第50回日本理学療法学術大会

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Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-A-0765] 病院勤務の女性職員におけるメンターの存在が職場環境に及ぼす効果

安田雅美1, 岩月宏泰2, 越後あゆみ2, 由留木裕子2 (1.名古屋市立西部医療センター, 2.青森県立保健大学大学院)

Keywords:就業意識, 病院女性職員, キャリア形成

【はじめに,目的】
本邦では医療,保健,福祉の領域では女性職員が多く,勤続年数も長期化している。この背景には法律による整備や各事業所の努力など,女性の働きやすい環境づくりがある。ところで,女性職員がキャリアを形成するにはしっかりとした就業意識,職業人としての自覚を持つことが重要である。職場におけるメンター(指導者)とは「キャリア形成上の応援者」であるが,仕事上で励ましてくれた人,人格を磨くために尊敬できた人などが含まれる。しかし,メンターに出会えても本人が意図的な課題づくりや行動を起こさなければ,長期的なキャリア開発につながらない。今回,病院女性職員を対象にメンターの役割が本人の職場環境意識にどのような影響を及ぼすか検討した。
【方法】

対象は質問紙調査に回答した4医療機関に勤務する女性職員132名(年齢階級の中央値は30歳台)であり,職種の内訳は理学療法士42名,作業療法士25名,看護師33名,介護職32名であった。質問紙調査(留め置き法)時期は2014年6~9月であり,調査票には基本属性,職場環境に係わる意識についての設問(女性と仕事研究所作成,13項目),メンターの役割尺度(合谷1998,18項目)などで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,各測定尺度間の関係についてAmos16.0Jを使用して共分散構造分析を行った。
【結果と考察】

共分散構造分析では潜在変数を「働きやすさ」とメンターによる「キャリア支援」,「心理的支援」及び「社会的支援」の4要因とし,「働きやすさ」と他要因間に一方向の因果経路を設定したモデルを作成し,推定法には最尤法を採用した。本モデルの適合度指標はχ2値=155.02,p=.23,GFI=.90,CFI=.95,RMSEA=.02であり,適合度は良好であった。その結果,「働きやすさ」から「キャリア支援」と「心理的支援」へ因果関係が認められ,各々の因果係数は.68と.61であった。メンタリングの機能にはメンティのキャリア発達を促進するキャリア的支援行動と一人の成熟した人間への成長を促す役割モデルや受容と確認という心理・社会的機能がある。本研究では回答者の職場の働きやすさに訓練,保護といったキャリア的支援行動と人間的成長を促す心理的機能が深くかかわっていることが明らかとなった。特に,回答者の「働きやすさ」に最も影響を与えているのはパス係数の絶対値が0.66と最も大きい「心理的機能」であり,この項目には「受容と共感」,「役割モデル」などの観測変数を含んでいた。このことは,病院女性職員にとっても職業生活から生じるストレスは多く,これを低減させるためには,上司や部下という人間関係はもとより,自分より経験豊かで成熟した同僚から得られる支援は良い職場環境を作るうえで重要なことといえる。


【理学療法学研究としての意義】

本研究の結果,理学療法士も含む病院に勤務する女性職員の職業生活を全うさせるためには,各事業所で経験豊かで成熟したメンターがメンティに行う具体的な支援行動を体系化することが必要と考えられる。