[P2-A-0642] 神奈川県立特別支援学校における知的障害児童・生徒への関わり
キーワード:知的障害, 特別支援学校, 学齢期
【はじめに,目的】知的障害児は精神発達の遅れ以外に,運動発達の遅れや,運動不足,運動の不得意さが見られることが多く,特に早期療育中は運動機能面の指導を含めた関わりが理学療法士(以下PT)に求められてきた。しかし学齢期以降は,運動機能面への適切な関わりが行われているとは言い難い状況である。神奈川県立特別支援学校には,現在8校にPTが内部専門職として配置されており,専門部会を立ち上げて学校内における支援活動に関する共通の取り組みを図ってきた。これまでの協議より知的障害教育部門の児童・生徒の身体面へのアプローチや環境設定等PT介入の必要性を強く認識したことから,平成26年度は「知的障害教育部門へのPTの関わり」について検討を重ねてきた。その経緯と共に二つの支援活動例である(1)集団活動における身体運動への支援(2)作業活動時の個別支援を報告すると共に,特別支援学校PTとしての考察を加える。
【方法】(1)集団支援:高等部。週一回の「からだ作り」の授業改善にPTが関わった例。教科「体育」とは位置づけが異なる「からだ作り」は,1日のリズム作り,基礎体力強化,日々の運動の積み重ね等を目的に,ランニング,体操,フットワークを実施している。生徒の身体機能には幅があり,実態にあったプログラムへの改善が必要とされたため,PTと体育科担当教員とで協働し,全学年51名を対象にして,簡易な運動テストを実施した。運動テストは教員でも実施・評価できるように①上下肢の柔軟性②四肢這い位③片脚立位④瞬発性と簡易なものとした。
(2)個別支援:高等部男子生徒。精神発達遅滞。清掃を行う「作業学習」時の支援についてPTが関わった例。本事例はほうきをはく方向の習得が難しく,教員が一対一で声をかける他,一緒に動作を行う等の支援を行っていた。体幹低緊張に対し末梢の過緊張がみられ,視知覚のとらえにくさもあり,歩行時の転倒がみられた。精神面だけでなく運動面の発達も全体的にゆっくりであり,決められた清掃技法の習得は困難で,生徒に自信のない様子が見られた。そのため生徒の立ち位置を移動せず,左右の重心移動だけで床をとらえられるように,担当場所を視覚的にとらえやすいテープで分割し,実践を進めた。
【結果】(1)運動テスト結果と日常的視診・触診を基に生徒を①過緊張グループ②低緊張グループ③発達性協調運動障害グループ④運動得意グループに分類した。PT支援のもと,体育科担当教員がグループ別運動プログラムを作成し,「からだ作り」の授業を担当した。①・②・③グループではボディーイメージ作りを取り入れた。③グループに対しては作業療法士も介入して感覚統合の要素を取り入れた運動を行った。
(2)当初,身体感覚・視知覚・精神発達の障害から,清掃技法を理解することが困難だったが,心身機能・身体構造の評価から清掃の授業をスモールステップの活動形態に変更したことで,周囲の環境把握が行いやすくなった。
【考察】(1)運動テストは,PTがテスト作成に関わり身体機能や運動知識の浅い教員でも評価しやすい工夫をした。しかしそれにより運動パターンや運動の質といった動作分析を行えず,日常的な動作分析の重要性を感じた。また,身体に過緊張部位と低緊張部位が混在している生徒が多く,目標を柔軟性・支持性強化運動だけに絞らず,バランスよく運動を取り入れる必要性があった。
(2)知的障害教育部門では,集団でルールに従って動くことに目標がおかれ,身体面や運動機能面から授業を組み立てるという指導に重点を置くことが難しい面がある。本事例では,PTが関わることで個別支援の必要性を生徒,担当教員が受け入れ,生徒のQOL向上につながったと考える。
現在,神奈川県立特別支援学校PTは自立活動教諭として主に肢体不自由教育部門に関わることが多いが,学齢期の知的障害児へのPT支援の必要性は十分に認識されているものの,いまだ生徒,保護者,教員共にPTとの関わりはまだまだ少ない。知的障害教育部門における児童・生徒を理学療法の側面から捉え,学校生活に反映できるような新しい視点の取り組みを特別支援学校に構築していくことが今後必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】理学療法は「身体に障害のある者」に実施するものである。特別支援学校においては,身体のみならず障害の特性に応じた理学療法の考え方が必要である。特別支援学校にPTが配置されることで,小児領域への理学療法士の活動の広がりの可能性を感じる。
【方法】(1)集団支援:高等部。週一回の「からだ作り」の授業改善にPTが関わった例。教科「体育」とは位置づけが異なる「からだ作り」は,1日のリズム作り,基礎体力強化,日々の運動の積み重ね等を目的に,ランニング,体操,フットワークを実施している。生徒の身体機能には幅があり,実態にあったプログラムへの改善が必要とされたため,PTと体育科担当教員とで協働し,全学年51名を対象にして,簡易な運動テストを実施した。運動テストは教員でも実施・評価できるように①上下肢の柔軟性②四肢這い位③片脚立位④瞬発性と簡易なものとした。
(2)個別支援:高等部男子生徒。精神発達遅滞。清掃を行う「作業学習」時の支援についてPTが関わった例。本事例はほうきをはく方向の習得が難しく,教員が一対一で声をかける他,一緒に動作を行う等の支援を行っていた。体幹低緊張に対し末梢の過緊張がみられ,視知覚のとらえにくさもあり,歩行時の転倒がみられた。精神面だけでなく運動面の発達も全体的にゆっくりであり,決められた清掃技法の習得は困難で,生徒に自信のない様子が見られた。そのため生徒の立ち位置を移動せず,左右の重心移動だけで床をとらえられるように,担当場所を視覚的にとらえやすいテープで分割し,実践を進めた。
【結果】(1)運動テスト結果と日常的視診・触診を基に生徒を①過緊張グループ②低緊張グループ③発達性協調運動障害グループ④運動得意グループに分類した。PT支援のもと,体育科担当教員がグループ別運動プログラムを作成し,「からだ作り」の授業を担当した。①・②・③グループではボディーイメージ作りを取り入れた。③グループに対しては作業療法士も介入して感覚統合の要素を取り入れた運動を行った。
(2)当初,身体感覚・視知覚・精神発達の障害から,清掃技法を理解することが困難だったが,心身機能・身体構造の評価から清掃の授業をスモールステップの活動形態に変更したことで,周囲の環境把握が行いやすくなった。
【考察】(1)運動テストは,PTがテスト作成に関わり身体機能や運動知識の浅い教員でも評価しやすい工夫をした。しかしそれにより運動パターンや運動の質といった動作分析を行えず,日常的な動作分析の重要性を感じた。また,身体に過緊張部位と低緊張部位が混在している生徒が多く,目標を柔軟性・支持性強化運動だけに絞らず,バランスよく運動を取り入れる必要性があった。
(2)知的障害教育部門では,集団でルールに従って動くことに目標がおかれ,身体面や運動機能面から授業を組み立てるという指導に重点を置くことが難しい面がある。本事例では,PTが関わることで個別支援の必要性を生徒,担当教員が受け入れ,生徒のQOL向上につながったと考える。
現在,神奈川県立特別支援学校PTは自立活動教諭として主に肢体不自由教育部門に関わることが多いが,学齢期の知的障害児へのPT支援の必要性は十分に認識されているものの,いまだ生徒,保護者,教員共にPTとの関わりはまだまだ少ない。知的障害教育部門における児童・生徒を理学療法の側面から捉え,学校生活に反映できるような新しい視点の取り組みを特別支援学校に構築していくことが今後必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】理学療法は「身体に障害のある者」に実施するものである。特別支援学校においては,身体のみならず障害の特性に応じた理学療法の考え方が必要である。特別支援学校にPTが配置されることで,小児領域への理学療法士の活動の広がりの可能性を感じる。