[P2-B-0610] 肩関節運動時痛に対するマイオ・チューニング・アプローチの効果検証~超音波血流速度を用いて~
Keywords:マイオ・チューニング・アプローチ, クロス・オーバーデザイン, 超音波血流速度
【はじめに】
マイオ・チューニング・アプローチは,神経生理学的現象を利用して主に筋が原因で生じる症状を改善すると共に,筋を活性化させる治療的アプローチと定義されている。
【目的】
マイオ・チューニング・アプローチの目的は,痛みや痺れ,筋緊張の異常および筋の活動効率を改善することにより,関節可動域や運動能力を向上させ,ADLやQOLを高め,精神的苦痛を和らげることである。現在,マイオ・チューニング・アプローチの治療効果における先行研究は,主に疼痛や関節可動域を検討項目としており,血流の変化を検討したものは少ない。そこで,今回我々は,肩関節に何らかの運動時痛を訴える患者に対して,動作に対する比較として,マイオ・チューニング・アプローチの動的施行法(以下MTA)と自動運動(以下自動運動群)を施行し,その施行前後における最大血流速度の変化について,超音波画像診断装置を用いて検討した。
【対象】
血管狭窄症等のない肩関節に何らかの運動時痛の訴えがある症例10例(25~60歳)とした。
【方法】
研究デザインは,ランダム化クロスオーバーデザインとした。まず,全対象者をA・Bの2グループに分け,Aグループは自動運動を行った後,7日間空けた上でMTAを施行し,Bグループにはその逆の順序で施行した。自動運動では痛みが生じる動作を30回反復させ,MTAでは動的施行法下にて同動作を30回反復させた。尚,研究期間中はいずれの対象者も自主訓練を含む,各種治療は受けないようにした。また,MTAでは,初回に痛みを訴えた原因筋1つのみを治療対象とした。
自動運動ならびにMTA施行前後には,超音波画像診断装置(aplio300,東芝メディカル)
を用いて最大血流速度を測定した。測定部位は,上腕中央付近(上肢長の中間点)の上腕動脈とした。また,肩関節周囲の運動時痛(NRS)についても計測した。なお,NRSは治療開始時の痛みを10として計測した。
分析は,最大血流速度に関しては,まずA/Bグループ共に自動運動前とMTA施行前の差を対応のあるT検定を用いて検討した。その上で,施行前と自動運動後ならびにMTA後の差について,一元配置分散分析ならびに多重比較を用いて検討した。NRSに関しては,自動運動後とMTA後の差について対応のあるT検定を用いて検討した。
【結果】
A/Bグループ共に,自動運動前とMTA実施前の最大血流速度の間に有意差は認められなかった。次に,施行前に比べ自動運動後やMTA後の,また自動運動後に比べMTA後の最大血流速度が有意に速くなった(p<0.01)。NRSは,自動運動後に比べ,MTA後の方が有意に低くなった(p<0.01)。
【考察】
クロスオーバーデザインは,持ち越し効果が問題になることがある。今回,自動運動前とMTA実施前の最大血流速度に有意差が認められなかったことから,持ち越し効果はなかったと言える。また,施行前より自動運動後の血流速度が速くなったのは反復運動による必然的な結果と考える。自動運動後よりMTA後の血流速度が速かったのは,NRSの結果から,MTAによる疼痛抑制効果が,筋緊張を改善し,筋内圧を減少した状態で反復動作を行った結果だと考える。今回の結果より,MTAによる血流促進効果が確認できたと考える。
マイオ・チューニング・アプローチは,神経生理学的現象を利用して主に筋が原因で生じる症状を改善すると共に,筋を活性化させる治療的アプローチと定義されている。
【目的】
マイオ・チューニング・アプローチの目的は,痛みや痺れ,筋緊張の異常および筋の活動効率を改善することにより,関節可動域や運動能力を向上させ,ADLやQOLを高め,精神的苦痛を和らげることである。現在,マイオ・チューニング・アプローチの治療効果における先行研究は,主に疼痛や関節可動域を検討項目としており,血流の変化を検討したものは少ない。そこで,今回我々は,肩関節に何らかの運動時痛を訴える患者に対して,動作に対する比較として,マイオ・チューニング・アプローチの動的施行法(以下MTA)と自動運動(以下自動運動群)を施行し,その施行前後における最大血流速度の変化について,超音波画像診断装置を用いて検討した。
【対象】
血管狭窄症等のない肩関節に何らかの運動時痛の訴えがある症例10例(25~60歳)とした。
【方法】
研究デザインは,ランダム化クロスオーバーデザインとした。まず,全対象者をA・Bの2グループに分け,Aグループは自動運動を行った後,7日間空けた上でMTAを施行し,Bグループにはその逆の順序で施行した。自動運動では痛みが生じる動作を30回反復させ,MTAでは動的施行法下にて同動作を30回反復させた。尚,研究期間中はいずれの対象者も自主訓練を含む,各種治療は受けないようにした。また,MTAでは,初回に痛みを訴えた原因筋1つのみを治療対象とした。
自動運動ならびにMTA施行前後には,超音波画像診断装置(aplio300,東芝メディカル)
を用いて最大血流速度を測定した。測定部位は,上腕中央付近(上肢長の中間点)の上腕動脈とした。また,肩関節周囲の運動時痛(NRS)についても計測した。なお,NRSは治療開始時の痛みを10として計測した。
分析は,最大血流速度に関しては,まずA/Bグループ共に自動運動前とMTA施行前の差を対応のあるT検定を用いて検討した。その上で,施行前と自動運動後ならびにMTA後の差について,一元配置分散分析ならびに多重比較を用いて検討した。NRSに関しては,自動運動後とMTA後の差について対応のあるT検定を用いて検討した。
【結果】
A/Bグループ共に,自動運動前とMTA実施前の最大血流速度の間に有意差は認められなかった。次に,施行前に比べ自動運動後やMTA後の,また自動運動後に比べMTA後の最大血流速度が有意に速くなった(p<0.01)。NRSは,自動運動後に比べ,MTA後の方が有意に低くなった(p<0.01)。
【考察】
クロスオーバーデザインは,持ち越し効果が問題になることがある。今回,自動運動前とMTA実施前の最大血流速度に有意差が認められなかったことから,持ち越し効果はなかったと言える。また,施行前より自動運動後の血流速度が速くなったのは反復運動による必然的な結果と考える。自動運動後よりMTA後の血流速度が速かったのは,NRSの結果から,MTAによる疼痛抑制効果が,筋緊張を改善し,筋内圧を減少した状態で反復動作を行った結果だと考える。今回の結果より,MTAによる血流促進効果が確認できたと考える。