第50回日本理学療法学術大会

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地域理学療法7

2015年6月6日(土) 11:25 〜 12:25 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0683] 生活期における理学療法で使用される評価指標に関する文献調査

浅川育世 (茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科)

キーワード:文献調査, 評価指標, ICF

【はじめに,目的】
国際性生活機能分類(ICF)において,理学療法(PT)の対象は障害ばかりでなく,生活機能を重視しなければならない。介護保険導入後は生活期(維持期)でPTが展開されることも多くなり,生活機能の各要素にバランスよく働きかけることが重要である。しかし,介護(予防)分野ではその手法が,心身機能を改善することを目的とした機能回復訓練に偏っていること,サービス提供者の多くも,「活動」や「参加」に焦点をあててこなかったことが厚生労働省「これからの介護予防」によって指摘されている。生活期と介護予防では分野は異なるものの手厳しい指摘である。そこで生活期を対象とした研究において文献調査を実施し,使用されている評価指標より生活期での介入について傾向を探る。

【方法】
文献データベースは医学中央雑誌を使用(2014年8月末実施)した。検索キーワードは収載雑誌名「理学療法学」または「理学療法科学」(原著論文のみ)に「地域理学療法」または「地域リハビリテーション(リハ)」,「訪問理学療法」または「訪問リハ」,「在宅理学療法」または「在宅リハ」,「通所リハ」を1つずつ組合せ設定した。取り込み基準は何らかの介入があり,前後の結果が記載されているものとした。除外基準としてはまず文献が重複するもの,対象が成人ではないもの,掲載年月が2000年度以前(介護保険導入前)のものを除外した。次にタイトルおよび抄録内容を詳細に吟味し,標準化した評価指標を用いていないもの,研究の目的が新たな評価指標の開発や,妥当性・信頼性を確認するもの,職員,学生を対象としたもの,サービス利用者の特性を調査する目的のみのもの,を除外し本調査の目的に合致する論文の更なる抽出を行った。
抽出された論文からどのような評価指標が用いられているか分析し,ICFの構成要素に振り分けその傾向を見た。「活動」「参加」にあてはまる評価指標の項目についてはどの領域が使用されているかICFの第1レベル(章)にあてはめ傾向を見た。

【結果】
初回の検索により,100編の文献が抽出された。取り込み基準,除外基準に照らし合わせ,文献を絞り込んだところ,最終的に調査対象となった論文は23編であった。使用されていた評価指標は29個あり,ICFの構成要素別の内訳は「心身機能」8種類(28%),「身体構造」4種類(14%),「活動」「参加」13種類(45%),「環境因子」1種類(3%),「個人因子」2種類(7%),その他としてQOLが1種類(3%)であった。
「活動」「参加」の評価指標の内訳はFIMが8編,歩行速度・距離が8編,BIが6編,TUGが5編,片脚起立時間が4編,Functional Reach Test:FRTが4編,日常生活自立度判定基準が3編,老研式活動能力評価指標が3編,Bedside Mobility Scale:BMSが3編,30-sec Chair stand test:CS-30が3編,Frenchay Activities Index:FAIが2編,Life-Space Assessment:LSAが2編,Morter activity log:MALが1編の論文で用いられていた。これらの評価指標の評価項目は91個あり,ICFの「活動」「参加」の第1レベルでは第1章「学習と知識の応用」5(5%),第2章「一般的な課題と要求」0,第3章「コミュニケーション」2(2%),第4章「運動・移動」37(41%),第5章「セルフケア」24(26%),第6章「家庭生活」10(11%),第7章「対人関係」5(5%),第8章「主要な生活領域」2(2%),第9章「コミュニティライフ・社会生活・市民生活」6(7%)であった。

【考察】
評価指標に対するICFの構成要素を見ると,「活動」「参加」が45%と最も多く,「心身機能」に偏っているとは言い難い。しかし,これらの評価指標の評価項目をICFの第1レベルにあてはめると,「運動・移動」が最も多い。これらは基本的ADLであり,心身機能に影響されやすい。さらにTUGやFRTはバランス(心身機能)の評価指標としても分類が可能である。一方,第6章から第9章は「参加」としても扱われることが多く,「活動」よりも高次なレベルである。本調査ではこれらは23%に過ぎず,十分に介入または評価ができていないことが示唆される。「参加」については制度など「環境因子」についても影響を受けやすく,評価するためには様々な変数との検討が必要であるのかもしれない。また「参加」を適切に評価できる評価指標も十分ではないことが示唆される。厚労省の指摘はこのような因果関係により生じた可能性がある。今後,「参加」の状況を改善するための介入を構築すること,帰結として「参加」を評価することなどが必要と思われる。

【理学療法学研究としての意義】
文献調査により,生活期のPTの課題を推測できたことは意義深い。