[P2-B-0543] ウェアラブルモーションセンサを用いたFour Square Step Testにおける脳卒中片麻痺者の評価
Keywords:加速度, 角速度, 脳卒中片麻痺
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺や整形疾患のバランス評価の一つにFour Square Step Test(以下,FSST)がある。FSSTは4本の杖を十字にならべて4面に区分し,対象者は4面の左手前で安静立位を取り開始位置→前→右→後ろ→左→右→前→左→後ろの順番で移動を行いその到達時間を計測する。しかしながら評価の指標は到達時間のみであり,身体機能を評価するには不十分である。療法士の動作観察で前後左右移動の評価を補完するが療法士の経験や測定技量に依存する部分が大きく,定量的な各移動方向の位相わけからの動作毎の細かな評価には限界がある。本研究はウェアラブルモーションセンサを用いFSSTの定量的な位相分けを行った後に,前後左右移動時の詳細な評価を行うことである。
【方法】
加速度センサ,角速度センサを装備したウェアラブルモーションセンサ(以下センサ)を腰部と大腿部に装着しFSSTの達成時間,加速度,角速度を測定した。対象は脳卒中片麻痺者12名(左片麻痺6例・右片麻痺6例)と健常高齢者6例とした。本研究は(社)藤元総合病院倫理委員会の承認を得たのち,被験者に実験の内容および主旨に関する十分な説明を行った。その後,書面による承諾を得た。はじめに,FSSTの移動方向を分けるために,左片麻痺者6例を対象にウェアラブルモーションセンサを装着後,FSSTを計測し同時に動画を撮影した。次に,大腿部の角速度信号から4面の移動の相分けを行い,全対象者のFSST達成時の到達時間,加速度実効値(以下,RMS),角速度RMS,最大振幅角度(以下,振幅角度),最大振幅角度/FSST達成時間(以下,振幅/s)を指標とし,Kruskal-Wallis検定にて3群間の比較を行った。
【結果】
ウェアラブルモーションセンサで判別したFSSTの到達時間と動画から得たFSSTの到達時間において正の相関を認めた。片麻痺者と健常高齢者のFSST到達時間に有意差は認められなかったが,腰部加速度実効値と角速度実効値に有意な差があった(p<0.05)。前後左右の各方向において,片麻痺者と健常高齢者に有意差が認められる項目が多数あった。片麻痺者の左右移動では,股関節外転の振幅角度・振幅/sは健常高齢者と差はないが,股関節屈曲の振幅角度・振幅/sが大きく,股関節外旋の振幅角度・振幅/sは有意に小さくなった。
【考察】
左右移動時には杖を横にまたぐ必要があり,股関節屈曲・外転・外旋の運動要素を用いる。片麻痺の運動機能として,内外転・内外旋のコントロールは難易度が高く,特に抗重力位の下肢外旋は行いにくい。片麻痺者では外旋の運動要素を代償するために,股関節の屈曲を大きく行い,杖をまたぐ傾向にあった。
従来のストップウォッチによる計測は簡便で一般的な手法であるが,FSSTに含まれる全動作のパフォーマンスの評価であり,身体機能を捉えるには情報が足りない。したがって,詳細な評価は療法士の観察に委ねられることになるが。観察では限界がある。片麻痺者の身体状態は様々な要因が複雑に絡んでおり,全ての要因を療法士の観察で洗い出すことは困難であり不確実性を含んでいる。本研究ではワイヤレスモーションセンサを使用することで角速度の変化からFSSTの一連の動作を移動方向毎に分けることができ,その有用性が示唆された。
FSSTは前後左右への素早いまたぎ動作,ステップ動作,方向転換が必要であり,前後左右への重心移動から,いずれの方向に障害があるのかのスクリーニングにもなりうる。ウェアラブルモーションセンサを用いて移動方向による細部にわたる分類を行うことによって,動作時の情報が詳細に得られることができる。ウェアラブルモーションセンサを用いたFSSTの評価は脳卒中片麻痺者有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では健常高齢者と片麻痺者を対象として検討・評価したが,個々の高齢者の結果を解釈する評価方法が臨床現場スタッフから求められている。今後はこのような課題についても取り組むため,臨床と研究を進めることが必要である。
脳卒中片麻痺や整形疾患のバランス評価の一つにFour Square Step Test(以下,FSST)がある。FSSTは4本の杖を十字にならべて4面に区分し,対象者は4面の左手前で安静立位を取り開始位置→前→右→後ろ→左→右→前→左→後ろの順番で移動を行いその到達時間を計測する。しかしながら評価の指標は到達時間のみであり,身体機能を評価するには不十分である。療法士の動作観察で前後左右移動の評価を補完するが療法士の経験や測定技量に依存する部分が大きく,定量的な各移動方向の位相わけからの動作毎の細かな評価には限界がある。本研究はウェアラブルモーションセンサを用いFSSTの定量的な位相分けを行った後に,前後左右移動時の詳細な評価を行うことである。
【方法】
加速度センサ,角速度センサを装備したウェアラブルモーションセンサ(以下センサ)を腰部と大腿部に装着しFSSTの達成時間,加速度,角速度を測定した。対象は脳卒中片麻痺者12名(左片麻痺6例・右片麻痺6例)と健常高齢者6例とした。本研究は(社)藤元総合病院倫理委員会の承認を得たのち,被験者に実験の内容および主旨に関する十分な説明を行った。その後,書面による承諾を得た。はじめに,FSSTの移動方向を分けるために,左片麻痺者6例を対象にウェアラブルモーションセンサを装着後,FSSTを計測し同時に動画を撮影した。次に,大腿部の角速度信号から4面の移動の相分けを行い,全対象者のFSST達成時の到達時間,加速度実効値(以下,RMS),角速度RMS,最大振幅角度(以下,振幅角度),最大振幅角度/FSST達成時間(以下,振幅/s)を指標とし,Kruskal-Wallis検定にて3群間の比較を行った。
【結果】
ウェアラブルモーションセンサで判別したFSSTの到達時間と動画から得たFSSTの到達時間において正の相関を認めた。片麻痺者と健常高齢者のFSST到達時間に有意差は認められなかったが,腰部加速度実効値と角速度実効値に有意な差があった(p<0.05)。前後左右の各方向において,片麻痺者と健常高齢者に有意差が認められる項目が多数あった。片麻痺者の左右移動では,股関節外転の振幅角度・振幅/sは健常高齢者と差はないが,股関節屈曲の振幅角度・振幅/sが大きく,股関節外旋の振幅角度・振幅/sは有意に小さくなった。
【考察】
左右移動時には杖を横にまたぐ必要があり,股関節屈曲・外転・外旋の運動要素を用いる。片麻痺の運動機能として,内外転・内外旋のコントロールは難易度が高く,特に抗重力位の下肢外旋は行いにくい。片麻痺者では外旋の運動要素を代償するために,股関節の屈曲を大きく行い,杖をまたぐ傾向にあった。
従来のストップウォッチによる計測は簡便で一般的な手法であるが,FSSTに含まれる全動作のパフォーマンスの評価であり,身体機能を捉えるには情報が足りない。したがって,詳細な評価は療法士の観察に委ねられることになるが。観察では限界がある。片麻痺者の身体状態は様々な要因が複雑に絡んでおり,全ての要因を療法士の観察で洗い出すことは困難であり不確実性を含んでいる。本研究ではワイヤレスモーションセンサを使用することで角速度の変化からFSSTの一連の動作を移動方向毎に分けることができ,その有用性が示唆された。
FSSTは前後左右への素早いまたぎ動作,ステップ動作,方向転換が必要であり,前後左右への重心移動から,いずれの方向に障害があるのかのスクリーニングにもなりうる。ウェアラブルモーションセンサを用いて移動方向による細部にわたる分類を行うことによって,動作時の情報が詳細に得られることができる。ウェアラブルモーションセンサを用いたFSSTの評価は脳卒中片麻痺者有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では健常高齢者と片麻痺者を対象として検討・評価したが,個々の高齢者の結果を解釈する評価方法が臨床現場スタッフから求められている。今後はこのような課題についても取り組むため,臨床と研究を進めることが必要である。