第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

症例研究 ポスター7

内部障害/循環2

Sat. Jun 6, 2015 1:50 PM - 2:50 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0397] 肺静脈閉塞症患者に対する運動療法や呼吸筋筋力増強が有用であった一例

中尾周平1,2, 長谷場純仁1,2, 榊間春利2, 吉田輝1 (1.鹿児島大学医学部・歯学部附属病院リハビリテーション部, 2.鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻)

Keywords:肺静脈閉塞症, 運動療法, 呼吸筋筋力増強

【目的】
肺静脈閉塞症(PVOD)は,肺動脈性肺高血圧症(PAH)を呈する疾患の中で10%以下と言われる極めて稀な疾患であり,治療抵抗性で非常に予後不良な疾患である。PAHに対する運動療法の重要性が認識されているが,PVODに伴うものはほとんど報告がない。これらに対する運動療法と呼吸筋筋力増強を経験したので報告する。
【症例提示】
60歳後半の女性。労作時の呼吸苦を自覚し,次第に増悪がみられ,心エコーにて右室収縮期圧(RVSP)66 mmHgと高値であったため,当院精査入院となった。右心カテーテル検査にて平均肺動脈圧(mPAP)36 mmHgと上昇を認めた。肺拡散能が著しく低下していることや胸部CT所見などからPVODと診断された。労作時のSpO2は酸素5L/分投与下で90%を下回る状態であった。
【経過と考察】
入院10日目よりベッド上での四肢筋力増強,呼吸指導,歩行練習,ADL練習などの運動療法を開始した。50日目より,エルゴメータを負荷量0W,時間15分より開始し,状態に応じて増減した。最大吸気圧(MIP)の低下がみられたため,MIPの15~30%の負荷量でスレッショルドによる呼吸筋筋力増強を追加した。128日目にADLおよび屋内歩行が自立し,自宅退院となった。入院時と退院前の検査値は,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は146.2 pg/mlから64.5 pg/mlへ,RVSPは74.0 mmHgから44.1 mmHgへ,mPAPは36 mmHgから28 mmHgへ,拡散能は33.1%から47.2%へ改善を認めた。更に呼吸筋力はMIPが35.0 cmH2Oから51.6 cmH2Oへ,6分間歩行距離は180 mから230 mへ,最高酸素摂取量は8.2 ml/min/kgから10.8 ml/min/kgへ,NRADLは46点から56点へ改善を認めた。一方,HADSは不安が3点から7点へ,抑うつが5点から12点となり,入院中に不安や抑うつが強まっていた。
PVODに対する運動療法や呼吸筋筋力増強は,運動耐容能やADLの向上に寄与する可能性が示唆された。また,不安や抑うつに対する心理面のサポートも必要であると考えられた。