第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター2

代謝

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0750] 当院における心血管疾患を合併した血液透析患者に対する運動療法中止状況について

長谷川靖1, 大野尚美1, 長谷川伸也2, 本間里望2, 佐野愛2, 星野寛子2, 太田朱音3, 三間渉4 (1.信楽園病院リハビリテーション科, 2.信楽園病院看護部, 3.信楽園病院臨床検査科, 4.信楽園病院循環器内科)

Keywords:心臓リハビリテーション, 血液透析, 重複障害

【はじめに,目的】
近年,心臓リハビリテーションにおいても重複障害を有する患者は増加している。血液透析を必要とする末期腎不全患者において,心血管疾患の合併率は高いことが知られている。運動習慣のある血液透析患者は生命予後が良いことが報告されているが,心血管疾患を合併した血液透析患者に対する運動療法は未だ不明な点が多い。血液透析患者は体液量や血圧変動が大きく,運動療法の実施時期について明確な指針はない。当院において心臓リハビリテーションに参加した,36名の心血管疾患を合併した血液透析患者に対する運動療法の実施及び中止状況について検討した。
【方法】
当院において2011年9月から2014年9月までに心臓リハビリテーションに参加した心血管疾患を有し,3回/週の血液透析を受けている36名(男性33名,女性3名,平均年齢67.0歳(55-84歳))を対象とした。虚血性心疾患21名,心不全15名であり,血液透析導入原因疾患は糖尿病性腎症16名,慢性腎炎16名,腎硬化症3名,多発性嚢胞腎1名であった。対象者に対して血液透析前(中1日),血液透析前(中2日),血液透析後,非血液透析日に心電図モニター監視下でエルゴメーターもしくはトレッドミルを使用して運動療法を実施した。中止基準は『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)』を参考に運動療法中止状況を調査した。
【結果】
総運動療法実施1335回,中止16回(中止率1.2%)で重篤な虚血発作や心停止等の心事故は認められなかった。中止率は血液透析前(中1日)で0.7%(中止6回/運動療法実施806回),血液透析前(中2日)で0.4%(中止1回/運動療法実施239回),血液透析後で2.0%(中止1回/運動療法実施51回),非血液透析日で3.3%(中止8回/運動療法実施239回)であった。中止理由は血圧異常3回(18.8%),血糖値異常3回(18.8%),頻脈性不整脈2回(12.5%),ST低下2回(12.5%),胸部症状2回(12.5%),非持続性心室頻拍3連1回(6.3%),息切れ1回(6.3%),倦怠感1回(6.3%),嘔気1回(6.3%)であった。心臓リハビリテーションに参加した非血液透析患者においては2013年9月から2014年9月までに運動療法実施2828回,中止7回(頻脈性不整脈2回,非持続性心室頻拍3連1回,血圧異常1回,血糖値異常1回,息切れ1回,嘔気1回)中止率は0.2%であった。研究対象期間における心血管疾患を合併した血液透析患者は中止率1.2%であり,非血液透析患者と比較して有意に中止率が高かった。(p<0.01)
【考察】
血液透析患者の運動療法を実施するにあたり血液透析後は避けるべきとの報告がある。非血液透析日は最も体液量が安定しており中止率が低いと予想される。しかし今回の結果では血液透析前(中1日),血液透析前(中2日)の中止率は低かったが,非血液透析日は血液透析後と同程度であった。今回の研究では運動療法実施前のキャンセル状況についての把握はできず,今後はその点も考慮する必要があると考えられた。また血液透析後,非血液透析日,血液透析前(中2日)の運動療法実施回数が少ないことも影響した可能性がある。今回の結果から心血管疾患を合併した血液透析患者の運動療法は,非血液透析患者と比べ合併症が多いため,適切な実施時期の検討は今後も必要である。
【理学療法学研究としての意義】
心血管疾患を合併した血液透析患者に対しての適切な運動療法実施時期については未だ不明な点が多い。本研究が一つの判断材料になればと考えるが,血液透析患者の生活スタイルは特殊なため,それぞれの患者に対する個別性の問題も含めて,これからも症例を積み重ねていかなくてはならない。また最近では血液透析中の運動療法についても報告があり,今後は心血管疾患を合併した血液透析患者に対する血液透析中の運動療法実施について検討していきたい。それらに伴い結果を科学的に証明し,安全性向上につなげていくことも必要である。心臓リハビリテーションは患者教育から自己管理が可能となるように取り組むプログラムであり,本研究は在宅での安全な運動療法実施のための指導においても意義のあることではないかと考える。