[P2-A-0766] 筋損傷からの回復を促進させる超音波刺激はMyoD,myogenin量を亢進させる
Keywords:超音波, 筋損傷, 筋衛星細胞
【はじめに,目的】
筋損傷は,伸張性収縮(LC:Lengthening Contraction)により生じやすいと言われており,疼痛や筋力低下,関節可動域の低下などの機能障害を引き起こす要因となる。筋損傷からの回復を促進させることは,機能障害の低下を軽減し,日常生活やスポーツ活動への早期の復帰には重要である。これまでに我々は,筋損傷2時間後の超音波刺激が筋損傷からの回復を促進させることを,再現性の高い筋損傷モデルラットを用いて明らかにした。しかし,この超音波刺激がどのようなメカニズムにより筋損傷からの回復促進を引き起こすのかは不明である。一般的に,損傷した筋の再生では,筋衛星細胞が活性化し,筋芽細胞へと分化・融合し筋管細胞が作られると言われている(Tidball,2011)。そこで,本研究の目的は,再現性の高い筋損傷モデルを用いて,損傷2時間後の超音波刺激が筋衛星細胞の活性化を促進するかどうかをMyoD,myogenin量を指標に明らかにすることである。
【方法】
8週齢Wistar系雄性ラットを,筋損傷モデルに超音波刺激(US)を施行したLC+US群と,筋損傷モデルにUSを施行しないLC群,筋損傷も超音波刺激も施行していない無処置のCON群にわけた。筋損傷モデルは,足関節背屈筋群に伸張性収縮を行わせて作製した。伸張性収縮は,電気刺激装置により足関節背屈筋群に対して最大収縮が生じる条件で電気刺激(Electronic current 5 mA,Stimulation frequency 100 Hz,Duration 1 ms,Train duration 650 ms)を与えるとともに,小動物用足関節運動装置を用いて角速度200 deg/secで50回,足関節を他動的に底屈させることにより行った。超音波刺激は,伸張性収縮2時間後に,周波数3MHzの間欠的照射(50% cut)を,照射出力強度0.5 W/cm2で10分間与えた。LC+US群とLC群の伸張性収縮12,24,48,72,96,120時間後の前脛骨筋を筋採取し,電気泳動法及びWestern blot法を用いて筋分化調節因子であるMyoDおよびmyogeninの量の経時的変化を調べた。各群の比較には,一元配置分散分析を用いた。一元配置分散分析で有意差が認められた場合には,Tukeyの方法を用いて多重比較検定を行なった。なお,いずれの統計手法とも有意水準は5%未満とした。
【結果】
MyoD量はLC+US群,LC群ともに伸張性収縮24時間後に最大値となり,その後,徐々に減少する一峰性の経時的変化を示した。また,各測定時期におけるMyoD量は,LC群と比較してLC+US群の方が多く,LC群の同時期と比較したLC+US群のMyoD量は,伸張性収縮12時間後で3.4倍,24時間後で2.4倍,48時間後で2.1倍,72時間後で1.2倍,96時間後で1.5倍,120時間後1.2倍であった。このうち,伸張性収縮12時間後と24時間後のLC+US群のMyoD量は,LC群に対して有意に多かった。myogenin量はMyoD量と同様の経時的変化を示した。LC群の同時期と比較したLC+US群のmyogenin量は,伸張性収縮12時間後で1.4倍,24時間後で1.3倍,48時間後で1.2倍,72時間後で1.1倍,96時間後で1.2倍,120時間後で1.0倍であった。このうち,伸張性収縮12時間後のLC+US群のmyogenin量は,LC群に対して有意に多かった。
【考察】
今回の研究により筋損傷2時間後の早期に1回だけ与える超音波刺激は,筋分化調整因子であるMyoDとmyogenin量を増加させることが明らかとなった。この結果から,超音波刺激が筋衛星細胞の活性化を促進し,筋損傷からの回復を促進しているのか,その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。これまでに,筋損傷からの回復には筋衛星細胞が自・傍分泌するIGF-1,FGF,HGF,TGF-βが関与していると報告されている(Hawke,2001)。よって,超音波刺激が直接的に筋衛星細胞に影響を及ぼし,筋衛星細胞の活性化を促進していることも考えられる。また,筋衛星細胞の活性にはマクロファージやその他の細胞が分泌するサイトカインやマイオカインが関与しているという報告がある(Young,1990,Pillion,2013)。よって超音波刺激がマクロファージやその他の細胞に影響している場合も考えられる。今後,これらの細胞応答を調べ,超音波刺激がどのように筋損傷からの回復を促進させるか,そのメカニズムを明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
超音波刺激による筋損傷からの回復促進効果のメカニズムの一端を客観的に明らかにした。本結果は,筋損傷患者の早期回復に対する超音波治療のエビデンス構築に役立つと考える。また,本研究手法を用いれば,強度,時間,タイミングなどの違いによる回復促進効果の違いを検証することが可能となる。
筋損傷は,伸張性収縮(LC:Lengthening Contraction)により生じやすいと言われており,疼痛や筋力低下,関節可動域の低下などの機能障害を引き起こす要因となる。筋損傷からの回復を促進させることは,機能障害の低下を軽減し,日常生活やスポーツ活動への早期の復帰には重要である。これまでに我々は,筋損傷2時間後の超音波刺激が筋損傷からの回復を促進させることを,再現性の高い筋損傷モデルラットを用いて明らかにした。しかし,この超音波刺激がどのようなメカニズムにより筋損傷からの回復促進を引き起こすのかは不明である。一般的に,損傷した筋の再生では,筋衛星細胞が活性化し,筋芽細胞へと分化・融合し筋管細胞が作られると言われている(Tidball,2011)。そこで,本研究の目的は,再現性の高い筋損傷モデルを用いて,損傷2時間後の超音波刺激が筋衛星細胞の活性化を促進するかどうかをMyoD,myogenin量を指標に明らかにすることである。
【方法】
8週齢Wistar系雄性ラットを,筋損傷モデルに超音波刺激(US)を施行したLC+US群と,筋損傷モデルにUSを施行しないLC群,筋損傷も超音波刺激も施行していない無処置のCON群にわけた。筋損傷モデルは,足関節背屈筋群に伸張性収縮を行わせて作製した。伸張性収縮は,電気刺激装置により足関節背屈筋群に対して最大収縮が生じる条件で電気刺激(Electronic current 5 mA,Stimulation frequency 100 Hz,Duration 1 ms,Train duration 650 ms)を与えるとともに,小動物用足関節運動装置を用いて角速度200 deg/secで50回,足関節を他動的に底屈させることにより行った。超音波刺激は,伸張性収縮2時間後に,周波数3MHzの間欠的照射(50% cut)を,照射出力強度0.5 W/cm2で10分間与えた。LC+US群とLC群の伸張性収縮12,24,48,72,96,120時間後の前脛骨筋を筋採取し,電気泳動法及びWestern blot法を用いて筋分化調節因子であるMyoDおよびmyogeninの量の経時的変化を調べた。各群の比較には,一元配置分散分析を用いた。一元配置分散分析で有意差が認められた場合には,Tukeyの方法を用いて多重比較検定を行なった。なお,いずれの統計手法とも有意水準は5%未満とした。
【結果】
MyoD量はLC+US群,LC群ともに伸張性収縮24時間後に最大値となり,その後,徐々に減少する一峰性の経時的変化を示した。また,各測定時期におけるMyoD量は,LC群と比較してLC+US群の方が多く,LC群の同時期と比較したLC+US群のMyoD量は,伸張性収縮12時間後で3.4倍,24時間後で2.4倍,48時間後で2.1倍,72時間後で1.2倍,96時間後で1.5倍,120時間後1.2倍であった。このうち,伸張性収縮12時間後と24時間後のLC+US群のMyoD量は,LC群に対して有意に多かった。myogenin量はMyoD量と同様の経時的変化を示した。LC群の同時期と比較したLC+US群のmyogenin量は,伸張性収縮12時間後で1.4倍,24時間後で1.3倍,48時間後で1.2倍,72時間後で1.1倍,96時間後で1.2倍,120時間後で1.0倍であった。このうち,伸張性収縮12時間後のLC+US群のmyogenin量は,LC群に対して有意に多かった。
【考察】
今回の研究により筋損傷2時間後の早期に1回だけ与える超音波刺激は,筋分化調整因子であるMyoDとmyogenin量を増加させることが明らかとなった。この結果から,超音波刺激が筋衛星細胞の活性化を促進し,筋損傷からの回復を促進しているのか,その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。これまでに,筋損傷からの回復には筋衛星細胞が自・傍分泌するIGF-1,FGF,HGF,TGF-βが関与していると報告されている(Hawke,2001)。よって,超音波刺激が直接的に筋衛星細胞に影響を及ぼし,筋衛星細胞の活性化を促進していることも考えられる。また,筋衛星細胞の活性にはマクロファージやその他の細胞が分泌するサイトカインやマイオカインが関与しているという報告がある(Young,1990,Pillion,2013)。よって超音波刺激がマクロファージやその他の細胞に影響している場合も考えられる。今後,これらの細胞応答を調べ,超音波刺激がどのように筋損傷からの回復を促進させるか,そのメカニズムを明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
超音波刺激による筋損傷からの回復促進効果のメカニズムの一端を客観的に明らかにした。本結果は,筋損傷患者の早期回復に対する超音波治療のエビデンス構築に役立つと考える。また,本研究手法を用いれば,強度,時間,タイミングなどの違いによる回復促進効果の違いを検証することが可能となる。