[P2-A-0674] 在宅介護者の腰痛に対する理学療法介入
介護方法の質的側面からの検討
キーワード:在宅介護者, 腰痛, 理学療法
【はじめに,目的】我々は,第23回埼玉県理学療法学会において,在宅介護者の介助の頻度,機会といった量的側面が在宅介護者の腰痛を引き起こす一要因となっている可能性を報告した。しかし,調査を進める中で,介助の機会や頻度という量的側面と合わせ,在宅介護者の介助方法の質的側面についても評価し,問題解決を行う必要性を感じた。
そこで今回,当院退院後の脳卒中後遺症者の在宅介護生活において,介助方法に起因したものと考えられる腰痛の増悪を訴える主介護者に対して,介助の質的な改善を図る事による腰痛の改善を目的に,理学療法介入として主介護者の腰痛に対する評価と治療,介助方法の提案を実施したので報告する。
【方法】対象は,脳卒中後遺症者の主介護者である70歳代の男性1名。腰痛に関しては重量物を運搬する職業に従事していたとの事で以前よりみられていた。数年前に退職しており,日常生活では支障のないレベルであったが,退院後の要介護者の在宅介護生活において腰痛が増悪したとの事。
方法として,厚生労働省作成の介護作業者の腰痛対策チェックリストにて,在宅生活に必要な介護作業における腰痛発生リスクを把握した。このチェックリストは,介助作業に対して,作業姿勢,重量負荷,頻度/作業時間,作業環境の4項目よりリスクの判定を行う。リスクが高いと判断された各項目に対して,直接動作を観察,評価,分析し,作業姿勢の改善と重量負荷の軽減の視点から主介助者への理学療法介入,介助方法の提案を行った。また,介入や提案の前後において,Visual Analogue Scale(以下:VAS)を用いて腰痛の主観的変化を評価した。
【結果】介護作業者の腰痛対策チェックリストにて,腰痛リスクの高い介助作業は,a.着衣状態での移乗動作,b.車いす駆動の移動介助,c.トイレ介助であった。介入としては,a.着衣状態での移乗動作は,腋窩より持ち上げる方法での過介助となっており,動作能力を確認の上で,アームレストを使用しての移乗動作を提案する事で作業姿勢,重量負荷が軽減された(VAS:6→4.3に改善)。b.車いす駆動の移動介助では,幅の狭い廊下の移動時に主介護者がアームレストを両手で把持し,後ろ向きのまま後方へ引くように移動の介助を行っていた。主介護者の手引きと合わせ,要介護者が非麻痺側の下肢にて駆動を行う方法を指導し,作業姿勢の改善を図った(VAS:4.5→2.7に改善)。c.トイレ介助に関しては,下衣更衣の際,介護者が体幹を屈曲位かつ左回旋にて更衣介助を行う作業姿勢と動作様式が腰部の負担を引き起こしていると考えられた。主介護者に対し,体幹の柔軟性と立位でのバランス練習を実施し,体幹を伸展位に保った上での股関節の屈曲-伸展運動を指導し,作業姿勢と動作様式の改善を図った(VAS:8.5→7.8に改善)。
【考察】今回,介護作業者の腰痛対策チェックリストを用いて腰痛リスクを把握し,介助方法の質的な改善を図る事により,腰痛に主観的変化が得られた。この事から,介護の腰痛リスクに対して,理学療法士が直接的に介助作業動作を評価,分析し,動作方法の指導や身体的能力に対する質的な介入を実施する事は,在宅介護者の高齢化が危惧される中で介護者自身の介護予防の視点からも重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】在宅生活での介護者の腰痛に対するアプローチに関しては,動作能力の変化に応じて定期的な介助方法の指導や環境設定を行う必要がある。今後は,退院後の介入と合わせ,入院中に可能な主介護者への予防的指導方法について検討していく。
そこで今回,当院退院後の脳卒中後遺症者の在宅介護生活において,介助方法に起因したものと考えられる腰痛の増悪を訴える主介護者に対して,介助の質的な改善を図る事による腰痛の改善を目的に,理学療法介入として主介護者の腰痛に対する評価と治療,介助方法の提案を実施したので報告する。
【方法】対象は,脳卒中後遺症者の主介護者である70歳代の男性1名。腰痛に関しては重量物を運搬する職業に従事していたとの事で以前よりみられていた。数年前に退職しており,日常生活では支障のないレベルであったが,退院後の要介護者の在宅介護生活において腰痛が増悪したとの事。
方法として,厚生労働省作成の介護作業者の腰痛対策チェックリストにて,在宅生活に必要な介護作業における腰痛発生リスクを把握した。このチェックリストは,介助作業に対して,作業姿勢,重量負荷,頻度/作業時間,作業環境の4項目よりリスクの判定を行う。リスクが高いと判断された各項目に対して,直接動作を観察,評価,分析し,作業姿勢の改善と重量負荷の軽減の視点から主介助者への理学療法介入,介助方法の提案を行った。また,介入や提案の前後において,Visual Analogue Scale(以下:VAS)を用いて腰痛の主観的変化を評価した。
【結果】介護作業者の腰痛対策チェックリストにて,腰痛リスクの高い介助作業は,a.着衣状態での移乗動作,b.車いす駆動の移動介助,c.トイレ介助であった。介入としては,a.着衣状態での移乗動作は,腋窩より持ち上げる方法での過介助となっており,動作能力を確認の上で,アームレストを使用しての移乗動作を提案する事で作業姿勢,重量負荷が軽減された(VAS:6→4.3に改善)。b.車いす駆動の移動介助では,幅の狭い廊下の移動時に主介護者がアームレストを両手で把持し,後ろ向きのまま後方へ引くように移動の介助を行っていた。主介護者の手引きと合わせ,要介護者が非麻痺側の下肢にて駆動を行う方法を指導し,作業姿勢の改善を図った(VAS:4.5→2.7に改善)。c.トイレ介助に関しては,下衣更衣の際,介護者が体幹を屈曲位かつ左回旋にて更衣介助を行う作業姿勢と動作様式が腰部の負担を引き起こしていると考えられた。主介護者に対し,体幹の柔軟性と立位でのバランス練習を実施し,体幹を伸展位に保った上での股関節の屈曲-伸展運動を指導し,作業姿勢と動作様式の改善を図った(VAS:8.5→7.8に改善)。
【考察】今回,介護作業者の腰痛対策チェックリストを用いて腰痛リスクを把握し,介助方法の質的な改善を図る事により,腰痛に主観的変化が得られた。この事から,介護の腰痛リスクに対して,理学療法士が直接的に介助作業動作を評価,分析し,動作方法の指導や身体的能力に対する質的な介入を実施する事は,在宅介護者の高齢化が危惧される中で介護者自身の介護予防の視点からも重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】在宅生活での介護者の腰痛に対するアプローチに関しては,動作能力の変化に応じて定期的な介助方法の指導や環境設定を行う必要がある。今後は,退院後の介入と合わせ,入院中に可能な主介護者への予防的指導方法について検討していく。