[P2-A-0723] 当院における外科周術期の呼吸リハビリテーションの効果
呼吸器合併症の予防効果について
キーワード:周術期, 呼吸リハビリテーション, 呼吸器合併症
【はじめに,目的】
近年,高齢化社会の影響や手術手技・術後呼吸管理などの向上により,外科手術の対象は高齢化,ハイリスク化しており,無気肺や肺炎などの術後呼吸器合併症の予防や早期離床がますます重要となっている。当院でも2012年11月より,周術期呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を積極的に実施することとなった。本研究の目的は,周術期における呼吸リハビリテーションの有効性を検証することである。
【方法】
対象は2012年1月~2014年3月に当院において胸部および腹部の外科的手術(肺,食道,胃,肝・胆・膵切除)を施行した410例であった。その内,呼吸リハを実施した273名(男性159名,女性114名,平均年齢69.1±10.2歳)を呼吸リハ群,実施していなかった137名(男性86名,女性57名,平均年齢69.9歳±9.2歳)を対照群に分類した。
呼吸リハの内容としては,術前の外来通院時より患者オリエンテーション,腹式呼吸,口すぼめ呼吸,スーフルを用いた死腔再呼吸法の指導を実施した。術後は可能な限り早期に段階的離床を開始し,呼吸器合併症の予防・運動耐用能の改善に努めた。
評価項目は,呼吸器合併症の有無,%VC,1秒率,6分間歩行試験(6MWD),術後在院日数の5項目として,患者カルテより後ろ向きに調査した。
なお,呼吸器合併症については,胸部レントゲン写真をもとに2名の外科医師により判断した。また,呼吸器合併症に起因しない死亡例,他病院へ転院となった症例は除外した。
【結果】
呼吸器合併症の発症率は呼吸リハ群7.3%,対照群13.1%で両群間に有意差は認められなかったが(χ2test,p=0.055),呼吸リハ群で減少傾向にあった。
呼吸リハ群の%VCは,リハ開始前103.5%,術直前105.6%,退院時89.9%で,術前にわずかながら上昇を認めたが,退院時においては有意に低値であった(ANOVA,p<0.01)。
1秒率については,リハ開始前75.5%,術直前74.4%,退院時77.2%で,リハ開始前・術直前と比較し退院時において有意な増加を認めた(ANOVA,p<0.01)。
一方,6MDWはリハ開始前370.9±91mに対し,退院時324.4±81.7mと退院時は低値であった(paired t-test,p<0.01)。
術後在院日数については,呼吸リハ群は平均28.7日に対し,対照群は平均26.6日と有意差は認めなかった(Mann-Whitney U test,N.S)。
【考察】
当院における外科周術期呼吸リハの有効性を検証した。
呼吸器合併症の発症率について,呼吸リハ群は対照群と比べ減少傾向にあった。つまり,周術期に呼吸リハを実施することで,呼吸器合併症を予防できる可能性が示された。
また,%VCはリハ開始前から術直前にかけて僅かではあるが向上が見いだせたことは,術後の呼吸機能低下率を抑えることとなり,呼吸器合併症の減少に寄与していると思われる。このことは周術期の呼吸リハを入院前の早期から積極的に導入することの意義を確認できる機会となった。1秒率の増加に関しては,計算式が1秒量/努力肺活量×100であり相対的に増加に転じたものと考える。
術後在院日数については,呼吸器合併症が減少傾向にあったにも関わらず改善がみられなかった。これは,感染や縫合不全などの呼吸器合併症以外の要因が考えられる。
術前から介入することで,オリエンテーションが十分に行え,術後の介入がスムーズになる。そのことで早期からの段階的離床が行え,呼吸器合併症の発症率減少に影響していると思われる。
しかし,肺機能検査(%VC)や6MDWについては,退院時には低下が著しかった。この事より,呼吸器合併症の予防に加え,社会復帰に向けて運動耐用能の向上を図れるような包括的呼吸リハを構築していく必要性を示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
周術期の呼吸リハの効果として,呼吸器合併症の予防が図れることが示唆された。運動耐用能の向上を積極的に図れるような包括的呼吸リハを入院前より積極的に実施していく必要性が示唆された。
近年,高齢化社会の影響や手術手技・術後呼吸管理などの向上により,外科手術の対象は高齢化,ハイリスク化しており,無気肺や肺炎などの術後呼吸器合併症の予防や早期離床がますます重要となっている。当院でも2012年11月より,周術期呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を積極的に実施することとなった。本研究の目的は,周術期における呼吸リハビリテーションの有効性を検証することである。
【方法】
対象は2012年1月~2014年3月に当院において胸部および腹部の外科的手術(肺,食道,胃,肝・胆・膵切除)を施行した410例であった。その内,呼吸リハを実施した273名(男性159名,女性114名,平均年齢69.1±10.2歳)を呼吸リハ群,実施していなかった137名(男性86名,女性57名,平均年齢69.9歳±9.2歳)を対照群に分類した。
呼吸リハの内容としては,術前の外来通院時より患者オリエンテーション,腹式呼吸,口すぼめ呼吸,スーフルを用いた死腔再呼吸法の指導を実施した。術後は可能な限り早期に段階的離床を開始し,呼吸器合併症の予防・運動耐用能の改善に努めた。
評価項目は,呼吸器合併症の有無,%VC,1秒率,6分間歩行試験(6MWD),術後在院日数の5項目として,患者カルテより後ろ向きに調査した。
なお,呼吸器合併症については,胸部レントゲン写真をもとに2名の外科医師により判断した。また,呼吸器合併症に起因しない死亡例,他病院へ転院となった症例は除外した。
【結果】
呼吸器合併症の発症率は呼吸リハ群7.3%,対照群13.1%で両群間に有意差は認められなかったが(χ2test,p=0.055),呼吸リハ群で減少傾向にあった。
呼吸リハ群の%VCは,リハ開始前103.5%,術直前105.6%,退院時89.9%で,術前にわずかながら上昇を認めたが,退院時においては有意に低値であった(ANOVA,p<0.01)。
1秒率については,リハ開始前75.5%,術直前74.4%,退院時77.2%で,リハ開始前・術直前と比較し退院時において有意な増加を認めた(ANOVA,p<0.01)。
一方,6MDWはリハ開始前370.9±91mに対し,退院時324.4±81.7mと退院時は低値であった(paired t-test,p<0.01)。
術後在院日数については,呼吸リハ群は平均28.7日に対し,対照群は平均26.6日と有意差は認めなかった(Mann-Whitney U test,N.S)。
【考察】
当院における外科周術期呼吸リハの有効性を検証した。
呼吸器合併症の発症率について,呼吸リハ群は対照群と比べ減少傾向にあった。つまり,周術期に呼吸リハを実施することで,呼吸器合併症を予防できる可能性が示された。
また,%VCはリハ開始前から術直前にかけて僅かではあるが向上が見いだせたことは,術後の呼吸機能低下率を抑えることとなり,呼吸器合併症の減少に寄与していると思われる。このことは周術期の呼吸リハを入院前の早期から積極的に導入することの意義を確認できる機会となった。1秒率の増加に関しては,計算式が1秒量/努力肺活量×100であり相対的に増加に転じたものと考える。
術後在院日数については,呼吸器合併症が減少傾向にあったにも関わらず改善がみられなかった。これは,感染や縫合不全などの呼吸器合併症以外の要因が考えられる。
術前から介入することで,オリエンテーションが十分に行え,術後の介入がスムーズになる。そのことで早期からの段階的離床が行え,呼吸器合併症の発症率減少に影響していると思われる。
しかし,肺機能検査(%VC)や6MDWについては,退院時には低下が著しかった。この事より,呼吸器合併症の予防に加え,社会復帰に向けて運動耐用能の向上を図れるような包括的呼吸リハを構築していく必要性を示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
周術期の呼吸リハの効果として,呼吸器合併症の予防が図れることが示唆された。運動耐用能の向上を積極的に図れるような包括的呼吸リハを入院前より積極的に実施していく必要性が示唆された。