筋力は術前26.3±7.9%BW,退院時19.1±4.6%BW,術後3ヶ月22.6±4.3%BWと,術前が退院時と術後3ヶ月に対して有意に高値を示し,退院時と術後3ヶ月の間に差は認められなかった。屈曲筋力に有意な差は認められなかった。片側TKA群の伸展筋力は術前26.9±7.0%BW,退院時18.9±5.5%BW,術後3ヶ月31.6±7.0%BWと,術前が退院時に対して有意に高値を示し,退院時に対して術後3ヶ月が有意に高値を示した。術前と術後3ヶ月の間に有意差は認められなかった。屈曲筋力は術前14.1±3.2%BW,退院時15.0±3.4%BW,術後3ヶ月17.1±5.2%BWと,術後3ヶ月が術前と退院時に対して高値を示すものの,有意な差は認められなかった。
【考察】
両側TKA群の術後入院期間は片側TKA群に比べ有意に長いにもかかわらず,退院時測定において両群の膝関節筋力に有意な差は認められなかった。また,術後3ヶ月の膝関節筋力は片側TKA群が有意に高値を示した。このことから,両側TKA群の術後回復過程は片側TKA群に比べ遅いことが示唆された。当院のTKA術後初期の理学療法は,術創部周囲の炎症症状や疼痛のコントロール,関節可動域への介入が中心に行われ,改善とともに筋力トレーニングや歩行練習へと移行していく。両側TKA群では,両側の膝関節に対して介入を行う必要があるため,片側TKA群よりも筋力トレーニングや歩行練習への移行時期が遅くなり,回復過程に差が認められたと考える。また,両側TKA群の膝関節筋力は退院時と術後3ヶ月の間に変化はなく,片側TKA群では退院時に比べ術後3ヶ月で有意な改善が認められた。このことから両側TKA群と片側TKA群では筋力の回復過程に差があり,両側TKA群では術前レベルまで回復するには3ヶ月以上の期間を要することが示唆された。両側TKA群の回復過程を明らかにするためには術後3ヶ月以降の膝関節機能についても検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
両側TKAと片側TKAそれぞれの術後の膝関節機能の回復過程が異なることが示唆された本研究の結果は,術後の介入スケジュールや目標を設定していく上で有用な結果であると考える。