第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

循環1

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0735] 心臓血管外科術後,敗血症を呈した患者へのリハビリテーション介入の長期経過について

長期的生命予後の検討に向けて

榊聡子1, 浦島恭子2, 安達晃一2 (1.IMS(イムス)グループ春日部中央総合病院リハビリテーション科, 2.IMS(イムス)グループ春日部中央総合病院心臓血管外科)

Keywords:敗血症, ICUAW, 予後

【はじめに】
心臓血管外科術後敗血症により術後患者の生命予後が著しく低下する。また生存したとしても,認知機能や身体機能の低下により長期予後に影響を与えるとも言われている。近年ICUの重症患者管理中に四肢麻痺が生じる,ICU-aquaired weakness(以下ICUAW)を合併すると言われており,敗血症患者に発症しやすいと言われている。ICUAWの予防の為,早期からのリハビリテーション(以下リハ)が必要と言われているが,リハ介入についての中期・長期的な報告は殆どない。今回敗血症を呈した症例を術後早期より介入し,術前レベルまで回復し,1年経過を追った症例を経験した。本症例を通して敗血症患者の中期から長期の介入の重要性を報告する。
【症例】
対象は平成24年に当院心臓血管外科において術後敗血症性ショックを呈した患者5名の内,死亡を除き,予後調査が可能であった1名を調査した。
症例:58歳,男性,入院前BMI26,FIM126点。大動脈解離StanfordA型のため,緊急で上行大動脈置換術を施行されたが,術後8日目にMRSA敗血症を発症した。術後1日目C反応性蛋白6.1mg/dl,WBC17000μl,Alb3.9g/dl,人工呼吸器管理下にてリハ介入施行。体位ドレナージと軽負荷レジスタンストレーニングを開始。術後8日目に敗血症発症,C反応性蛋白23.91mg/dl,WBC27300,Alb2.3g/dl,リハは体位ドレナージ中心に介入。頭部CT上問題はないが,上肢MMT3,下肢MMT1レベルであった。術後23日目に敗血症が軽快した。C反応性蛋白12mg/dl,WBC9600,Alb1.8g/dl,リハはレジスタンストレーニング,端坐位訓練を施行した。栄養は経鼻栄養(1200Kcal)を術後15日目より開始。術後18日目に人工呼吸器抜管。術後19日目にICU退室し,一般病棟に転棟。術後2か月目より食事摂取開始(1800kcal目標に設定)。C反応性蛋白2.26mg/dl,Alb3g/dl,レジスタンストレーニング,歩行訓練を中心に介入。その後ADL訓練や歩行訓練を重ね,屋外杖歩行を獲得し,術後363日目に退院となった。術後2年目の現在まで再入院なく経過できている。下肢筋力はアニマ社製μ-TASにて評価。膝伸展筋力の推移は(術後5か月目:右/左9/6kg,術後7か月目:16/13kg,10か月目:21/15kg),BMIは(術後5か月目22,7か月目20,退院時22)。FIMは入院前126点,退院時125点,1年後126点であった。
【考察】
症例は術後敗血症性ショックを呈し,人工呼吸器管理とICU滞在日数が長期間であった。敗血症や数日間のICU滞在などにより約半数にICUAWを発症し,左右対称性の四肢麻痺を生じると言われている。本症例も頭部CT上問題はなかったが,全身の筋力低下が著明であった。特に下肢筋力は早期からリハ介入を行ってもADLに繋がるまで期間を要した。神経学的な精査は行えなかったが,ICUAWを呈していた可能性があった。また敗血症は全身の炎症を呈するため,栄養状態の低下が遷延しやすい。本症例も炎症所見が軽快した後より,Albが上昇し体重増加,リハの向上につながったと考えられる。ICU AWが長期化すると死亡率を高め,後遺症を残すと言われており,身体機能低下・認知機能低下があることで,長期予後が不良になるという報告もある。本症例においても316日リハ介入という長期間のフォローを行い,退院時までに高い身体機能レベルにしたことで,1年間再入院なく現在もADLを自立した状態で過ごすことができている。敗血症リハは早期のリハ介入が重要と言われているが,身体機能低下が著しい場合は,長期的な介入が必要と思われる。
【研究意義】
敗血症は身体機能や認知機能低下を起こすと言われている。しかし介入内容や時期についての検討は稀少である。身体機能の低下が予後に影響を与えることも知られているため,本研究は敗血症患者において急性期リハの重要性や長期介入の必要性を調査するデータとなりえると考えられる。