[P2-A-0633] 先天性食道閉鎖症児一症例に対する離乳食経口摂取に向けたチームアプローチ
Keywords:経口摂取, チームアプローチ, 先天性食道閉鎖
【はじめに,目的】
先天性食道閉鎖症児は全身管理のために出生直後から長期間の経管栄養や合併する胃食道逆流症による嘔吐などが継続し。先天性食道閉鎖症児では,口腔機能の発達や離乳食開始に重要な因子である哺乳の機会が少ないために,出生直後からの口腔機能に対するアプローチが望まれる。今回,乳児期から家族,医師,看護師,病棟保育士など多職種で連携した介入支援を実施し,離乳食開始がスムーズに行えた症例を担当したので,チームアプローチにおいて実施した理学療法および経過について報告する。
【方法】
症例は在胎39週1日,体重2450gにて出生。アプガースコア9/10。診断名:食道閉鎖症(C型:下部食道瘻孔は気管分岐部)。日齢0胃瘻造設術施行。日齢4胸腔鏡下食道閉鎖症根治術施行。その後40mlまでは経口摂取が可能であったが,徐々に経口摂取量が減少し,日齢69上部消化管造影検査の結果,食道狭窄を確認。日齢74上部消化管内視鏡食道狭窄拡張術施行。日齢105理学療法開始。この症例の新生児期から乳児期までの理学療法士による経口摂取練習・運動発達の促進を中心とした発達支援・チームアプローチの有効性について考察を行った。
【結果】
食道閉鎖根治術後,食道狭窄拡張術施行を施行するも更なる食道狭窄と胃食道逆流症による頻回の嘔吐により徐々に吸啜,嚥下をしなくなったため,日齢105理学療法開始。初回介入時は乳首やシリンジを口腔内に入れる際に拒否はないものの舌は突出傾向にあり,すぐに嘔吐反射が出現した。経管栄養チューブの自己抜去防止のために常に手袋をしており,手と手の協調,手と口の協調など運動発達の遅れが懸念されたため,運動発達の促進と口腔機能の発達の促進を目的に介入を実施した。理学療法内容として①口腔周囲・口腔内の過敏性軽減のためのマッサージ②手と口の協調遊び③座位の安定など粗大運動の発達の促進を行った。
経過中,胃食道逆流症による頻回な嘔吐により,喘鳴,咳,反復性呼吸器感染(肺炎)等を繰り返していたため,日齢161に腹腔鏡下噴門形成術施行。嘔吐がなくなると同時に徐々に口腔内の唾液の処理もスムーズになり,喃語も活発になった。また乳首やシリンジでの哺乳も少量より経口摂取可能となった。
日齢180嗅覚・味覚の発達,随意嚥下の発達のため離乳食を開始。両親,看護師には,安全な離乳食摂取への理解を深めるための注意事項やアドバイスを記載したパンフレットを作成し活用した。離乳食初回よりスプーンが口に近づいた際の開口,顎・口唇の随意的な閉鎖,スムーズな嚥下反射の出現が認められ,離乳食をスムーズに開始することができた。また,空腹時にあわせて経口摂取を実施し同時に経管栄養の注入を行うよう時間の調整も自宅で実施できるよう設定した。
日齢198自宅退院し,退院後は月1回の外来受診時に運動発達の確認や自宅での遊び方のアドバイス,離乳食の形態評価等の実施を継続。1才4ヵ月現在,同年代の乳児と同様の形態の離乳食摂取が実施できており,運動発達も月齢相当の発達を確認している。
【考察】
早期から経管栄養を実施していた児では,口腔への刺激に対して過敏な反応を示すことが多く,スプーンや食物などに対し拒否的な反応を示すことがある。今回,口腔周囲・口腔内の過敏性軽減のためのマッサージや手と口の協調遊び等を生後3ヶ月から家族,看護師等に指導し,日常生活の中で口腔へのアプローチの機会を増やすと同時に,離乳食摂取時に必要な座位等の粗大運動の促進の介入を継続することで顎位の安定,押しつぶしや咀噛に力強さと協調性をもたらし,口腔機能の発達促進にも有用であり随意嚥下を容易にした。また,上記の情報を両親,医師,看護師,病棟保育士等,多職種で共有し理解を深め児への介入を統一できたことが有用であったと考えられる。また,経口摂取による食物の食道通過がさらなる食道吻合部の狭窄を予防し離乳食の形態の変化にも対応できたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
全身管理および口腔・運動発達・認知機能発達を促すチームアプローチが必要な小児外科疾患における理学療法士の役割を検討する必要性があり,本症例報告は理学療法研究として意義があると考える。
先天性食道閉鎖症児は全身管理のために出生直後から長期間の経管栄養や合併する胃食道逆流症による嘔吐などが継続し。先天性食道閉鎖症児では,口腔機能の発達や離乳食開始に重要な因子である哺乳の機会が少ないために,出生直後からの口腔機能に対するアプローチが望まれる。今回,乳児期から家族,医師,看護師,病棟保育士など多職種で連携した介入支援を実施し,離乳食開始がスムーズに行えた症例を担当したので,チームアプローチにおいて実施した理学療法および経過について報告する。
【方法】
症例は在胎39週1日,体重2450gにて出生。アプガースコア9/10。診断名:食道閉鎖症(C型:下部食道瘻孔は気管分岐部)。日齢0胃瘻造設術施行。日齢4胸腔鏡下食道閉鎖症根治術施行。その後40mlまでは経口摂取が可能であったが,徐々に経口摂取量が減少し,日齢69上部消化管造影検査の結果,食道狭窄を確認。日齢74上部消化管内視鏡食道狭窄拡張術施行。日齢105理学療法開始。この症例の新生児期から乳児期までの理学療法士による経口摂取練習・運動発達の促進を中心とした発達支援・チームアプローチの有効性について考察を行った。
【結果】
食道閉鎖根治術後,食道狭窄拡張術施行を施行するも更なる食道狭窄と胃食道逆流症による頻回の嘔吐により徐々に吸啜,嚥下をしなくなったため,日齢105理学療法開始。初回介入時は乳首やシリンジを口腔内に入れる際に拒否はないものの舌は突出傾向にあり,すぐに嘔吐反射が出現した。経管栄養チューブの自己抜去防止のために常に手袋をしており,手と手の協調,手と口の協調など運動発達の遅れが懸念されたため,運動発達の促進と口腔機能の発達の促進を目的に介入を実施した。理学療法内容として①口腔周囲・口腔内の過敏性軽減のためのマッサージ②手と口の協調遊び③座位の安定など粗大運動の発達の促進を行った。
経過中,胃食道逆流症による頻回な嘔吐により,喘鳴,咳,反復性呼吸器感染(肺炎)等を繰り返していたため,日齢161に腹腔鏡下噴門形成術施行。嘔吐がなくなると同時に徐々に口腔内の唾液の処理もスムーズになり,喃語も活発になった。また乳首やシリンジでの哺乳も少量より経口摂取可能となった。
日齢180嗅覚・味覚の発達,随意嚥下の発達のため離乳食を開始。両親,看護師には,安全な離乳食摂取への理解を深めるための注意事項やアドバイスを記載したパンフレットを作成し活用した。離乳食初回よりスプーンが口に近づいた際の開口,顎・口唇の随意的な閉鎖,スムーズな嚥下反射の出現が認められ,離乳食をスムーズに開始することができた。また,空腹時にあわせて経口摂取を実施し同時に経管栄養の注入を行うよう時間の調整も自宅で実施できるよう設定した。
日齢198自宅退院し,退院後は月1回の外来受診時に運動発達の確認や自宅での遊び方のアドバイス,離乳食の形態評価等の実施を継続。1才4ヵ月現在,同年代の乳児と同様の形態の離乳食摂取が実施できており,運動発達も月齢相当の発達を確認している。
【考察】
早期から経管栄養を実施していた児では,口腔への刺激に対して過敏な反応を示すことが多く,スプーンや食物などに対し拒否的な反応を示すことがある。今回,口腔周囲・口腔内の過敏性軽減のためのマッサージや手と口の協調遊び等を生後3ヶ月から家族,看護師等に指導し,日常生活の中で口腔へのアプローチの機会を増やすと同時に,離乳食摂取時に必要な座位等の粗大運動の促進の介入を継続することで顎位の安定,押しつぶしや咀噛に力強さと協調性をもたらし,口腔機能の発達促進にも有用であり随意嚥下を容易にした。また,上記の情報を両親,医師,看護師,病棟保育士等,多職種で共有し理解を深め児への介入を統一できたことが有用であったと考えられる。また,経口摂取による食物の食道通過がさらなる食道吻合部の狭窄を予防し離乳食の形態の変化にも対応できたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
全身管理および口腔・運動発達・認知機能発達を促すチームアプローチが必要な小児外科疾患における理学療法士の役割を検討する必要性があり,本症例報告は理学療法研究として意義があると考える。