[P2-B-0634] 当センター小児緩和ケアにおける理学療法の現状と果たす役割
Keywords:緩和ケア, 小児, 終末期
【はじめに,目的】
成人の緩和ケアはがん疾患を中心に捉えられていることが多いが,小児緩和ケアは小児がんの子どもに限らず,先天性心疾患や染色体異常,神経筋疾患など「生命を脅かされる状況(life-threatening-conditions)」の子どもが対象である。当センターには第三次救急病院としての救急医療,小児がん拠点病院としての小児がんの治療,胎児診断を含め出生後に手術が必要な疾患や低出生体重児の周産期医療など,多くの役割がある。その中で緩和ケア普及室を中心に緩和ケアサポートチームの活動があり,ファシリティドッグが重要な役割を占めている。この状況の中,治療の甲斐なく亡くなる子どもに理学療法士が関わることも少なくない。小児緩和ケアにおける理学療法についての報告は少なく,当センターでも小児緩和ケアの理念の元,「生命を脅かされる状況の子ども」の理学療法は個々に任せられ対応してきた。本研究では,当センター小児緩和ケアにおける理学療法の現状をまとめ,今後の理学療法の在り方を検討することを目的とした。
【方法】
2010年4月から2014年9月の間,当センターを死亡退院した患児で入院中に理学療法を実施した患児を対象とし,診療録より後方視的に調査した。調査項目は,基礎情報として年齢(死亡時)・性別・診断名・診療科,経過として入院期間・入院病棟・理学療法実施期間および日数・最終理学療法実施日から死亡までの日数・提供した理学療法内容とした。
対応した病棟がICU・HCU・クリーン病棟などの救急病棟群(以下救急群)とその他の一般病棟群(以下一般群)の2群に分け,診断名・診療科・提供した理学療法内容を比較し,年齢・入院期間・理学療法実施期間・実施日数・最終理学療法実施日から死亡までの日数をMann-WhitneyのU検定を用い,統計学上の有意水準を5%として比較検討した。
【結果】
調査期間内に死亡退院した児は273名,その約半数が新生児科であり,入院期間が7日以内であった。理学療法の対応があった67名のうち医療型障害児施設入所児・NICU入院児を除いた42名を対象とした。年齢は中央値6歳(0~29歳),男児25名・女児17名。診断名は血液疾患12名・腫瘍9名・先天性心疾患6名・脳原性疾患5名・その他(疾患合併を含)10名であり,対応病棟はICU・HCU病棟18名・クリーン病棟7名・一般病棟17名であった。入院期間は中央値151日(6~981日),理学療法実施期間は中央値42日(1~559日),理学療法実施日数は中央値10日(1~149日),最終理学療法実施日から死亡までの日数は中央値10日(0~396日)であった。提供した理学療法内容(重複あり)は,関節可動域練習24,呼吸理学療法23,リラクゼーションを促すためのマッサージ・ポジショニング19,基本動作・歩行練習8,車椅子・バギーの調整7,発達援助6,哺乳援助・摂食指導3であった。
病棟比較では,年齢のみ救急群が有意に低かった(p<0.05)が,入院期間・理学療法実施期間・実施日数は病棟群で長い傾向にあったが有意差はみられなかった。救急群は先天性心疾患や綿密な呼吸管理を必要とする疾患で占め,呼吸理学療法を提供する割合が高く,一般群は血液疾患や腫瘍などが占め,提供する理学療法も多岐に亘っていた。
【考察】
小児緩和ケアの対象となる疾患は,治癒不能となった白血病や脳腫瘍などの悪性疾患,脳性麻痺,難治性の心血管系の疾患,神経筋変性疾患,染色体異常症など多岐に亘り,年齢も乳児から成人まで幅広い。また,その理念では死に間近に迫った子どもだけが対象でなく,生命を脅かす病気とともに生きる子どもとその家族が対象であり,多職種的なアプローチを基本としている。当センターには多くの「生命を脅かされる状況の子ども」が入院しており,主治医の依頼の元,子どもや家族の意向を汲み,年齢や状況に合わせて,その都度提供する理学療法内容を変えて対応していたことが明らかとなった。治療の甲斐なく急性期で亡くなる子ども,複数回入院の理学療法対応の中で終末期を迎える子ども,一旦歩行獲得した後,再度終末期に依頼がくる場合もあった。理学療法は一定時間子どもや家族と関わるために,病態の変化や精神面の関わりなどに慎重な対応が要求されるが,共感できる出来事も多くあり,それが結果的には終末期まで理学療法を継続することに繋がってきたと考えられた。しかし,長期間に亘る場合,いつどのような理学療法をどのように提供するかはまだ個人差がみられ,今後検討を要している。
【理学療法学研究としての意義】
小児緩和ケアにおける理学療法の取り組みの一端を明らかにする上では意義があると思われる。
成人の緩和ケアはがん疾患を中心に捉えられていることが多いが,小児緩和ケアは小児がんの子どもに限らず,先天性心疾患や染色体異常,神経筋疾患など「生命を脅かされる状況(life-threatening-conditions)」の子どもが対象である。当センターには第三次救急病院としての救急医療,小児がん拠点病院としての小児がんの治療,胎児診断を含め出生後に手術が必要な疾患や低出生体重児の周産期医療など,多くの役割がある。その中で緩和ケア普及室を中心に緩和ケアサポートチームの活動があり,ファシリティドッグが重要な役割を占めている。この状況の中,治療の甲斐なく亡くなる子どもに理学療法士が関わることも少なくない。小児緩和ケアにおける理学療法についての報告は少なく,当センターでも小児緩和ケアの理念の元,「生命を脅かされる状況の子ども」の理学療法は個々に任せられ対応してきた。本研究では,当センター小児緩和ケアにおける理学療法の現状をまとめ,今後の理学療法の在り方を検討することを目的とした。
【方法】
2010年4月から2014年9月の間,当センターを死亡退院した患児で入院中に理学療法を実施した患児を対象とし,診療録より後方視的に調査した。調査項目は,基礎情報として年齢(死亡時)・性別・診断名・診療科,経過として入院期間・入院病棟・理学療法実施期間および日数・最終理学療法実施日から死亡までの日数・提供した理学療法内容とした。
対応した病棟がICU・HCU・クリーン病棟などの救急病棟群(以下救急群)とその他の一般病棟群(以下一般群)の2群に分け,診断名・診療科・提供した理学療法内容を比較し,年齢・入院期間・理学療法実施期間・実施日数・最終理学療法実施日から死亡までの日数をMann-WhitneyのU検定を用い,統計学上の有意水準を5%として比較検討した。
【結果】
調査期間内に死亡退院した児は273名,その約半数が新生児科であり,入院期間が7日以内であった。理学療法の対応があった67名のうち医療型障害児施設入所児・NICU入院児を除いた42名を対象とした。年齢は中央値6歳(0~29歳),男児25名・女児17名。診断名は血液疾患12名・腫瘍9名・先天性心疾患6名・脳原性疾患5名・その他(疾患合併を含)10名であり,対応病棟はICU・HCU病棟18名・クリーン病棟7名・一般病棟17名であった。入院期間は中央値151日(6~981日),理学療法実施期間は中央値42日(1~559日),理学療法実施日数は中央値10日(1~149日),最終理学療法実施日から死亡までの日数は中央値10日(0~396日)であった。提供した理学療法内容(重複あり)は,関節可動域練習24,呼吸理学療法23,リラクゼーションを促すためのマッサージ・ポジショニング19,基本動作・歩行練習8,車椅子・バギーの調整7,発達援助6,哺乳援助・摂食指導3であった。
病棟比較では,年齢のみ救急群が有意に低かった(p<0.05)が,入院期間・理学療法実施期間・実施日数は病棟群で長い傾向にあったが有意差はみられなかった。救急群は先天性心疾患や綿密な呼吸管理を必要とする疾患で占め,呼吸理学療法を提供する割合が高く,一般群は血液疾患や腫瘍などが占め,提供する理学療法も多岐に亘っていた。
【考察】
小児緩和ケアの対象となる疾患は,治癒不能となった白血病や脳腫瘍などの悪性疾患,脳性麻痺,難治性の心血管系の疾患,神経筋変性疾患,染色体異常症など多岐に亘り,年齢も乳児から成人まで幅広い。また,その理念では死に間近に迫った子どもだけが対象でなく,生命を脅かす病気とともに生きる子どもとその家族が対象であり,多職種的なアプローチを基本としている。当センターには多くの「生命を脅かされる状況の子ども」が入院しており,主治医の依頼の元,子どもや家族の意向を汲み,年齢や状況に合わせて,その都度提供する理学療法内容を変えて対応していたことが明らかとなった。治療の甲斐なく急性期で亡くなる子ども,複数回入院の理学療法対応の中で終末期を迎える子ども,一旦歩行獲得した後,再度終末期に依頼がくる場合もあった。理学療法は一定時間子どもや家族と関わるために,病態の変化や精神面の関わりなどに慎重な対応が要求されるが,共感できる出来事も多くあり,それが結果的には終末期まで理学療法を継続することに繋がってきたと考えられた。しかし,長期間に亘る場合,いつどのような理学療法をどのように提供するかはまだ個人差がみられ,今後検討を要している。
【理学療法学研究としての意義】
小児緩和ケアにおける理学療法の取り組みの一端を明らかにする上では意義があると思われる。