第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター11

生活環境支援/福祉用具・地域在宅2

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0423] 短期間の訪問リハビリテーションにより生活範囲が拡大した一症例

菅野ひとみ, 中村潤二, 北別府慎介 (西大和リハビリテーション病院)

キーワード:訪問リハビリテーション, 社会参加, 生活環境整備

【目的】
訪問リハビリテーション(訪リハ)で妻との屋外歩行の獲得および生活範囲が拡大した症例を経験したので報告する。
【症例提示】
妻と二人暮らしの70歳代男性で,胸髄損傷(T2)により不全対麻痺(ASIA impairment scale C)を呈しており,要介護4であった。回復期リハビリテーション病棟に6ヶ月間入院し,片ロフストランド杖で妻と約30mの介助歩行が可能となり退院となった。妻と公園を歩くことを退院後の目標とされていたが,「二人で歩くにはまだ自信がない」と不安が強かったため,退院直後より訪リハが開始された。
【経過と考察】
「妻との公園での歩行の定着」を主目的とし,週2回40分間の介入を開始した。開始時のFIMは73点,Life space assessment(LSA)は6点であり,「デイケアに通う自信もない」と話しており,外出の機会が減少していた。自宅内での活動量の向上のため,自主練習を提案し,自宅環境の調整を行った。公園での歩行に向けて,まずは理学療法士(PT)と自宅周囲の歩行練習を実施した。歩容の変化によりみられた転倒傾向や最大歩行距離に関して,症例と妻に頻回にフィードバックした。6週目よりPT見守り下で妻との屋外歩行練習を開始した。この頃から,在宅生活に余裕が出来,映画鑑賞や娘の家に行くなど生活範囲の拡大も見られ始めた。9週目より目標としていた公園での歩行練習を開始した。公園での歩行を3回ほど実施すると自信もつき,二人で公園での歩行が実施できるようになったため,約3カ月で訪リハは終了となった。終了時のFIMは75点,LSAは27点であった。
訪リハ前後でFIMは僅かな改善に留まったが,LSAは大幅に改善した。PTによる介入で,自主練習の提案や自宅の環境調整を行いADLを維持しながら,屋外歩行の安全性を評価し,頻回にフィードバックしたことが,症例や妻の自信につながり,早期に公園での歩行が獲得でき,LSAの改善に繋がった可能性がある。