第50回日本理学療法学術大会

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発達障害理学療法3

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0637] 小児分野における歩行器選定チャートの考案

岩瀬峰子, 近藤直樹, 中村詩子 (北九州市立総合療育センター)

キーワード:小児, 歩行器, 選定チャート

【はじめに】
福祉機器の発展と共に,歩行器の種類も豊富になったが,逆に選択肢が多すぎるため,何を基準に選んだらいいのかが曖昧になってきている現状がある。我々は平成22年に(株)有薗製作所と共同し,モジュール型歩行器を開発した。この歩行器は,サドル付き体幹支持型歩行器から前方支持型歩行器までを様々なオプションパーツを組み合わせて使用することができる。このモジュール型歩行器を開発する上で,パーツの選択に際し何を基準に選ぶべきかを示すために,対象児の運動機能面から,適合する歩行器のタイプとパーツを選択できるフローチャートを考案した。さらに,このモジュール型歩行器だけではなく,後方支持型歩行器を含めた,小児分野で一般的に使用される歩行器のタイプを選択するためのチャートへと改変し,その有効性を検証したのでここに報告する。
【方法】
1.歩行器選定チャート
対象者の運動機能と運動特性から,歩行器のベースフレームとオプションを選択していく,フローチャートを作成した。選定1「ベースフレームの選択」として,運動レベルにより,(1)座位不能,(2)座位可能,(3)立位可能の3つに分かれる。それぞれの下位項目として,(1)-1頚定有,(1)-2頚定無,(2)-1手つき座位(2)-2独座,(3)-1つかまり立ち(3)-2腋下介助歩行(3)-3手引き歩行へと枝分かれしていく。続いて,選定2「オプションの選択」として運動特性(屈曲,伸展,不随意)や下肢の支持性(十分/不十分)により,オプション(背面サポート,テーブル,臀部サポートサドル,内転防止プレート,足首ベルトなど)を選択する。例えば,頚定無しでそりが強い場合,ベースフレームはサドル付き体幹支持型歩行器で,オプションは背面サポートとなる。また,股関節内転筋群の緊張による下肢交差が強い場合は,内転防止板または足首ベルトのオプションとなる。選択肢が複数ある場合は,それぞれを試して適応を見る。
2)対象
対象は138名(男性83名,女性55名),平均11.84±8.49歳(年齢4~61歳)。疾患は限定しなかったため,脳性麻痺や脳炎後遺症などの中枢性の疾患から,染色体異常や運動発達遅滞児も含まれている。
3)チャートの妥当性の検証
当センターの入院・通園・外来を利用し,本人用の歩行器を所持している者に対し,本人用歩行器のタイプとチャートで選択された歩行器のタイプを比較し,検討した。

【結果】
全体138名中では,116名(84.1%)が本人用歩行器とチャートで選択された歩行器が一致した。選定1のベースフレームの選択では,サドル付き体幹支持型歩行器(以下Aタイプ)は56名中53名が一致(一致率94.6%),体幹支持型歩行器(以下Bタイプ)は31名中21名が一致(一致率67.7%),前方支持型歩行器(以下Cタイプ)は26名中21名が一致(一致率80.8%),後方支持型歩行器(以下Dタイプ)は25名中21名(一致率84.0%)であった。選定2のオプションの選択については,選定1のベースフレームが4種,かつ選定2のオプションが13種類あり,その組み合わせとなると多種多様で,歩行器のベースフレームとの関係をつかむまでには至らなかった。
【考察】
4種のベースフレームの一致率は,全体138名中では,84.1%が一致しており,チャートを用いての歩行器選択は妥当であると判断する。一致率が最も低かったBタイプで,不一致だった10名については,本人用はAタイプを使用している者が8名であった。そのうち4名は成人で体重が重く,サドル付きでないと下肢の支持性の不足を補えないと判断されており,残り4名は知的障害が重く,より安全なタイプとしてAタイプの歩行器を所持していた。臨床でチャートを用いる場合,Bタイプの歩行器において考慮すべきところであるといえる。また,オプションについては,今回はチャートによる選択には至らなかったが,上下肢の支持性・コントロール能・運動の特性などの条件によってこれだけの選択肢があることを示しておくことだけでも歩行器の選択を行う上で有用と考える。
【理学療法学研究としての意義】
今回,小児分野における歩行器選択のチャートを考案し,その有効性を検証し,84.1%という高い一致率を得ることができた。サドル付き体幹支持型歩行器から後方支持型歩行器までの選択に役立つチャートとして,今後臨床場面に活かしていきたい。