[P2-A-0680] 家屋評価後の追跡調査
改修後の変化の有無とその要因について
キーワード:家屋評価, 追跡調査, 日常生活動作
【はじめに,目的】
当院ではリハビリテーションを実施し必要と判断した自宅退院希望患者に対して,入院中にPT,OT,MSWが家屋の改修や福祉機器の提案を行う家屋評価を実施している。しかし退院後のフォローアップは行えていない状況である。そこで今回,家屋評価を実施後,家屋改修箇所の使用状況と追加・変更の有無とその要因について調査し,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は当院入院中に家屋評価を実施し,退院後1年以上在宅生活を送った7例の患者と家族とした。
患者の性別は男性3名,女性4名,疾患は全例が脳血管疾患であった。平均年齢は73±8.4歳,退院から本調査までの平均日数は552.4±266.3日であった。
患者の自宅を訪問し聞き取りアンケート調査を行った。改修提案件数(福祉機器も含む)と実際に使用している件数を調査し使用率を算出し,提案以外で改修等を行った事項の有無とその理由を聴取した。日常生活動作能力はFIM(運動,認知項目)で評価し,患者の介護者の状況や介護サービス利用状況,自宅での転倒の有無を聴取した。
さらに改修の追加・変更があった群(以下,追加群)5例と追加・変更がなかった群(以下,追加なし群)2例に分類し,患者の年齢,FIM運動,認知項目点数(①退院時,②本調査時,③本調査時と退院時の差)についてそれぞれ比較した。統計はMann-WhitneyのU検定(有意水準5%未満)を用いた。
【結果】
7例の改修提案総数は67件,そのうち実際の使用数は54件で,使用率は81%であった。
提案以外で改修等を行った事項が有った者は5例,改修追加場所は浴室,洗面所が2例,トイレ,階段,廊下が1例であった。追加内容34件は,手すりの設置15件,段差解消スロープの設置3件,床の底上げ2件,扉の変更2件,車椅子の変更2件,その他10件であった。具体的内容としては自宅で入浴するために浴室の段差解消や手すりの設置を行った,トイレ移乗が行いやすいように手すりを追加した,2階に昇れるように階段に手すりを追加したというものが挙げられた。
介護者の状況としては,追加群は患者が在宅中は介護者が常にいる状況であり,追加なし群では介護者が就労しており患者が日中独居になる時間があった。介護サービスは全例がデイケア,訪問リハビリなどを利用しており,退院後もリハビリを継続していた。
自宅での転倒が有ると回答したのは4例で,いずれも追加群であり,居室や廊下での歩行時の転倒であった。
追加群5例と追加なし群2例の比較では,FIM運動項目(本調査時と退院時の差)のみ有意差がみられた(p<0.044)。
【考察】
改修の提案内容は81%が実際に使用されており,入院中に提案されたことが良かったとの感想が患者,家族から聞かれた。
追加群5例の改修追加内容は,入浴は介護サービスを利用していたが自宅での入浴に変更したり,ポータブルトイレからトイレでの排泄に変更になったり,生活スペースは1階だが2階にも昇れるよう階段に手すりを設置したなど,退院時の設定よりも生活範囲を広げた日常生活動作能力を可能とするために改修を追加していた。追加群では追加なし群に比べ,退院後にFIM運動項目が有意に向上しており,身体機能が向上したため改修が追加され日常生活動作能力が向上したということが示唆された。実際に改修を追加した箇所に関連するFIMの下位項目に向上がみられている症例が多かった。
また,追加群の特徴として介護者が常にいる状況であることが挙げられる。加えて,介護者が過介助にならず適切な介助法や関わりをしたり,患者の希望に対して介護者が改修や介助などの対応をする意欲が高いということが,日常生活動作能力の改善した要因であると考える。追加なし群では日中独居となるため退院時の状態を維持し最も安定した設定が継続されていることが考えられた。
自宅での転倒があったのは全例が追加群であった。その理由としては車椅子から歩行へ移動能力のレベルが変化したことにより,転倒のリスクが上がった影響があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
在宅中に介護者が常にいる患者では,退院後に日常生活動作能力に変化が生じ改修を追加する可能性が高いということがわかった。そのような患者に対しては退院後の生活が変化しうることを予測し,介護者へのきめ細やかな指導が必要であると考えられた。さらに追加改修する際の対応が円滑となるよう,後方施設への情報提供と相談窓口の案内などフォローアップ体制を整えることが重要であると考えた。また,生活範囲の拡大に伴い転倒リスクが上がることが予測されるため,注意点の指導も変化していくという認識が必要であると考えた。
当院ではリハビリテーションを実施し必要と判断した自宅退院希望患者に対して,入院中にPT,OT,MSWが家屋の改修や福祉機器の提案を行う家屋評価を実施している。しかし退院後のフォローアップは行えていない状況である。そこで今回,家屋評価を実施後,家屋改修箇所の使用状況と追加・変更の有無とその要因について調査し,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は当院入院中に家屋評価を実施し,退院後1年以上在宅生活を送った7例の患者と家族とした。
患者の性別は男性3名,女性4名,疾患は全例が脳血管疾患であった。平均年齢は73±8.4歳,退院から本調査までの平均日数は552.4±266.3日であった。
患者の自宅を訪問し聞き取りアンケート調査を行った。改修提案件数(福祉機器も含む)と実際に使用している件数を調査し使用率を算出し,提案以外で改修等を行った事項の有無とその理由を聴取した。日常生活動作能力はFIM(運動,認知項目)で評価し,患者の介護者の状況や介護サービス利用状況,自宅での転倒の有無を聴取した。
さらに改修の追加・変更があった群(以下,追加群)5例と追加・変更がなかった群(以下,追加なし群)2例に分類し,患者の年齢,FIM運動,認知項目点数(①退院時,②本調査時,③本調査時と退院時の差)についてそれぞれ比較した。統計はMann-WhitneyのU検定(有意水準5%未満)を用いた。
【結果】
7例の改修提案総数は67件,そのうち実際の使用数は54件で,使用率は81%であった。
提案以外で改修等を行った事項が有った者は5例,改修追加場所は浴室,洗面所が2例,トイレ,階段,廊下が1例であった。追加内容34件は,手すりの設置15件,段差解消スロープの設置3件,床の底上げ2件,扉の変更2件,車椅子の変更2件,その他10件であった。具体的内容としては自宅で入浴するために浴室の段差解消や手すりの設置を行った,トイレ移乗が行いやすいように手すりを追加した,2階に昇れるように階段に手すりを追加したというものが挙げられた。
介護者の状況としては,追加群は患者が在宅中は介護者が常にいる状況であり,追加なし群では介護者が就労しており患者が日中独居になる時間があった。介護サービスは全例がデイケア,訪問リハビリなどを利用しており,退院後もリハビリを継続していた。
自宅での転倒が有ると回答したのは4例で,いずれも追加群であり,居室や廊下での歩行時の転倒であった。
追加群5例と追加なし群2例の比較では,FIM運動項目(本調査時と退院時の差)のみ有意差がみられた(p<0.044)。
【考察】
改修の提案内容は81%が実際に使用されており,入院中に提案されたことが良かったとの感想が患者,家族から聞かれた。
追加群5例の改修追加内容は,入浴は介護サービスを利用していたが自宅での入浴に変更したり,ポータブルトイレからトイレでの排泄に変更になったり,生活スペースは1階だが2階にも昇れるよう階段に手すりを設置したなど,退院時の設定よりも生活範囲を広げた日常生活動作能力を可能とするために改修を追加していた。追加群では追加なし群に比べ,退院後にFIM運動項目が有意に向上しており,身体機能が向上したため改修が追加され日常生活動作能力が向上したということが示唆された。実際に改修を追加した箇所に関連するFIMの下位項目に向上がみられている症例が多かった。
また,追加群の特徴として介護者が常にいる状況であることが挙げられる。加えて,介護者が過介助にならず適切な介助法や関わりをしたり,患者の希望に対して介護者が改修や介助などの対応をする意欲が高いということが,日常生活動作能力の改善した要因であると考える。追加なし群では日中独居となるため退院時の状態を維持し最も安定した設定が継続されていることが考えられた。
自宅での転倒があったのは全例が追加群であった。その理由としては車椅子から歩行へ移動能力のレベルが変化したことにより,転倒のリスクが上がった影響があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
在宅中に介護者が常にいる患者では,退院後に日常生活動作能力に変化が生じ改修を追加する可能性が高いということがわかった。そのような患者に対しては退院後の生活が変化しうることを予測し,介護者へのきめ細やかな指導が必要であると考えられた。さらに追加改修する際の対応が円滑となるよう,後方施設への情報提供と相談窓口の案内などフォローアップ体制を整えることが重要であると考えた。また,生活範囲の拡大に伴い転倒リスクが上がることが予測されるため,注意点の指導も変化していくという認識が必要であると考えた。