[P2-B-0628] 極低出生体重児における新生児期の筋緊張および行動の関係
キーワード:極低出生体重児, 筋緊張, 行動
【目的】
第49回日本理学療法学術大会で,極低出生体重児における修正33週前後では,在胎週数と出生体重に応じた筋緊張および安定化行動の多様性がみられたことを報告した。しかし,ポジショニングによる筋緊張向上と安定化行動の多様性に関係性は認められなかった。今回,極低出生体重児での新生児期の筋緊張・安定化行動・ポジショニングとの関係を検討した。
【方法】
対象は当院に入院した極低出生体重児で,修正36週0日から修正42週0日までに新生児神経評価(Dubowitz評価)と自発運動のビデオ録画を行い,5歳6ヵ月検診を受診し,発達が明らかになった115名とした。対象児の性別は男児48名・女児67名,平均在胎週数は28週3±19日,平均出生体重は1021±268gであった。対象児に対し,入院直後から転院・退院時までポジショニング(Swaddling・Nesting)を実施した。5歳6ヵ月検診の結果から,対象児を正常発達と発達障害に分けた。Dubowitz評価では,筋緊張評価として姿勢,上肢リコイル,上肢牽引,下肢リコイル,下肢牽引の5項目を評価した。自発運動のビデオ録画から,安定化行動であるスムースな動き,四肢の屈曲内転位,自己鎮静可能,手を頭へ,手を顔へ,手を口へ,手と手を合わせる,足を組むについて観察した。1-2分間の観察中に各行動が2回以上見られた場合を行動有とした。本研究では,在胎週数・出生体重と筋緊張・安定化行動の種類の関係,筋緊張と安定化行動の種類の関係をスピアマンの順位相関係数を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし検定した。
【結果】
対象児の発達は,正常発達70例,知的障害20例,自閉症スペクトラム障害16例,脳性麻痺9例であった。正常発達群の平均在胎週数は28.8±2.7週,出生体重は1043±274g,知的障害群の平均在胎週数は28.1±2.8週,出生体重は1007±274g,自閉症スペクトラム障害群の平均在胎週数は27.6±3.1週,出生体重は905±244g,脳性麻痺群の平均在胎週数は28.2±1.5週,出生体重は1091±168gであった。正常発達群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は4.2種であった。知的障害群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は2.8種であった。自閉症スペクトラム障害群では,筋緊張のcolumnの中央値は全項目4であった。安定化行動の種類の平均値は2.3種であった。脳性麻痺群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は2.6種であった。正常発達群は,在胎週数と安定化行動の種類(r=0.50,P<0.001),出生体重と安定化行動の種類(r=0.42,P<0.001)に有意な関係があった。在胎週数・出生体重と筋緊張,筋緊張と安定化行動の種類に有意な関係はなかった。知的障害群,自閉症スペクトラム障害群,脳性麻痺群は,在胎週数・出生体重と筋緊張・安定化行動の種類,筋緊張と安定化行動の種類に有意な関係はなかった。
【考察】
極低出生体重児における新生児期の筋緊張・安定化行動・ポジショニングの関係は,正常発達群では,在胎週数および出生体重に応じた安定化行動の多様性の関係性を認めた。在胎週数および出生体重と筋緊張に関係性は認められず,ポジショニングにより筋緊張向上が促進されている可能性が示唆された。しかし,筋緊張向上と安定化行動の多様性に関係性は認められず,筋緊張向上と安定化行動の多様性を促すことを両立したポジショニングが必要と考えられた。知的障害群,自閉症スペクトラム障害群,脳性麻痺群では,在胎週数および出生体重に応じた筋緊張向上や安定化行動の多様性に関係性は認められず,児の筋緊張や安定化行動に対応した個別のポジショニングが必要と考えられた。また,ポジショニングを実施しても,在胎週数および出生体重に応じた筋緊張向上や安定化行動の多様性を認めない児は,将来発達障害リスクを有する可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
極低出生体重児における新生児期の筋緊張および行動の関係が明らかになることで,ポジショニングの実施基準を定める一助となる。
第49回日本理学療法学術大会で,極低出生体重児における修正33週前後では,在胎週数と出生体重に応じた筋緊張および安定化行動の多様性がみられたことを報告した。しかし,ポジショニングによる筋緊張向上と安定化行動の多様性に関係性は認められなかった。今回,極低出生体重児での新生児期の筋緊張・安定化行動・ポジショニングとの関係を検討した。
【方法】
対象は当院に入院した極低出生体重児で,修正36週0日から修正42週0日までに新生児神経評価(Dubowitz評価)と自発運動のビデオ録画を行い,5歳6ヵ月検診を受診し,発達が明らかになった115名とした。対象児の性別は男児48名・女児67名,平均在胎週数は28週3±19日,平均出生体重は1021±268gであった。対象児に対し,入院直後から転院・退院時までポジショニング(Swaddling・Nesting)を実施した。5歳6ヵ月検診の結果から,対象児を正常発達と発達障害に分けた。Dubowitz評価では,筋緊張評価として姿勢,上肢リコイル,上肢牽引,下肢リコイル,下肢牽引の5項目を評価した。自発運動のビデオ録画から,安定化行動であるスムースな動き,四肢の屈曲内転位,自己鎮静可能,手を頭へ,手を顔へ,手を口へ,手と手を合わせる,足を組むについて観察した。1-2分間の観察中に各行動が2回以上見られた場合を行動有とした。本研究では,在胎週数・出生体重と筋緊張・安定化行動の種類の関係,筋緊張と安定化行動の種類の関係をスピアマンの順位相関係数を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし検定した。
【結果】
対象児の発達は,正常発達70例,知的障害20例,自閉症スペクトラム障害16例,脳性麻痺9例であった。正常発達群の平均在胎週数は28.8±2.7週,出生体重は1043±274g,知的障害群の平均在胎週数は28.1±2.8週,出生体重は1007±274g,自閉症スペクトラム障害群の平均在胎週数は27.6±3.1週,出生体重は905±244g,脳性麻痺群の平均在胎週数は28.2±1.5週,出生体重は1091±168gであった。正常発達群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は4.2種であった。知的障害群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は2.8種であった。自閉症スペクトラム障害群では,筋緊張のcolumnの中央値は全項目4であった。安定化行動の種類の平均値は2.3種であった。脳性麻痺群では,筋緊張のcolumnの中央値は姿勢・上肢リコイル・下肢リコイル・下肢牽引4,上肢牽引3であった。安定化行動の種類の平均値は2.6種であった。正常発達群は,在胎週数と安定化行動の種類(r=0.50,P<0.001),出生体重と安定化行動の種類(r=0.42,P<0.001)に有意な関係があった。在胎週数・出生体重と筋緊張,筋緊張と安定化行動の種類に有意な関係はなかった。知的障害群,自閉症スペクトラム障害群,脳性麻痺群は,在胎週数・出生体重と筋緊張・安定化行動の種類,筋緊張と安定化行動の種類に有意な関係はなかった。
【考察】
極低出生体重児における新生児期の筋緊張・安定化行動・ポジショニングの関係は,正常発達群では,在胎週数および出生体重に応じた安定化行動の多様性の関係性を認めた。在胎週数および出生体重と筋緊張に関係性は認められず,ポジショニングにより筋緊張向上が促進されている可能性が示唆された。しかし,筋緊張向上と安定化行動の多様性に関係性は認められず,筋緊張向上と安定化行動の多様性を促すことを両立したポジショニングが必要と考えられた。知的障害群,自閉症スペクトラム障害群,脳性麻痺群では,在胎週数および出生体重に応じた筋緊張向上や安定化行動の多様性に関係性は認められず,児の筋緊張や安定化行動に対応した個別のポジショニングが必要と考えられた。また,ポジショニングを実施しても,在胎週数および出生体重に応じた筋緊張向上や安定化行動の多様性を認めない児は,将来発達障害リスクを有する可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
極低出生体重児における新生児期の筋緊張および行動の関係が明らかになることで,ポジショニングの実施基準を定める一助となる。