[P2-A-0739] FFDと心機能の関係
柔軟性から判断する心機能のスクリーニング
Keywords:柔軟性, FFD, 心機能
【はじめに】
理学療法診療ガイドライン第1版(2011)の各疾患・領域の理学療法診療ガイドライン「心大血管」において,理学療法評価(指標)の推奨グレードで,柔軟性は心大血管疾患を対象とした理学療法における評価指標として活用された報告は少ない。したがって,推奨グレードはBとされている。柔軟性の改善にはストレッチを行うことが広く普及し,多くの現場で行われている。心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)でも,心血管疾患の運動療法プログラムの中で,ウォーミングアップやクールダウンなど当然のようにストレッチが取り入れられている。しかしガイドライン中にも記載があるように,ストレッチングの具体的効果は十分に証明されていない。理学療法評価における体力構成要素の測定として,筋力やバランスと共に柔軟性の測定は広く行われているが,柔軟性と各因子に関する報告は少ない印象がある。そこで,柔軟性の結果が心機能やその他身体機能とどのような関係があり,それぞれどのような影響があるのか検討し,簡便に評価する新たな指標を検討する事を目的とした。
【方法】
対象は,当院の外来心臓リハビリテーション(以下:心リハ)通院中の虚血性心疾患患者(PCI施行患者)90名(男性47名,女性43名69.4±8.93歳)とした。疾患内訳は急性心筋梗塞(以下:AMI)35名,狭心症55名であった。
柔軟性(FFD)の評価は握力や下肢筋力,バランス(片脚立位)測定などと同時に外来運動療法開始時に行なった。膝関節伸展位で台の上に立ち,反動をつけないように指尖を床に近づけるように行った。高齢者や起立性低血圧などのリスクもあるため近位監視にて行った。その他の測定項目としては,外来開始より1ヶ月以内に測定された身体因子として身長,体重,BMI,生活因子として喫煙歴,心肺運動負荷試験(AT・peak VO2,AT・peak WR),血液生化学データとしてTP,eGFR,BUN,BNP,CK,BNP,心エコーの所見としてEF,E/E’,血圧脈波検査として左右平均ABI,左右平均PWVなどを用いた。
統計解析は,下肢柔軟性の指標とするFFDとその他の身体機能評価項目との関係性をスピアマンの順位相関係数を求めて検討した。また,本研究では,FFDとその他の身体機能評価項目との関係で影響を及ぼす因子を抽出するために身体機能評価項目を目的変数,FFDを説明変数とした重回帰分析のステップワイズ法(変数減少法)を実施した。統計解析はPASW Statistics Ver.17を使用した。
【結果】
FFDと身体機能評価項目との関連について,有意な相関を認めたのは喫煙(p<0.01),TP(p<0.05),AT-WR(p<0.05)であった。FFDに影響を及ぼす因子について重回帰分析により抽出されたのは,EF(R=0.554,p<0.01),身長(R=0.493,p<0.01),AT-WR(R=0.425,p<0.05),喫煙(R=0.268,p<0.05)の4項目であった。
【考察】
FFDと相関がみられた喫煙とTP,AT-WRは,いずれも身体組成に影響を及ぼす因子が考えられ,身体柔軟性に関連する項目として考えられた。
FFDに寄与する因子としてEF,身長,AT-WR,喫煙が抽出された。EFは左室の収縮能を表し心機能の指標の1つとされ,FFDが簡便な心機能や血液循環のスクリーニングとなり得る可能性が示唆された。身長は先行研究からもFFDに関与しやすく,今回の結果からもそれを支持する形となった。喫煙は冠危険因子の1つであり,循環器疾患のみでなく多くの重症疾患のリスクファクターとされている。当然体力に及ぼす影響も大きく,柔軟性にも寄与率は低値である物の関連が見られるものと考えられた。動脈硬化を引き起こすなど血管その物に影響し,循環や筋の弾性なども低下するなど柔軟性との関連が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
心機能の評価は特別な検査を行わなければ得られない情報が多い。理学療法評価の中で簡便な心機能の評価ができることは安全なプログラムの提供にもつながる。今回の結果からも循環に関与する因子が柔軟性と関連があると考えられるため,リスク管理としてもFFDがスクリーニングとして活用できることは意義があると考えられる。
理学療法診療ガイドライン第1版(2011)の各疾患・領域の理学療法診療ガイドライン「心大血管」において,理学療法評価(指標)の推奨グレードで,柔軟性は心大血管疾患を対象とした理学療法における評価指標として活用された報告は少ない。したがって,推奨グレードはBとされている。柔軟性の改善にはストレッチを行うことが広く普及し,多くの現場で行われている。心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)でも,心血管疾患の運動療法プログラムの中で,ウォーミングアップやクールダウンなど当然のようにストレッチが取り入れられている。しかしガイドライン中にも記載があるように,ストレッチングの具体的効果は十分に証明されていない。理学療法評価における体力構成要素の測定として,筋力やバランスと共に柔軟性の測定は広く行われているが,柔軟性と各因子に関する報告は少ない印象がある。そこで,柔軟性の結果が心機能やその他身体機能とどのような関係があり,それぞれどのような影響があるのか検討し,簡便に評価する新たな指標を検討する事を目的とした。
【方法】
対象は,当院の外来心臓リハビリテーション(以下:心リハ)通院中の虚血性心疾患患者(PCI施行患者)90名(男性47名,女性43名69.4±8.93歳)とした。疾患内訳は急性心筋梗塞(以下:AMI)35名,狭心症55名であった。
柔軟性(FFD)の評価は握力や下肢筋力,バランス(片脚立位)測定などと同時に外来運動療法開始時に行なった。膝関節伸展位で台の上に立ち,反動をつけないように指尖を床に近づけるように行った。高齢者や起立性低血圧などのリスクもあるため近位監視にて行った。その他の測定項目としては,外来開始より1ヶ月以内に測定された身体因子として身長,体重,BMI,生活因子として喫煙歴,心肺運動負荷試験(AT・peak VO2,AT・peak WR),血液生化学データとしてTP,eGFR,BUN,BNP,CK,BNP,心エコーの所見としてEF,E/E’,血圧脈波検査として左右平均ABI,左右平均PWVなどを用いた。
統計解析は,下肢柔軟性の指標とするFFDとその他の身体機能評価項目との関係性をスピアマンの順位相関係数を求めて検討した。また,本研究では,FFDとその他の身体機能評価項目との関係で影響を及ぼす因子を抽出するために身体機能評価項目を目的変数,FFDを説明変数とした重回帰分析のステップワイズ法(変数減少法)を実施した。統計解析はPASW Statistics Ver.17を使用した。
【結果】
FFDと身体機能評価項目との関連について,有意な相関を認めたのは喫煙(p<0.01),TP(p<0.05),AT-WR(p<0.05)であった。FFDに影響を及ぼす因子について重回帰分析により抽出されたのは,EF(R=0.554,p<0.01),身長(R=0.493,p<0.01),AT-WR(R=0.425,p<0.05),喫煙(R=0.268,p<0.05)の4項目であった。
【考察】
FFDと相関がみられた喫煙とTP,AT-WRは,いずれも身体組成に影響を及ぼす因子が考えられ,身体柔軟性に関連する項目として考えられた。
FFDに寄与する因子としてEF,身長,AT-WR,喫煙が抽出された。EFは左室の収縮能を表し心機能の指標の1つとされ,FFDが簡便な心機能や血液循環のスクリーニングとなり得る可能性が示唆された。身長は先行研究からもFFDに関与しやすく,今回の結果からもそれを支持する形となった。喫煙は冠危険因子の1つであり,循環器疾患のみでなく多くの重症疾患のリスクファクターとされている。当然体力に及ぼす影響も大きく,柔軟性にも寄与率は低値である物の関連が見られるものと考えられた。動脈硬化を引き起こすなど血管その物に影響し,循環や筋の弾性なども低下するなど柔軟性との関連が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
心機能の評価は特別な検査を行わなければ得られない情報が多い。理学療法評価の中で簡便な心機能の評価ができることは安全なプログラムの提供にもつながる。今回の結果からも循環に関与する因子が柔軟性と関連があると考えられるため,リスク管理としてもFFDがスクリーニングとして活用できることは意義があると考えられる。