[P2-B-0446] 右腰殿部痛,右大腿前面部痛を主訴とし右股関節屈曲外転外旋検査時に足部の位置の違いによって有痛性制動に差を認めた一症例
Keywords:股関節屈曲外転外旋検査, 運動器超音波検査, 腰殿部痛
【目的】股関節屈曲外転外旋検査(以下FABERテスト)とは股関節の変性や炎症,周辺軟部組織の障害を示すと言われている。方法は被検者に背臥位をとらせ,検査側の股関節を屈曲外転外旋させ,その外果を反対側の下肢の膝の上に乗せ,検査側膝の内側部を外側に圧迫する。日常診療場面では外果を乗せる位置が膝以外でも有痛性制動を認める事がある。本現象を記載した成書,文献を見つける事は出来なかった。我々は外果を置く位置を下腿と大腿を其々二分し遠位からFABER1,2,3,4とした。制動は検査側の脛骨粗面とベッド間距離(cm)を計測した。今回,FABER2,3,4で有痛性制動を認めた一症例の本テスト中の股関節を運動器超音波検査(エコー検査)で観察した。FABERテストとエコー検査の結果から病態生理を考察し報告する。【症例提示】60歳代女性。変形性腰椎症,両股関節拘縮。単純X線検査で腰椎右凸右回旋の変形を認めた。股関節は異常なかった。【経過と考察】初診日より17日目の立位所見は体幹後屈20°,左回旋40°で有痛性制動を認めた。右FABER1,2,3の内,FABER2で最も制動を認め,制動は右19cm,左14cmであった。FABER2は右腸腰筋と右中殿筋(伸縮性テープを筋の最大伸張位で起始から停止に貼付)で疼痛は消失したが制動は残存した。制動は腸骨右前傾,左後傾ストレッチ,腰椎前弯操作後右14cmとなった。FABERテスト消失後,立位所見も消失した。エコー検査は静的観察では異常所見なし。動的観察ではFABER2の時に右臼蓋と骨頭間の低エコーが膨らみ,関節包が撓む様子が観察され,FABER改善後に消失した。本症例は股関節の器質的な問題ではなく,腰椎前弯障害により大腰筋が機能不全となり大腿骨頭の背側への滑り運動が障害されたことで股関節の可動域制限を呈し,仙腸関節や周囲筋が代償する事によって腰殿部,大腿前面痛を引き起こしたと捉えた。一つの検査を精査する事により病態生理を明確にする事ができ,適切な治療プログラムを選択できる事を学んだ症例であった。