[P2-B-0530] 急性期病院入院患者の栄養状態と筋量について
簡易栄養状態評価表と生体電気インピーダンス法による筋量の比較
Keywords:栄養状態, 筋量, 生体電気インピーダンス法(BIA法)
【目的】
近年,高齢化社会の拡がりとともに加齢に伴う筋力の低下および筋肉量の減少によるサルコペニアが注目されている。その原因は加齢によるものだけではなく,原疾患や活動性の低下による影響,不適切な栄養管理など様々であり,広義のサルコペニアはすべての原因による骨格筋量(以下,筋量)の減少と筋力低下も含まれている。急性期病院では入院患者の多くが栄養障害を認めることが報告されており,これらの状態でリハビリテーションを行うとかえって筋力低下などの悪影響が予想される。
身体組成の測定法は,超音波測定法やコンピュータ断層撮影法,二重エネルギーX線吸収法など種々の方法があるが,急性期入院患者の生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analisis:以下,BIA法)による筋量の報告は少ない。
そこで今回,リハビリテーションを実施している急性期病院入院中の患者の栄養状態,筋量,骨格筋量指標(skeletal muscle index:以下,SMI),筋力を評価し,その患者の特徴を明らかにするとともに簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment®-Short Form:以下,MNA-SF)との比較を行うことで,栄養摂取の必要性やリハビリテーションを行う上での指標について検討することを目的とする。
【方法】
対象者は2013年12月~2014年10月までに当院でリハビリテーションを実施している41歳以上の患者104名のうち血液疾患,呼吸器疾患,消化器疾患,脳脊髄疾患に診断分類できた88名(男性53名,女性23名)とした。対象者の平均年齢は71.3±10.4歳,入院~評価までの平均日数は37.9±28.0日であった。除外基準は,意識障害や高次脳機能障害および高度な認知症を有し,コミュニケーションが不可能な者,人工関節などの金属が挿入されている者,著明な浮腫を有する者とした。
方法は,入院日や診断名,年齢などを診療録より収集し,身長や体重は事前に測定を行った。栄養状態の評価はMNA-SFを用い,栄養状態が良好な者(以下,良好群),低栄養の恐れがある者(以下,At risk群),低栄養である者(以下,低栄養群)に分類した。なおMNA-SFの歩行項目は入院生活に置き換えて一部改訂したのもを使用した。筋量の測定の際,測定前は5分以上のベッド上安静を徹底した。筋量はInBody S20(バイオスペース株式会社)にて測定し,SMI=(筋量/身長2)*100を算出した。筋力の指標は,デジタル握力計にて握力を左右各3回測定し最大値を用いた。
統計処理は,MNA-SFおよび年齢と筋量,SMI,筋力の比較は相関係数を用い,年齢別および診断分類別と筋量,SMI,筋力の比較は多重比較検定を用いた。またMNA-SFでの栄養状態の判定におけるAt risk群と低栄養群の比較は,ステューデントのt検定を行った。いずれも有意水準を5%とした。
【結果】
対象者の各評価項目の平均値は,MNA-SFは7.5±2.7(男性7.5±2.9・女性7.5±2.4)点,筋量は19.6±4.7(男性19.5±4.7・女性19.9±4.8)Kg,SMIは7.8±1.3(男性7.9±1.3・女性7.8±1.4)Kg/m2,筋力は24.0±8.5Kgであった。
MNA-SFと筋量,SMI,筋力は正の相関を認めた。年齢と筋量,SMI,筋力においては相関関係を認めなかった。また年齢別による比較や診断分類別を比較しても筋量,SMI,筋力の間に有意な差を認めなかった。
MNA-SFによる栄養状態の判定では,良好群は2名,At risk群は43名,低栄養群は37名であった。At risk群と比較し低栄養群では,SMI,筋力で有意な低下を認め,筋量は低下傾向を示した。
【考察】
急性期病院入院中のリハビリテーション対象患者のうち,栄養状態が良好と判断されたものは非常に少なく,多くは筋量やSMI,筋力の低下を認めた。その理由として原疾患や手術・治療に伴う食事制限や食欲不振などに関連する栄養摂取量の減少と入院生活による活動性の低下から廃用性筋萎縮などの進行が考えられる。
MNA-SFはSMIと相関があることから,低栄養群ではサルコペニアまたはサルコペニア予備群の可能性が予想される。よって急性期疾患患者による早期離床やリハビリテーションの際の抵抗運動,活動性などが過負荷にならないように注意しなければならないと考えられる。
本研究の限界は,①評価期間が一定でないこと,②個人の経時的な変化が評価できていないこと,③エネルギー摂取量が把握できていないため,入院時からの患者状態の変化が把握できていないことである。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において簡易的に正確な筋量の把握は困難であるが,MNA-SFを用いて栄養状態を判断することでサルコペニアまたはサルコペニア予備群の予測が可能となり,運動療法を行う際の運動負荷や運動量の1つの参考基準になると考えられる。
近年,高齢化社会の拡がりとともに加齢に伴う筋力の低下および筋肉量の減少によるサルコペニアが注目されている。その原因は加齢によるものだけではなく,原疾患や活動性の低下による影響,不適切な栄養管理など様々であり,広義のサルコペニアはすべての原因による骨格筋量(以下,筋量)の減少と筋力低下も含まれている。急性期病院では入院患者の多くが栄養障害を認めることが報告されており,これらの状態でリハビリテーションを行うとかえって筋力低下などの悪影響が予想される。
身体組成の測定法は,超音波測定法やコンピュータ断層撮影法,二重エネルギーX線吸収法など種々の方法があるが,急性期入院患者の生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analisis:以下,BIA法)による筋量の報告は少ない。
そこで今回,リハビリテーションを実施している急性期病院入院中の患者の栄養状態,筋量,骨格筋量指標(skeletal muscle index:以下,SMI),筋力を評価し,その患者の特徴を明らかにするとともに簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment®-Short Form:以下,MNA-SF)との比較を行うことで,栄養摂取の必要性やリハビリテーションを行う上での指標について検討することを目的とする。
【方法】
対象者は2013年12月~2014年10月までに当院でリハビリテーションを実施している41歳以上の患者104名のうち血液疾患,呼吸器疾患,消化器疾患,脳脊髄疾患に診断分類できた88名(男性53名,女性23名)とした。対象者の平均年齢は71.3±10.4歳,入院~評価までの平均日数は37.9±28.0日であった。除外基準は,意識障害や高次脳機能障害および高度な認知症を有し,コミュニケーションが不可能な者,人工関節などの金属が挿入されている者,著明な浮腫を有する者とした。
方法は,入院日や診断名,年齢などを診療録より収集し,身長や体重は事前に測定を行った。栄養状態の評価はMNA-SFを用い,栄養状態が良好な者(以下,良好群),低栄養の恐れがある者(以下,At risk群),低栄養である者(以下,低栄養群)に分類した。なおMNA-SFの歩行項目は入院生活に置き換えて一部改訂したのもを使用した。筋量の測定の際,測定前は5分以上のベッド上安静を徹底した。筋量はInBody S20(バイオスペース株式会社)にて測定し,SMI=(筋量/身長2)*100を算出した。筋力の指標は,デジタル握力計にて握力を左右各3回測定し最大値を用いた。
統計処理は,MNA-SFおよび年齢と筋量,SMI,筋力の比較は相関係数を用い,年齢別および診断分類別と筋量,SMI,筋力の比較は多重比較検定を用いた。またMNA-SFでの栄養状態の判定におけるAt risk群と低栄養群の比較は,ステューデントのt検定を行った。いずれも有意水準を5%とした。
【結果】
対象者の各評価項目の平均値は,MNA-SFは7.5±2.7(男性7.5±2.9・女性7.5±2.4)点,筋量は19.6±4.7(男性19.5±4.7・女性19.9±4.8)Kg,SMIは7.8±1.3(男性7.9±1.3・女性7.8±1.4)Kg/m2,筋力は24.0±8.5Kgであった。
MNA-SFと筋量,SMI,筋力は正の相関を認めた。年齢と筋量,SMI,筋力においては相関関係を認めなかった。また年齢別による比較や診断分類別を比較しても筋量,SMI,筋力の間に有意な差を認めなかった。
MNA-SFによる栄養状態の判定では,良好群は2名,At risk群は43名,低栄養群は37名であった。At risk群と比較し低栄養群では,SMI,筋力で有意な低下を認め,筋量は低下傾向を示した。
【考察】
急性期病院入院中のリハビリテーション対象患者のうち,栄養状態が良好と判断されたものは非常に少なく,多くは筋量やSMI,筋力の低下を認めた。その理由として原疾患や手術・治療に伴う食事制限や食欲不振などに関連する栄養摂取量の減少と入院生活による活動性の低下から廃用性筋萎縮などの進行が考えられる。
MNA-SFはSMIと相関があることから,低栄養群ではサルコペニアまたはサルコペニア予備群の可能性が予想される。よって急性期疾患患者による早期離床やリハビリテーションの際の抵抗運動,活動性などが過負荷にならないように注意しなければならないと考えられる。
本研究の限界は,①評価期間が一定でないこと,②個人の経時的な変化が評価できていないこと,③エネルギー摂取量が把握できていないため,入院時からの患者状態の変化が把握できていないことである。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において簡易的に正確な筋量の把握は困難であるが,MNA-SFを用いて栄養状態を判断することでサルコペニアまたはサルコペニア予備群の予測が可能となり,運動療法を行う際の運動負荷や運動量の1つの参考基準になると考えられる。