第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

地域理学療法8

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0696] 地域防災における理学療法士が果たす役割

地域防災事業および災害リハビリテーション支援チーム活動報告

下田栄次1,2,3,4, 蛭田啓介1,2, 松田梓1,3 (1.災害リハビリテーション支援チーム Physical Support Volunteer Team(PSVT), 2.あべ整形外科リハビリテーション科, 3.公益社団法人神奈川県理学療法士会災害対策委員会, 4.神奈川県秦野市災害時要援護者支援検討委員会)

Keywords:災害リハビリテーション支援, 地域防災, 理学療法士

【はじめに,目的】
私たちは甚大な被害をもたらした東日本大震災を契機に災害リハビリテーション支援のためのボランティアチームPhysical Support Volunteer Team(PSVT)を理学療法士と医師,アスレティック・トレーナー,グラフィックデザイナーといった他職種の有志にて結成した。これまでの活動を報告するとともに,今後の重要課題でもある地域防災における理学療法士の役割について考察する。

【方法】
発災直後より救援物資の輸送や高齢者に向けた情報発信をはじめ,日本理学療法士協会からの一次派遣隊や災害リハビリテーション支援チームとして各地で支援活動を実施。各避難所・仮設住宅で活動している医療チームと連携し,リハに関する情報提供や生活不活発病などの予防を目的とした運動指導,避難所や仮設住宅内の環境調整,補装具の提供を行う。平成24年1月からは被災地の医療機関における病棟業務支援,様々なリハビリテーション関連団体の支援活動に参画した。現在は福島県を中心に支援活動を継続しながら,自身の居住する地域にて「地域防災」をキーワードにした行政とリハビリテーション関連職が連携した取り組みを始めている。
具体的には,「避難所への避難方法と誘導,避難所において一番困っている人から柔軟に,臨機応変に対応する」という事を基本テーマとして,「誰が見ても分かる避難時の要援護者支援マニュアル」の作成から各避難所における年代別人口比率から必要とされる備蓄品目の見直し,理学療法士の視点から,従来の避難所機能に在宅支援拠点とする在宅被災者へのフォローを付加した自助・共助システムを提案,自治会,行政,消防,保健師,ケアマネージャー,民間企業といった他職種・他業種の委員と協議を重ねている。
【結果】
災害リハビリテーション支援活動を通して,現在も家族構成や生活環境の変化によるメンタルヘルスや生活習慣病の悪化,二次的な生活不活発病,震災関連死の増加が課題である。避難所や仮設住宅での作業や運動指導は特に高齢者における生活不活発病やメンタルヘルスの改善に繋がり,被災者の健康支援や回復支援に一定の効果があったと考えられるが,われわれのみで完結することは少ない。他職種間,リハ関連団体,行政との情報共有や連携,平時より組織間の調整を行うコーディネーター機能の強化やネットワークの構築,それを繋ぐ組織も必要と考える。

【考察】
災害リハビリテーション支援活動においては,要援護者や在宅被災者の生活不活発病予防といった健康支援や身体機能が低下したものへの回復支援のみならず,避難所運営と管理,ボランティアの受け入れや水や食料の確保と配給,清掃やごみ処理といった生活環境の維持改善など,被災者の生活支援に関わる多様な活動が求められる。理学療法士が発災後から介入すべき時期に関して,災害医療における亜急性期より被災者の健康や救急医療を支援する積極的な活動が必要であると考えるが,現状において,理学療法士の果たす役割は他業種からも理学療法士自身の認識も低いのではないかと考える。発災後から亜急性期における災害リハビリテーション支援活動においては,災害医療における人命救助を主とした医療救護活動の基本コンセプトや災害現場におけるマネージメント,公衆衛生や感染予防に関する知識やライフライン(インフラ)に関する国際的な基準を事前に学習しておく事も必要である。
災害リハビリテーション支援を通じ,多くの理学療法士やリハビリテーション関連職が協力し連携が出来た事は,災害リハビリテーション支援を考える上で大きな転機となったのではないかと考える。被災地では現地スタッフによる支援が継続して行われている。チームとしても継続して展開しながら,被災地にて経験した事,課題であると感じた事を地域における災害時要援護者支援対策に還元出来ればと考えている。

【理学療法学研究としての意義】
市町村レベルの防災計画に理学療法士が介入した国内においても数少ない事例である。これをモデルケースに理学療法士やリハビリテーションが関わることでのメリットを確立していきたい。