第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

予防理学療法1

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0697] 地域在住の健康不安を持つ高齢者における生活活動性と運動機能との関連について

~二次予防対象高齢者予備群の生活活動特性から~

藤田聡行, 小串健志, 中川慎也, 村井友香, 石橋尚基, 小池靖子 (医療法人社団心和会新八千代病院リハビリテーション科)

Keywords:Life Space Assessment(LSA), 運動機能, 生活空間

【はじめに,目的】
これからの介護予防は,機能回復訓練だけではなく,生活行為の向上や地域の中に生きがい・役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど,バランスのとれたアプローチが重要であると云われている。しかし,限られた時間と人員で行う地域支援活動において,包括的に分析が行えないジレンマを抱えることが少なくない。今回,通常の介護予防普及促進事業に加え,運動機能の低下を疑いながらも一次予防を継続していた方々をさらに勧誘し,二か所での転倒予防教室を開催した。健康不安を持つ参加者に対して簡便なスクリーニングから聞き取りを実施し,結果を分析して検討を加え,特性と一定の傾向を得たので報告する。
本研究では,地域在住の二次予防対象高齢者予備群を対象に生活活動性と運動機能との関連性を明らかにすることを目的とした。

【方法】
八千代市の健康診査や地区の健康教育講演会に参加され,健康度評価のための質問紙に回答を得た高齢者のうち,運動機能の低下が疑われ,後日,転倒予防教室に参加された26名を対象とした。運動機能の低下が疑われる基準として,基本チェックリスト中,運動機能項目の5項目のうち1~2項目に該当したものとした。後日,該当者には,研修開催の案内を地域包括支援センター職員から個別の通知と電話で勧誘を行った。参加者には,歩行年齢測定とロコモ判定を行い,生活活動性は生活空間の広がりに反映されると考え,LSAを用いて評価し56点を境界値とした。2ステップ値を筋力,バランスを簡便に評価できる指標として用い,1.25を境界値とし,生活活動性と運動機能のスクリーニングの結果として群分けし,連続歩行距離,動作時痛の有無,立ち上がりテスト,テストに先立って「どのくらいの高さから立てるか」という予測高について分割した。群間の関連はχ2検定を用いて分析し,有意水準は5%未満とした。基本属性として年齢,性別,過去1年における1週間以上の入院の有無についても調査した。さらに,動作時痛の部位や特に支障のある生活行為を尋ね,同様に群間の関連性を検討した。

【結果】
全体の2ステップ値の平均値は1.23±0.20であった。各群の2ステップ平均値は上位群から1.44±0.08(n=10),1.10±0.12(n=16)であった。LSAにおける全体の平均得点は72.5±24.2で,各群の平均は上位群から84.3±17.6(n=18),46.0±13.4(n=8)であった。性別,過去1年以内の1週間以上の入院の有無には群間の差異を認めず,連続歩行距離,動作時痛の有無との有意な関連は認めなかった。2ステップ値とLSAとの間に関連性がみられた。年齢にはLSAの低値な群が高値な群に比べ平均年齢が上回っていたが,群間の有意な関連は認めなかった。LSA高値で2ステップ値が低い群(以下,機能低下群)には,全例で動作時痛や支障のある生活行為を有しており,立ち上がりテストでの予測高が実測高を上回る傾向がみられた。LSA低値で2ステップ値が高値な群(以下,活動狭小群)では,予測高が実測高を全例で下回っていた。LSA,2ステップ値とも高値な群は動作時痛を有していた。

【考察】
本研究は健康度評価で運動機能に不安があると思われるものを抽出した研究である。結果より,機能低下群としたLSAの得点が高いにもかかわらずバランス,筋力の低下が疑われる生活活動性が高い群,活動狭小群とした2ステップ値が高いにもかかわらず生活活動性が低い群を大別した。前者の聴取から,これら該当者のすべてが動作時痛を有しており,機能をやや過大評価しがちで,行為を見直すことなく過ごされていることが窺え,より専門的な評価と個別指導が重要であると考えられた。一方,活動狭小群でみられた予測高が過小であった傾向については,自己効力感や趣味活動の乏しさなどの背景因子から生活空間の広がりに影響を与えていると思われた。大別されたモデルから,機能低下群にはより個別的に介入する必要性が高く,同時に生活行為について生活の仕方や道具を工夫することで生活活動性の維持が期待できる。また活動狭小群には,より内在する要因や交絡する原因を取り除けるような支援の重要性が大きい。つまり,生活空間は運動機能だけでなく,生活行為などの活動との組み合わせにより決まるのではないかと考えられる。

【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,地域在住の健康不安を持つ高齢者について,生活活動性と簡便な歩行機能評価から特性の組み合わせを示した点である。介護予防事業において地域在住高齢者の生活空間を拡充するには,段階に応じ,より個別的に運動器の機能向上を図るとともに,さまざまな生活行為へ働きかけられるような視点を有することが重要である。