[P2-A-0745] 急性心筋梗塞患者におけるリハビリ進行度が在院日数に及ぼす影響についての検討
Keywords:在院日数, リハビリ進行度, 200m歩行開始日
【目的】日本循環器学会のガイドラインによると,AMI後の急性期心臓リハビリテーションのクリニカルパスにおいて,再灌流療法が成功し,Killip I型で合併症がない場合,10~14日での退院を標準的な基準として挙げている。一方,当院ではAMI症例のクリニカルパスは設定せず,個々の病態に合わせた可及的速やかなリハビリの導入,推進を行っているため,症例によってリハビリの進行度,ひいては在院日数に相違が生じているのが現状である。そこで,当院のAMI症例で,再灌流療法が成功しKillipI型で合併症を認めなかった症例群を抽出し,14日での退院が可能であった症例群と,不可能であった症例群の2群に分け検討し,リハ進行度が在院日数に及ぼす影響を調査した。
【方法】2008年9月から2014年7月までにAMIにて再灌流療法として緊急PCIを施行した症例の内,再灌流に成功し,Killip I型で合併症がない症例(死亡,同入院期にCABG施行,同入院期に再梗塞発症,歩行非自立は除外)を対象とした。なお再灌流の成功はPCIにてThrombolysis in Myocardial Infarction Grade(TIMI)3が得られた症例とした。在院日数14日以内であった症例をA群(n=25),15日以上であった症例をB群(n=23)とし2群に分け,年齢,性別,CK最高値,冠動脈の責任病変,残存虚血の有無,IABP留置の有無,ICU滞在時間,左室駆出率(LVEF),端坐位開始日,30m歩行開始日,200m歩行開始日のデータを収集し解析を行った。
【結果】2群間比較の結果,有意差を認めたものは,CK最高値(A群:1394.4±1658.3U/L,B群:2674.1±1817.6U/L,p=0.0037),LVEF(A群:60.6±6.2%,B群:55.1±7.8%,p=0.0205),端坐位開始日(A群:2.0±0.9病日,B群:2.8±1.1病日,p=0.0043),30m歩行開始日(A群:3.3±1.4病日,B群:4.9±1.7病日,p=0.0013),200m歩行開始日(A群:5.2±2.1病日,B群:7.6±2.1病日,p=0.0009)であった。そして,単変量解析の結果,有意であったものは,CK最高値,LVEF,30m歩行開始日,200m歩行開始日であった。更に,多変量解析を行った結果では,200m歩行開始日(オッズ比:1.541,95%信頼区間:1.17-2.16,p=0.009)のみが在院日数を予測する独立因子であり,同項目は在院日数に対する相関係数r=0.48と非常に良好な相関を示し,それは全ての項目の中で最も強い相関を示した。
【考察】本検討において,緊急PCIにより再灌流療法を行い治療したAMI症例で,かつ,心不全をはじめとする合併症を認めない症例群において,概ね標準的な在院期間と推測される14日での退院の可否を規定するものは,リハビリ進行度,特に長距離歩行の速やかな導入であった。その結果から,前出の条件を満たすAMI症例群においては,AMIの重症度の臨床的指標として主に評価されるCK最高値やLVEFなどに依存することなく,積極的なリハビリの導入,推進を図っていく必要があるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本検討から得られた概念は,AMI症例のリハビリに携わる場面において,非常に重要なものと考えられる。合併症を併発しないAMI症例の急性期リハビリの概念,戦略において,非常に意義のあるものである。
【方法】2008年9月から2014年7月までにAMIにて再灌流療法として緊急PCIを施行した症例の内,再灌流に成功し,Killip I型で合併症がない症例(死亡,同入院期にCABG施行,同入院期に再梗塞発症,歩行非自立は除外)を対象とした。なお再灌流の成功はPCIにてThrombolysis in Myocardial Infarction Grade(TIMI)3が得られた症例とした。在院日数14日以内であった症例をA群(n=25),15日以上であった症例をB群(n=23)とし2群に分け,年齢,性別,CK最高値,冠動脈の責任病変,残存虚血の有無,IABP留置の有無,ICU滞在時間,左室駆出率(LVEF),端坐位開始日,30m歩行開始日,200m歩行開始日のデータを収集し解析を行った。
【結果】2群間比較の結果,有意差を認めたものは,CK最高値(A群:1394.4±1658.3U/L,B群:2674.1±1817.6U/L,p=0.0037),LVEF(A群:60.6±6.2%,B群:55.1±7.8%,p=0.0205),端坐位開始日(A群:2.0±0.9病日,B群:2.8±1.1病日,p=0.0043),30m歩行開始日(A群:3.3±1.4病日,B群:4.9±1.7病日,p=0.0013),200m歩行開始日(A群:5.2±2.1病日,B群:7.6±2.1病日,p=0.0009)であった。そして,単変量解析の結果,有意であったものは,CK最高値,LVEF,30m歩行開始日,200m歩行開始日であった。更に,多変量解析を行った結果では,200m歩行開始日(オッズ比:1.541,95%信頼区間:1.17-2.16,p=0.009)のみが在院日数を予測する独立因子であり,同項目は在院日数に対する相関係数r=0.48と非常に良好な相関を示し,それは全ての項目の中で最も強い相関を示した。
【考察】本検討において,緊急PCIにより再灌流療法を行い治療したAMI症例で,かつ,心不全をはじめとする合併症を認めない症例群において,概ね標準的な在院期間と推測される14日での退院の可否を規定するものは,リハビリ進行度,特に長距離歩行の速やかな導入であった。その結果から,前出の条件を満たすAMI症例群においては,AMIの重症度の臨床的指標として主に評価されるCK最高値やLVEFなどに依存することなく,積極的なリハビリの導入,推進を図っていく必要があるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本検討から得られた概念は,AMI症例のリハビリに携わる場面において,非常に重要なものと考えられる。合併症を併発しないAMI症例の急性期リハビリの概念,戦略において,非常に意義のあるものである。