第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター8

内部障害/呼吸

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0403] フィジカルアセスメントが運動の指標として有効であった気管軟化症の一症例

上村洋充, 吉川琢磨, 坂本佳代, 後藤一平 (大阪鉄道病院リハビリテーション科)

キーワード:人工呼吸器離脱, 運動指標, dying spell

【目的】
気管軟化症は気道が脆弱であり,呼気時もしくは胸腔内圧上昇時に気道内腔を保持できないために生じる閉塞性気道病変である。本症例は気管内挿管中においても一過性のチアノーゼ発作が起こり,気管軟化症の存在を示唆するdying spellを生じることがあり治療に難渋した。理学療法介入において客観的指標では対応困難であり,安全に進めるための取り組みについて知見を得たので報告する。
【症例提示】
65歳男性。62歳時声門癌に対しradiation,2年後再発認め,S病院にて喉頭全摘,右頸部郭清術試行,永久気管孔を作成された。その後もS病院で経過観察中,X年8月に呼吸困難感出現しCOPD,気管軟化症と診断。同年10月肺炎にて人工呼吸器管理となる。肺炎改善後,当院転院となり入院当日より理学療法開始。
【経過と考察】
入院時CPAPにて管理。設定はFiO2 0.35,PEEP5cmH2O,PS7cmH2O。端座位は持続可能も立ち上がりに努力を要し,立位保持でも呼吸困難感が増加傾向にあった。安静時Borg scale 3,立ち上がり,立位時5,誘引なく安静時Borg scale 7を示すこともあった。筋力は四肢MMT4。治療において阻害となるのは主気管レベルでの容易な気道狭窄の増悪とリカバリーの遅延であり,その狭窄の程度は気管内挿管中においても時にdying spellを発生するほどであった。そのため,分時換気量やSpO2の低下,HR上昇,気道内圧変化などのパラメータを追っていては間に合わず,各パラメータの変化が見られる前より患者の症状を鋭敏に反映する呼吸音や換気パターンを捕らえ運動を進めた。具体的には呼吸音の高調化や呼気時の連続性ラ音,呼気努力の増悪である。この変化を目安にインターバル方式でex.を行うことで高度気道狭窄を回避し,最終的には日中トラキオマスク下にて室内トイレ歩行可能となった。本症例のように一気に気道狭窄が増悪し,蘇生が必要な場面も予測されるケースでは病態の変化を鋭敏に捉え治療を行う必要がある。