第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター8

内部障害/呼吸

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0409] 酸素吸入方法を工夫することで身体活動を維持できた慢性ベリリウム肺を伴う患者の理学療法

川路具弘1, 藤代国幸1, 安江誠人1, 中根靖隆1, 長谷川隆史2, 内山靖3 (1.独立行政法人労働者健康福祉機構旭労災病院, 2.独立行政法人労働者健康福祉機構中部労災病院, 3.名古屋大学大学院医学系研究科)

キーワード:身体活動, 在宅酸素療法, 酸素吸入方法

【目的】
在宅酸素療法(以下HOT)を行っている症例では酸素吸入量が多くなるほど,外出可能な時間が制限され身体活動が制限されやすくなる。そこで今回,慢性ベリリウム肺により労作時毎分6LにてHOT使用している症例の酸素吸入方法を検討し,活動性を維持できた症例の理学療法を検証する。
【症例提示】
60歳代,男性。べリリア磁器製造に従事し,昭和50年代にベリリウムばく露による慢性ベリリウム肺と診断された。
【経過と考察】
X年,気胸を発症し入院となり呼吸リハビリテーション(以下 呼吸リハ)を実施。その後X+3年に労作時酸素流量2LでHOT導入となったが,身体活動量が多かったため液体酸素,呼吸同調器を導入した。X+6年には3Lへ増量し,X+7年には呼吸同調器使用では労作時低酸素血症が著しく6L連続投与へ変更した。X+8年,呼吸苦増強を認め入院し呼吸リハを実施した。労作時低酸素血症の増悪を認めたが,労作時酸素流量はHOTの上限であったため増量はできず,酸素吸入方法について検討した。経鼻カニューレ,経鼻カニューレ+サージカルマスク,リザーバー式カニューレノーマル型,リザーバー式カニューレペンダント型を使用し6分間歩行試験を比較し,歩行距離,呼吸困難感,SpO2,脈拍を計測した。その結果,リザーバー付カニューレを使用することで労作時低酸素血症,歩行距離が改善した。外出する場合を考慮し外観上の問題からペンダント型を導入し,買い物など家族との外出を継続して行えている。
慢性ベリリウム肺の呼吸器症状は急速に進行し停止することはないとされており,本症例においても労作時低酸素血症が増悪していった。COPDにおいて身体活動量は最も強い予後因子であるとされ,それを維持,向上させることが呼吸リハの最終的な目標の一つであるとされている。本症例では労作時低酸素血症が次第に増悪していく中,労作時酸素流量・吸入方法を調整することにより,身体活動を保つことができた。