[P2-A-0690] 高齢者の足に関するQOLの調査
独歩獲得はQOLを向上させる?
キーワード:高齢者, QOL, 移動能力
【はじめに,目的】
近年,高齢者の福祉や医療,疾患予防が重要視されている。生活期のリハビリテーションにおいては,患者の移動能力の維持・向上は重要な要素であり,それによりQOLを向上させることが目的となる。しかし,その効果を分析するにあたって,高齢者は運動器疾患や内部系疾患,中枢神経系疾患といった複数の疾患や症候を合併しており,疾患特異的な評価尺度での治療効果の判定や障害学的分析が困難である。そのため,QOLなど疾患非特異的かつ包括的な評価尺度による効果判定が必要となる。一方,高齢者の足部の変形や浮腫,疼痛は転倒リスクの増加やADLの低下をもたらすとされており,足部への介入とその効果の判定は重要である。そこで我々は,日本整形外科学会・日本足の外科学会が開発した「足部足関節評価質問票(SAFE-Q)」を用いることで,疾患非特異的な評価尺度での測定が可能であると考えた。先行研究において,活動能力の低い高齢者ほど転倒しやすいことや,筋力や歩行能力と生活満足度の関連が報告されている(村田ら,2009)。そこで我々は,移動能力を比較対象としSAFE-Qを調査することで,身体機能の改善や活動レベルの向上に注目した理学療法の意義を検討できると考えた。本研究の目的は,移動能力とSAFE-Qの関係を横断的に調査し,移動能力ごとのSAFE-Qの特徴を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,通所リハビリテーション利用中の高齢者で,認知症の診断がない41名(男/女;12/29名,平均年齢80.4±7.0歳)とした。なお,機能訓練中に立位保持ができない者,質問の内容が理解できない者,明らかな抑うつ状態にある者は対象から除外した。SAFE-Qの調査はSAFE-Q使用手引きに基づき実施し,「痛み・痛み関連(9項目)」,「身体機能・日常生活の状態(11項目)」,「社会生活機能(6項目)」,「靴関連(3項目)」,「全体的健康感(5項目)」の5つの下位尺度を各項目100点満点で点数化した。移動能力として施設内の実用的な移動手段を「独歩群」12名,「T-caneおよびシルバーカー」群(以下,補助具群)13名,「w/c」群16名の3群に分類し,SAFE-Qの各項目を3群間で比較検討した。
統計学的手法にはKruskal Wallis testを用い,事後検定にはBonfferoni法を用いた。なお,統計解析にはSPSS ver.18を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】
各項目の中央値(25%値-75%値)は以下の通りである。「痛み・痛み関連」は独歩群85.5(80.8-98.3)点,補助具群80.5(63.9-97.2)点,w/c群79.7(62.5-100.0)点で有意差を認めなかった。「身体機能・日常生活の状態」は独歩群75.9(62.5-92.0)点,補助具群52.4(38.6-70.5)点,w/c群44.0(30.1-55.7)点で独歩群とその他2群に有意差を認めた。「社会生活機能」は独歩群68.4(46.9-96.9)点,補助具群69.6(58.3-83.3)点,w/c群39.3(15.6-52.2)点でw/c群とその他2群で有意差を認めた。「靴関連」は独歩群88.9(81.3-100.0)点,補助具群85.9(83.3-100.0)点,w/c群63.5(41.7-79.2)点でw/c群とその他2群で有意差を認めた。「全体的健康感」は独歩群81.3(73.8-96.3)点,補助具群59.2(40.0-75.0)点,w/c群56.3(23.8-85.0)点で独歩群とw/c群で有意差を認めた。
【考察】
我々は,独歩群,補助具群では歩行を実用的手段としているため活動性が高く,満足度も高いと仮説を立てていた。実際には,外出や生活に関する「社会生活機能」や「靴関連」項目では我々の仮説を支持する結果となったが,「身体機能・日常生活の状態」では,独歩群が他の2群に比べ有意に高く,「全体的健康感」では独歩群がw/c群より有意に高かった。生活期のリハビリテーションではその機能の維持や,その機能で活動レベルを引き上げることに主眼が置かれることが多い。一方で,今回の結果は歩行補助具を用いて活動レベルを上げるだけではなく,身体機能の改善や,より難易度の高い動作レベルの達成が,QOLの改善につながることを示唆した。特に,「痛み・痛み関連」の項目に有意差がなかったことから,高齢者は足の筋力や可動性,浮腫など,疼痛とは別の要素に問題をもっていることが多いことも考えられ,それらを念頭においた上での関わりが求められると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
高齢者にSAFE-Q調査を行い移動能力別に比較したところ,高齢者のQOLを上げるためには,歩行補助具を用いて活動レベルを上げるだけではなく,身体機能の改善や,より難易度の高い動作レベルの達成が重要であることが示唆された。
近年,高齢者の福祉や医療,疾患予防が重要視されている。生活期のリハビリテーションにおいては,患者の移動能力の維持・向上は重要な要素であり,それによりQOLを向上させることが目的となる。しかし,その効果を分析するにあたって,高齢者は運動器疾患や内部系疾患,中枢神経系疾患といった複数の疾患や症候を合併しており,疾患特異的な評価尺度での治療効果の判定や障害学的分析が困難である。そのため,QOLなど疾患非特異的かつ包括的な評価尺度による効果判定が必要となる。一方,高齢者の足部の変形や浮腫,疼痛は転倒リスクの増加やADLの低下をもたらすとされており,足部への介入とその効果の判定は重要である。そこで我々は,日本整形外科学会・日本足の外科学会が開発した「足部足関節評価質問票(SAFE-Q)」を用いることで,疾患非特異的な評価尺度での測定が可能であると考えた。先行研究において,活動能力の低い高齢者ほど転倒しやすいことや,筋力や歩行能力と生活満足度の関連が報告されている(村田ら,2009)。そこで我々は,移動能力を比較対象としSAFE-Qを調査することで,身体機能の改善や活動レベルの向上に注目した理学療法の意義を検討できると考えた。本研究の目的は,移動能力とSAFE-Qの関係を横断的に調査し,移動能力ごとのSAFE-Qの特徴を明らかにすることとした。
【方法】
対象は,通所リハビリテーション利用中の高齢者で,認知症の診断がない41名(男/女;12/29名,平均年齢80.4±7.0歳)とした。なお,機能訓練中に立位保持ができない者,質問の内容が理解できない者,明らかな抑うつ状態にある者は対象から除外した。SAFE-Qの調査はSAFE-Q使用手引きに基づき実施し,「痛み・痛み関連(9項目)」,「身体機能・日常生活の状態(11項目)」,「社会生活機能(6項目)」,「靴関連(3項目)」,「全体的健康感(5項目)」の5つの下位尺度を各項目100点満点で点数化した。移動能力として施設内の実用的な移動手段を「独歩群」12名,「T-caneおよびシルバーカー」群(以下,補助具群)13名,「w/c」群16名の3群に分類し,SAFE-Qの各項目を3群間で比較検討した。
統計学的手法にはKruskal Wallis testを用い,事後検定にはBonfferoni法を用いた。なお,統計解析にはSPSS ver.18を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】
各項目の中央値(25%値-75%値)は以下の通りである。「痛み・痛み関連」は独歩群85.5(80.8-98.3)点,補助具群80.5(63.9-97.2)点,w/c群79.7(62.5-100.0)点で有意差を認めなかった。「身体機能・日常生活の状態」は独歩群75.9(62.5-92.0)点,補助具群52.4(38.6-70.5)点,w/c群44.0(30.1-55.7)点で独歩群とその他2群に有意差を認めた。「社会生活機能」は独歩群68.4(46.9-96.9)点,補助具群69.6(58.3-83.3)点,w/c群39.3(15.6-52.2)点でw/c群とその他2群で有意差を認めた。「靴関連」は独歩群88.9(81.3-100.0)点,補助具群85.9(83.3-100.0)点,w/c群63.5(41.7-79.2)点でw/c群とその他2群で有意差を認めた。「全体的健康感」は独歩群81.3(73.8-96.3)点,補助具群59.2(40.0-75.0)点,w/c群56.3(23.8-85.0)点で独歩群とw/c群で有意差を認めた。
【考察】
我々は,独歩群,補助具群では歩行を実用的手段としているため活動性が高く,満足度も高いと仮説を立てていた。実際には,外出や生活に関する「社会生活機能」や「靴関連」項目では我々の仮説を支持する結果となったが,「身体機能・日常生活の状態」では,独歩群が他の2群に比べ有意に高く,「全体的健康感」では独歩群がw/c群より有意に高かった。生活期のリハビリテーションではその機能の維持や,その機能で活動レベルを引き上げることに主眼が置かれることが多い。一方で,今回の結果は歩行補助具を用いて活動レベルを上げるだけではなく,身体機能の改善や,より難易度の高い動作レベルの達成が,QOLの改善につながることを示唆した。特に,「痛み・痛み関連」の項目に有意差がなかったことから,高齢者は足の筋力や可動性,浮腫など,疼痛とは別の要素に問題をもっていることが多いことも考えられ,それらを念頭においた上での関わりが求められると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
高齢者にSAFE-Q調査を行い移動能力別に比較したところ,高齢者のQOLを上げるためには,歩行補助具を用いて活動レベルを上げるだけではなく,身体機能の改善や,より難易度の高い動作レベルの達成が重要であることが示唆された。