[P2-A-0754] 臨床実習指導者への意識調査
理学療法教育をどのように学んでいるか
Keywords:臨床実習, 臨床実習指導者, 理学療法教育
【はじめに,目的】
近年,臨床実習は多様化しており,臨床実習指導者(以下,SV)は試行錯誤しながら,日々の多忙な臨床業務の中,指導を行っている。我々は,より良い臨床実習指導体制の構築のため,H23年度からSVの現状把握を目的に質問紙調査を行い,第48回及び第49回日本理学療法学術大会にて結果を報告してきた。臨床実習は理学療法教育の一環として実施されるため,教育的視点を踏まえた指導が必要であり,そのことを念頭においた指導が学生の成長に影響を与えると推測される。今回,SVが理学療法教育をどのように学んでいるかについて,把握と分析を行うことを目的とする。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適切と判断されたものは除外した。
【結果】
790名の回答が得られ,有効回答数は689名であった。そのうち指導経験があると回答した484名(男性309名,女性175名,臨床経験年数8.5±6.1年)を分析対象とした。「指導方法を学びたいか」については,学びたい319名(65.9%),学びたくない18名(3.7%),どちらでもない135名(27.9%),無回答12名(2.5%)であった。「何を指導の参考にしているか(複数回答可)」は,学生時代に受けた指導289名(33.0%),就職後の体験的な指導426名(48.6%),指導に関する研修会で学んだ指導135名(15.4%),その他27名(3.1%)であった。「他者からの指導者評価は必要か」については,必要380名(78.5%),必要なし85名(17.6%),その他2名(0.4%),無回答17名(3.5%)であり,「評価されたい内容(複数回答可)」は,指導内容・方法346名(50.1%),学生の成長度122名(17.7%),指導者の態度122名(17.7%),学生とのコミュニケーション97名(14.1%),その他3名(0.4%)であった。「指導に関する施設内の研修有無」は,ある133名(22.5%),ない365名(61.9%),無回答92名(15.6%)であり,「指導に関する施設外の研修参加有無」は,ある170名(28.8%),ない344名(58.3%),無回答76名(12.9%)であった。「指導に関する教材を活用しているか」は,している47名(7.9%),していない408名(68.9%),無回答135名(22.8%)であった。
【考察】
結果より,多くのSVが指導の参考にしているのは,自身が体験してきた実習や就職後の経験に基づいて行っていることが分かった。また,SVの半数以上が指導方法を学びたいと回答し,自身の指導方法・内容の評価に関心を示したが,指導に関する院内研修の実施と院外研修会の参加はともに3割以下であり,指導教本の活用は,1割以下であった。これらのことから,SVが自身のこれまでの体験的・経験的なことをもとに指導を行っているため,指導に関して学ぶ必要性について認識はあるが,研修会の開催・参加,指導に関する教材を活用するといった行動に至っていない現状が明らかとなった。したがって,まずは,臨床実習に関わる一連の流れの中,教育的視点を踏まえた指導方法を学ぶ機会を持つことが重要であると考える。そのためには,SV会議での教育講演に加えて,実習施設訪問時に教員から教育的視点のアドバイスをいただく,実習施設訪問終了後に実習施設で指導に関する講義の実施していただくなど,SV個人はもちろん,施設全体で理学療法教育について学ぶ場を作ることが有効であると考える。臨床実習は,臨床現場において実施されているが,学生を中心としたSVと教員の共同によるアプローチがより良い臨床実習指導に繋がると考える。今後は,現状を踏まえた理学療法教育を学ぶための方策を検討していき,より良い床実習指導が行える体制の構築を目指していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の調査により,SVが理学療法教育をどのように学んでいるかについて,実態を把握することができた。指導に関して学ぶ意欲があるも,行動に至っていない現状を踏まえ,理学療法士が理学療法教育について,より現実的に学べる対策を考えていくことが重要である。今回の結果は,実態を踏まえた上での方策の一助として大変意義深い。
近年,臨床実習は多様化しており,臨床実習指導者(以下,SV)は試行錯誤しながら,日々の多忙な臨床業務の中,指導を行っている。我々は,より良い臨床実習指導体制の構築のため,H23年度からSVの現状把握を目的に質問紙調査を行い,第48回及び第49回日本理学療法学術大会にて結果を報告してきた。臨床実習は理学療法教育の一環として実施されるため,教育的視点を踏まえた指導が必要であり,そのことを念頭においた指導が学生の成長に影響を与えると推測される。今回,SVが理学療法教育をどのように学んでいるかについて,把握と分析を行うことを目的とする。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適切と判断されたものは除外した。
【結果】
790名の回答が得られ,有効回答数は689名であった。そのうち指導経験があると回答した484名(男性309名,女性175名,臨床経験年数8.5±6.1年)を分析対象とした。「指導方法を学びたいか」については,学びたい319名(65.9%),学びたくない18名(3.7%),どちらでもない135名(27.9%),無回答12名(2.5%)であった。「何を指導の参考にしているか(複数回答可)」は,学生時代に受けた指導289名(33.0%),就職後の体験的な指導426名(48.6%),指導に関する研修会で学んだ指導135名(15.4%),その他27名(3.1%)であった。「他者からの指導者評価は必要か」については,必要380名(78.5%),必要なし85名(17.6%),その他2名(0.4%),無回答17名(3.5%)であり,「評価されたい内容(複数回答可)」は,指導内容・方法346名(50.1%),学生の成長度122名(17.7%),指導者の態度122名(17.7%),学生とのコミュニケーション97名(14.1%),その他3名(0.4%)であった。「指導に関する施設内の研修有無」は,ある133名(22.5%),ない365名(61.9%),無回答92名(15.6%)であり,「指導に関する施設外の研修参加有無」は,ある170名(28.8%),ない344名(58.3%),無回答76名(12.9%)であった。「指導に関する教材を活用しているか」は,している47名(7.9%),していない408名(68.9%),無回答135名(22.8%)であった。
【考察】
結果より,多くのSVが指導の参考にしているのは,自身が体験してきた実習や就職後の経験に基づいて行っていることが分かった。また,SVの半数以上が指導方法を学びたいと回答し,自身の指導方法・内容の評価に関心を示したが,指導に関する院内研修の実施と院外研修会の参加はともに3割以下であり,指導教本の活用は,1割以下であった。これらのことから,SVが自身のこれまでの体験的・経験的なことをもとに指導を行っているため,指導に関して学ぶ必要性について認識はあるが,研修会の開催・参加,指導に関する教材を活用するといった行動に至っていない現状が明らかとなった。したがって,まずは,臨床実習に関わる一連の流れの中,教育的視点を踏まえた指導方法を学ぶ機会を持つことが重要であると考える。そのためには,SV会議での教育講演に加えて,実習施設訪問時に教員から教育的視点のアドバイスをいただく,実習施設訪問終了後に実習施設で指導に関する講義の実施していただくなど,SV個人はもちろん,施設全体で理学療法教育について学ぶ場を作ることが有効であると考える。臨床実習は,臨床現場において実施されているが,学生を中心としたSVと教員の共同によるアプローチがより良い臨床実習指導に繋がると考える。今後は,現状を踏まえた理学療法教育を学ぶための方策を検討していき,より良い床実習指導が行える体制の構築を目指していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の調査により,SVが理学療法教育をどのように学んでいるかについて,実態を把握することができた。指導に関して学ぶ意欲があるも,行動に至っていない現状を踏まえ,理学療法士が理学療法教育について,より現実的に学べる対策を考えていくことが重要である。今回の結果は,実態を踏まえた上での方策の一助として大変意義深い。