[P2-A-0575] 人工膝関節置換術患者の術前のSF-36と退院時の歩行能力との関係について
キーワード:人工膝関節置換術, SF-36, 歩行能力
【はじめに,目的】人工膝関節置換術は除痛を目的として行われ,歩行能力やADLを改善させることが知られている。臨床において術前評価から術後の機能回復を予測することはリハビリテーション(以下リハビリ)を円滑に進める上で重要である。先行研究によると,術前の膝関節屈曲可動域が術後の膝関節屈曲可動域に影響を与えることが示唆されている。また,術前のtimed up and go test(以下TUG)は,TKA術後早期の歩行獲得を予測する因子であることが示唆されている。しかし,術前の包括的な健康関連Quality of Life(以下QOL)と退院時の歩行能力との関係は明らかにされていない。本研究は人工膝関節全置換術(以下TKA),人工膝関節単顆置換術(以下UKA)施行前のMedical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36)と退院時の歩行能力との関係について明らかにすることを目的とした。
【方法】本研究の対象は,平成25年8月から平成26年5月までに当院にてTKA,UKAを施行した患者53例(男性6名,女性47名,平均年齢75.5±7.5歳)とした。そのうちTKA42名,UKA11名であった。骨壊死,リウマチなど変性疾患以外の原因によるTKA,UKA施行患者は除外した。評価項目は,TUG,5m歩行,SF-36 version2(スタンダード版)を用いた。TUGは椅子から立ち上がり3mを歩いた後,目印を回り元の椅子に着座するまでの時間を計測した。5m歩行は助走路(各1m)を含めた約7mの直線歩行路における歩行時間を計測した。それぞれ歩行テストは,計測を2回行い,タイムが速い方を採用した。SF-36は,8つの健康概念を測定するための36の質問項目から成り立っており,8つの下位尺度から構成されている。(1)身体機能(以下PF),(2)日常役割機能-身体(以下RP),(3)体の痛み(以下BP),(4)全体的健康感(以下GH),(5)活力(以下VT),(6)社会生活機能(以下SF),(7)日常役割機能-精神(以下RE),(8)心の健康(以下MH)からなる。合計得点が高いほど各尺度における健康関連QOLが優れていることを示す。評価時期は,術前評価を手術前日,退院時評価を退院前日に行った。当院ではTKAは術後26日目,UKAは術後21日目で退院となる。術後のリハビリは,TKA,UKAともに術後2日目から車椅子移乗練習を開始し,関節可動域訓練,筋力トレーニング,歩行練習,日常生活動作練習を退院前日まで実施した。それぞれ理学療法士,作業療法士が介入し,1日2回リハビリを行った。TKAでは,平行棒内歩行から開始し,術後1週で固定式歩行器,術後2週で車輪付き歩行器,術後3週で2本杖,1本杖へと変更した。UKAでは,平行棒内歩行から開始し,術後1週で車輪付き歩行器,術後2週で2本杖,1本杖へと変更した。統計処理にはSpearmanの順位相関係数を用いて術前のSF-36と退院時の歩行能力との関係を検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】術前のSF-36下位尺度の平均は,(1)PF37.6点,(2)RP39.7点,(3)BP36.5点,(4)GH54.6点,(5)VT49.8点,(6)SF67.2点,(7)RE49.8点,(8)MH59.8点であった。退院時の歩行能力の平均は,TUG14.6秒,5m歩行6.3秒であった。術前PFと退院時TUG(r=-0.47,p=0.000)および5m歩行(r=-0.46,p=0.000)に有意な負の相関が認められた。
【考察】SF-36は自己報告式の健康状態調査票であり,主観的な評価である。PFの質問項目は,激しい活動から入浴や更衣といった生活上の動作まで,様々な身体機能レベルを10項目で尋ねている。術前PFは主観的な身体機能を示し,患者自身が日常生活動作や歩行に対し,どれだけ努力を要すると考えていたかを把握することが可能である。歩行テストは客観的な歩行能力を示し,TUGが歩行のみならず,起立動作や方向転換,着座動作などによって構成されていることから,動的バランスを評価する指標として有用である。本研究では,術前PFの得点が高い人ほど,退院時のTUG,5m歩行のタイムが速いという関係が認められた。先行研究において,術前の身体機能が術後の歩行に影響を及ぼすことは知られており,本研究でも同様の結果が得られたと考えられる。術前の主観的な身体機能が高い人ほど,退院時の客観的な歩行能力も良好であったことから,術前から患者自身による身体機能の把握が行えていたと考えられる。
【理学療法研究としての意義】本研究の結果から術前PFは退院時の歩行能力を予測する指標として,有効であることが示唆された。また,術前の主観的な身体機能を良好に保つことは,術後の歩行能力の拡大を図るリハビリにおいて重要であると考えられる。
【方法】本研究の対象は,平成25年8月から平成26年5月までに当院にてTKA,UKAを施行した患者53例(男性6名,女性47名,平均年齢75.5±7.5歳)とした。そのうちTKA42名,UKA11名であった。骨壊死,リウマチなど変性疾患以外の原因によるTKA,UKA施行患者は除外した。評価項目は,TUG,5m歩行,SF-36 version2(スタンダード版)を用いた。TUGは椅子から立ち上がり3mを歩いた後,目印を回り元の椅子に着座するまでの時間を計測した。5m歩行は助走路(各1m)を含めた約7mの直線歩行路における歩行時間を計測した。それぞれ歩行テストは,計測を2回行い,タイムが速い方を採用した。SF-36は,8つの健康概念を測定するための36の質問項目から成り立っており,8つの下位尺度から構成されている。(1)身体機能(以下PF),(2)日常役割機能-身体(以下RP),(3)体の痛み(以下BP),(4)全体的健康感(以下GH),(5)活力(以下VT),(6)社会生活機能(以下SF),(7)日常役割機能-精神(以下RE),(8)心の健康(以下MH)からなる。合計得点が高いほど各尺度における健康関連QOLが優れていることを示す。評価時期は,術前評価を手術前日,退院時評価を退院前日に行った。当院ではTKAは術後26日目,UKAは術後21日目で退院となる。術後のリハビリは,TKA,UKAともに術後2日目から車椅子移乗練習を開始し,関節可動域訓練,筋力トレーニング,歩行練習,日常生活動作練習を退院前日まで実施した。それぞれ理学療法士,作業療法士が介入し,1日2回リハビリを行った。TKAでは,平行棒内歩行から開始し,術後1週で固定式歩行器,術後2週で車輪付き歩行器,術後3週で2本杖,1本杖へと変更した。UKAでは,平行棒内歩行から開始し,術後1週で車輪付き歩行器,術後2週で2本杖,1本杖へと変更した。統計処理にはSpearmanの順位相関係数を用いて術前のSF-36と退院時の歩行能力との関係を検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】術前のSF-36下位尺度の平均は,(1)PF37.6点,(2)RP39.7点,(3)BP36.5点,(4)GH54.6点,(5)VT49.8点,(6)SF67.2点,(7)RE49.8点,(8)MH59.8点であった。退院時の歩行能力の平均は,TUG14.6秒,5m歩行6.3秒であった。術前PFと退院時TUG(r=-0.47,p=0.000)および5m歩行(r=-0.46,p=0.000)に有意な負の相関が認められた。
【考察】SF-36は自己報告式の健康状態調査票であり,主観的な評価である。PFの質問項目は,激しい活動から入浴や更衣といった生活上の動作まで,様々な身体機能レベルを10項目で尋ねている。術前PFは主観的な身体機能を示し,患者自身が日常生活動作や歩行に対し,どれだけ努力を要すると考えていたかを把握することが可能である。歩行テストは客観的な歩行能力を示し,TUGが歩行のみならず,起立動作や方向転換,着座動作などによって構成されていることから,動的バランスを評価する指標として有用である。本研究では,術前PFの得点が高い人ほど,退院時のTUG,5m歩行のタイムが速いという関係が認められた。先行研究において,術前の身体機能が術後の歩行に影響を及ぼすことは知られており,本研究でも同様の結果が得られたと考えられる。術前の主観的な身体機能が高い人ほど,退院時の客観的な歩行能力も良好であったことから,術前から患者自身による身体機能の把握が行えていたと考えられる。
【理学療法研究としての意義】本研究の結果から術前PFは退院時の歩行能力を予測する指標として,有効であることが示唆された。また,術前の主観的な身体機能を良好に保つことは,術後の歩行能力の拡大を図るリハビリにおいて重要であると考えられる。