[P2-B-0434] 上肢挙上可能となった腱板広範囲断裂症例
~1ヶ月間の入院における集中的理学療法を通して~
キーワード:腱板広範囲断裂, 保存療法, 集中的理学療法
【目的】腱板広範囲断裂症例では,筋力低下,肩関節可動域制限および疼痛等によって日常生活が著しく低下することがある。さらに高齢かつ腱板断端部の変性が著しい場合や身体的合併症のリスクがある場合は手術による修復術が困難であり,保存療法が選択されるケースがある。今回,右肩腱板広範囲断裂症例の入院における保存的治療により効果を得られた症例につき,検討を加え報告する。【症例提示】74歳・男性,2009年頃から右肩に痛みが出現した。徐々に増強し,他院にて2011年2月右肩腱板修復術施行したが,再断裂を認め,2011年11月に再度デブリドマンの手術が行われた。その後3ヶ月間,理学療法が行われたが,疼痛残存し挙上困難のため2012年2月,当院に紹介受診し右肩腱板広範囲断裂(棘上筋,棘下筋完全断裂:脂肪変性Goutalier grade4)の診断を受け,保存療法のため入院となる。【経過と考察】理学療法開始時は自動挙上50°,下垂位外旋30°,JOAスコア44/100,MMT右側の僧帽筋下部2,中部2,上部4,前鋸筋2,棘下筋3-であった。運動療法は1)右肩最大挙上位からの屈曲自動運動に対して徒手による介助と抵抗運動。2)右上肢挙上位での肩甲骨のprotraction運動。3)右肩内転,伸展,内旋方向への等尺性運動。4)小胸筋へのダイレクトストレッチを実施した。1ヶ月間の理学療法実施後,自動挙上150°,下垂位外旋40°,JOAスコア78/100,MMT僧帽筋下部4,中部4,上部4,前鋸筋4,棘下筋3であった。挙上が可能となった要因は1カ月間の入院における集中的理学療法によって,僧帽筋下部,前鋸筋の筋力が増し,上部線維と合わせ3つの筋がフォースカップルを形成し協調することで,肩甲骨の上方回旋が起こったこと,また残存している肩甲下筋,小円筋の機能が改善し,肩関節の前後方向の安定性が向上したことではないかと考えられる。