[P2-A-0569] 脊柱後弯と膝関節機能の関連性
―円背指数と膝伸展筋力・可動域の関係―
Keywords:円背指数, 膝関節機能, 等尺性膝伸展筋力
【はじめに,目的】
臨床現場において脊柱後弯を呈する高齢者が多くみられ,腰痛や膝関節痛等の関節痛を生じている事が多い。この理由としてアライメント変化が挙げられ,脊柱後弯姿勢のアライメント変化は,運動連鎖により骨盤後傾,膝関節屈曲・内反変形を伴うことが多い。渡辺らによると,高齢女性において円背と膝屈曲拘縮および膝伸展筋力低下に関連を認めた。しかし,脊柱後弯の角度における膝伸展角度・筋力のそれぞれの相関性は示されていない。脊柱後弯の角度に応じた膝伸展可動域・膝伸展筋力のそれぞれの相関性が示唆されることによって,姿勢制御能力に影響を与える要因として挙げられる膝伸展制限や膝伸展筋力低下に対して,膝関節の局所的な治療のみでは改善が困難であるといえる。そこで,脊柱後弯角度を臨床現場で簡便に実施できる自由曲線定規を用いた円背指数を用いて,膝伸展可動域・膝伸展筋力との関連性を調査した。
【方法】
対象者は,当院に外来通院している下肢・体幹に整形外科的な手術を行っていない高齢者14名(74.6歳±10.2)とした。立位保持にて,Milneらの方法を参考に円背指数の計測を行った。測定器具は市販されている自由曲線定規(STAEDTLER社)60cmを用いた。まず対象者の背部の第7頸椎(以下C7)から第4腰椎(以下L4)棘突起にあて,その形状を紙にトレースした。その後,C7とL4を結ぶ直線をL(cm),直線Lから弯曲の頂点までの距離をH(cm)とし,H/L×100として円背指数を算出し,3回実施した平均値を各対象者の代表値とした。測定はすべて同一検者によって実施した。
膝伸展可動域は日本リハビリテーション医学会および日本整形外科学会にて定められた基本軸(大腿骨と大腿骨外顆の中心),移動軸(下腿骨 腓骨小頭より腓骨果)をもとに背臥位にてゴニオメーター(OG技研社製)を用い計測を行った。
膝伸展筋力の測定は,徒手筋力計HHD(アイソフォースGT-300 OG技研社製)を用いた。肢位は端坐位,膝関節屈曲90度位にて等尺性収縮筋力を5秒間測定した。事前に練習を行い,左右両側共に3回実施し,その平均値を抽出した。測定の際には,1回毎に30秒の休憩を挟み実施した。
統計処理は,円背指数と左右の膝伸展筋力および可動域の関係性を統計ソフト(JSTAT)を用い,Spearman順位相関を行った。有意水準は5%以下とした。
【結果】
円背指数と両側の膝伸展筋力の間に左右共に,強い負の相関関係が認められた。(右r=-0.7626 p=0.0060,左r=-0.8154 p=0.0030)。
円背指数と両側の膝伸展可動域においては,有意水準5%において相関関係は認められなかった(右r=-0.0904 p=0.7444,左r=-0.2323 p=0.4023)。
【考察】
本研究の結果より,円背指数と膝伸展可動域間に相関関係は認められず,円背指数と膝伸展筋力間に強い相関が認められた。この結果より,円背姿勢は膝伸展可動域に及ぼす影響は大きくないといえる。また,渡辺らは視診により姿勢評価を行い腰椎前弯消失・腰椎後弯を円背ありとし,円背と膝屈曲拘縮の関連性を示している。しかし,本研究では相関性が認められなかった。これは本研究では膝伸展可動域を背臥位(非荷重下)にて計測したことが原因として考えられる。原田らによる脊柱後弯からの運動連鎖は,重心が関係しており,非荷重下で計測した本研究では有意な関連性が認められなかったと考える。
円背指数と膝伸展筋力に強い相関が認められた原因として,脊柱の骨性支持が関与すると考えられる。体力低下によって体の支持性は筋性から骨性支持に移行し,この移行は脊柱の柔軟性を低下させる。脊柱柔軟性低下は体幹下肢の筋出力抑制につながるとされており,このSpineDynamics療法の理論と同様の研究結果が得られたと示唆された。また,膝伸展筋力の測定時に骨盤後傾を防止し膝屈曲位での等尺性収縮を測定したため,大腿直筋は働きにくく広筋群有意の膝伸展筋力の測定と考えられ,円背指数が大きい方が広筋群の筋力は低下していると考えられた。
立位時の膝伸展制限は姿勢制御能力に影響を与える要因として挙げられるため,今後は被験者数を増やすと共に,CKCでの膝伸展可動域と円背指数の関連性を調査していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
脊柱後弯は運動連鎖によって多関節にアライメント変化をもたらしており,多々の関節痛の原因とされている。そのため,脊柱後弯が膝関節機能にどの程度の影響を及ぼしているのか明確にすることで,理学療法アプローチの方法の幅が広がると考えられる。
臨床現場において脊柱後弯を呈する高齢者が多くみられ,腰痛や膝関節痛等の関節痛を生じている事が多い。この理由としてアライメント変化が挙げられ,脊柱後弯姿勢のアライメント変化は,運動連鎖により骨盤後傾,膝関節屈曲・内反変形を伴うことが多い。渡辺らによると,高齢女性において円背と膝屈曲拘縮および膝伸展筋力低下に関連を認めた。しかし,脊柱後弯の角度における膝伸展角度・筋力のそれぞれの相関性は示されていない。脊柱後弯の角度に応じた膝伸展可動域・膝伸展筋力のそれぞれの相関性が示唆されることによって,姿勢制御能力に影響を与える要因として挙げられる膝伸展制限や膝伸展筋力低下に対して,膝関節の局所的な治療のみでは改善が困難であるといえる。そこで,脊柱後弯角度を臨床現場で簡便に実施できる自由曲線定規を用いた円背指数を用いて,膝伸展可動域・膝伸展筋力との関連性を調査した。
【方法】
対象者は,当院に外来通院している下肢・体幹に整形外科的な手術を行っていない高齢者14名(74.6歳±10.2)とした。立位保持にて,Milneらの方法を参考に円背指数の計測を行った。測定器具は市販されている自由曲線定規(STAEDTLER社)60cmを用いた。まず対象者の背部の第7頸椎(以下C7)から第4腰椎(以下L4)棘突起にあて,その形状を紙にトレースした。その後,C7とL4を結ぶ直線をL(cm),直線Lから弯曲の頂点までの距離をH(cm)とし,H/L×100として円背指数を算出し,3回実施した平均値を各対象者の代表値とした。測定はすべて同一検者によって実施した。
膝伸展可動域は日本リハビリテーション医学会および日本整形外科学会にて定められた基本軸(大腿骨と大腿骨外顆の中心),移動軸(下腿骨 腓骨小頭より腓骨果)をもとに背臥位にてゴニオメーター(OG技研社製)を用い計測を行った。
膝伸展筋力の測定は,徒手筋力計HHD(アイソフォースGT-300 OG技研社製)を用いた。肢位は端坐位,膝関節屈曲90度位にて等尺性収縮筋力を5秒間測定した。事前に練習を行い,左右両側共に3回実施し,その平均値を抽出した。測定の際には,1回毎に30秒の休憩を挟み実施した。
統計処理は,円背指数と左右の膝伸展筋力および可動域の関係性を統計ソフト(JSTAT)を用い,Spearman順位相関を行った。有意水準は5%以下とした。
【結果】
円背指数と両側の膝伸展筋力の間に左右共に,強い負の相関関係が認められた。(右r=-0.7626 p=0.0060,左r=-0.8154 p=0.0030)。
円背指数と両側の膝伸展可動域においては,有意水準5%において相関関係は認められなかった(右r=-0.0904 p=0.7444,左r=-0.2323 p=0.4023)。
【考察】
本研究の結果より,円背指数と膝伸展可動域間に相関関係は認められず,円背指数と膝伸展筋力間に強い相関が認められた。この結果より,円背姿勢は膝伸展可動域に及ぼす影響は大きくないといえる。また,渡辺らは視診により姿勢評価を行い腰椎前弯消失・腰椎後弯を円背ありとし,円背と膝屈曲拘縮の関連性を示している。しかし,本研究では相関性が認められなかった。これは本研究では膝伸展可動域を背臥位(非荷重下)にて計測したことが原因として考えられる。原田らによる脊柱後弯からの運動連鎖は,重心が関係しており,非荷重下で計測した本研究では有意な関連性が認められなかったと考える。
円背指数と膝伸展筋力に強い相関が認められた原因として,脊柱の骨性支持が関与すると考えられる。体力低下によって体の支持性は筋性から骨性支持に移行し,この移行は脊柱の柔軟性を低下させる。脊柱柔軟性低下は体幹下肢の筋出力抑制につながるとされており,このSpineDynamics療法の理論と同様の研究結果が得られたと示唆された。また,膝伸展筋力の測定時に骨盤後傾を防止し膝屈曲位での等尺性収縮を測定したため,大腿直筋は働きにくく広筋群有意の膝伸展筋力の測定と考えられ,円背指数が大きい方が広筋群の筋力は低下していると考えられた。
立位時の膝伸展制限は姿勢制御能力に影響を与える要因として挙げられるため,今後は被験者数を増やすと共に,CKCでの膝伸展可動域と円背指数の関連性を調査していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
脊柱後弯は運動連鎖によって多関節にアライメント変化をもたらしており,多々の関節痛の原因とされている。そのため,脊柱後弯が膝関節機能にどの程度の影響を及ぼしているのか明確にすることで,理学療法アプローチの方法の幅が広がると考えられる。