第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

発達障害理学療法3

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0636] 小児外反扁平足を呈する2例に対する軟性足部装具使用による治療効果について

村松剛志 (済生会下関総合病院)

Keywords:小児外反扁平足, 装具療法, 足部筋群

【はじめに,目的】
小児外反扁平足は,多くが生理的のもので成長とともに改善するため経過観察のみで対処される。これに対しなんらかの基礎疾患に付随して起こる小児外反扁平足に対してはこれまで装具療法が行われている。しかし,装具療法による小児外反扁平足の改善報告は少なく,当院でも硬性足部装具使用での小児外反扁平足の改善は確認出来ていない。今回,軟性足部装具を使用し運動療法を含め治療を試みたのでここに報告する。
【方法】
対象は小児外反扁平足を有する精神運動発達遅滞児2例。症例1は7歳2か月(治療開始時5歳5か月・装具装着期間1年7か月),症例2は4歳2か月(治療開始時2歳9か月・装具装着期間1年5か月)。継時的変化としてピドスコープを模してのガラステーブル上立位での足底接地面の撮影とNavicular indexを計測し経過観察を行なった。なお,両側足部装具は全体をネオプレーンで製作。アーチを含めた底面と内果・舟状骨周辺はゴムシートを使用し,ベルトにて後足部の回外誘導および舟状骨・内果挙上と前足部の内がえし誘導を行なった。装具は朝食後~入浴前までの時間装着し,洗濯日以外はほぼ毎日使用した。運動療法は足部内がえし・足趾屈曲・母趾側でのつま先立ちは毎回必ず実施し,これらはホームプログラムとして継続した。
【結果】
両児ともに①立位時の踵骨軸の回内減少②ガラステーブル上立位での足底接地面の撮影における小趾側接地および土踏まずの拡大③座位でのNavicular indexと立位でのNavicular indexの差の縮小傾向および左右差の縮小傾向が確認された。また,症例1は開始時殆ど行えなかった足趾屈曲のMMTが開始1年で4レベルとなり,両児とも立位での内がえしの頻度増加と母趾側での持続的なつま先立ちが可能となった。
【考察】
小児外反扁平足に対し,硬性足部装具使用時も今回と同様の運動療法を実施していたが,硬性装具装着中は荷重下での足部のアライメントは改善するものの装具を外すとアライメントが容易に崩れることが続いていた。今回,軟性足部装具を使用することで硬性装具使用中には観察しにくかった内がえしやつま先立ちの動きが装着早期から観察された。これは軟性装具による回外や内がえしの誘導,舟状骨・内果挙上がある効果をもたらし,短趾屈筋や母趾外転筋,長母趾屈筋や後脛骨筋など足部アーチに関わる内在筋・外在筋収縮が得られ,結果①~③がもたらされたと考える。
今回の2症例の小児外反扁平足がどの程度のものかは十分に評価出来ていないため,どの程度の小児外反扁平足の改善に軟性足部装具が有効であるかはわかっていない。今後は更なる評価項目の検討と実施を続けるなか,装具の改良にも取り組みながら本疾患の保存的治療の有効性や装具処方の判断基準といったところにまで繋げていきたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】
ここ数年,足関節・足部の機能解剖と臨床応用について報告等が増えているのに対し,小児外反扁平足については足部筋群の筋力強化の必要性や靴の選択,足部装具の使用について論じられてはきたものの,足関節・足部の機能解剖を踏まえての報告はまだ少ない。機能解剖を踏まえた足部装具の作製・治療方法についてより具体的な報告がなされることが本疾患のように症状の程度に差があり,改善に長期間を要する疾患には特に重要ではないかと考える。