[P2-B-0640] Crouching postureを呈する痙直型脳性麻痺者に対する超音波画像評価を使用した内側広筋および大腿直筋の特徴
Keywords:Crouching posture, 内側広筋, 筋厚
【はじめに,目的】
脳性麻痺(以下CP)は,上位運動ニューロン障害により痙縮がみられることがある。痙縮筋は,成長・発達段階で筋の短縮や拘縮などの運動器系の障害が加わり,その結果,関節可動域の減少,筋力が低下する可能性がある。またCP者の立位姿勢は,股・膝関節屈曲位であるCrouching postureを呈する場合があり,特に膝関節伸展最終域で働くとされる内側広筋は筋力低下が起こることが予想され,大腿直筋に比べ内側広筋がより萎縮している可能性がある。また下肢への荷重量の左右差による下肢筋の左右差が考えられる。
近年,超音波画像から定量的に筋厚を計測し,その再現性や妥当性が報告されている。また一般に筋力は筋横断面積と比例関係であり,筋厚は筋横断面積と非常に強い相関を示すことから,筋萎縮の評価指標として有効であると報告されている。しかし,超音波法を使用し,CP者の内側広筋と大腿直筋の特徴を検討した報告はない。
そこで本研究では,CP者と健常者の内側広筋および大腿直筋の筋厚を測定し,1)CP群と健常群間の比較,2)CP者の支持脚と非支持脚間の比較を明らかにすることを目的とした。
【方法】
<対象>成人の痙直型CP者17名(男性12名,女性5名,43.5±7.2歳,身長148.4±7.7cm,体重52.3±11.0kg)とした。Gross Motor Function Classification System(GMFCS)による運動機能の内訳は,レベルIIIが13名,IVが4名であった。取り込み基準は,起立または歩行可能なCrouching postureを呈した人とし,無作為抽出した。健常者は,17名(男性12名,女性5名,21.4±0.5歳,身長170.6±10.1cm,体重59.3±10.4kg)とした。
<筋厚測定>超音波画像装置(本多電子社製HS-2100),リニア型プローブ(HLS-575M,7.5MHz)を使用し,内側広筋厚および大腿直筋厚を測定し,内側広筋厚を大腿直筋厚で除した値を内側広筋率として算出した。測定肢位は背臥位,膝関節伸展0°,もしくは最大伸展位とした。内側広筋厚は内側膝関節裂隙から10cm近位,大腿直筋厚は膝蓋骨上縁と上前腸骨棘を結んだ直線の中間点とした。測定は,リニア型プローブを皮膚面に対して垂直に保持し,筋を圧迫しないように接触させた時の超音波画像を記録し,各筋における浅部筋膜から深部筋膜までの筋厚を測定した。また支持脚は問診および立位姿勢から決定した。
<統計処理>CP群と健常群間の比較はt検定,またはマン・ホイットニ検定を使用した。CP群の支持脚と非支持脚間の比較は,対応のあるt検定,またはウィルコクソン符号順位和検定を使用し,有意水準は全て5%とした。
【結果】
CP群と健常群間の比較では,CP群(内側広筋厚10.8±4.3mm,大腿直筋厚16.7±5.1mm,内側広筋率67.9±28.0%),健常群(内側広筋厚20.3±4.6mm,大腿直筋厚20.7±3.3mm,内側広筋率97.9±17.1%)であり,全項目で有意差が認められた。また,CP者の支持脚と非支持脚間の比較では,支持脚(内側広筋厚10.8±4.3mm,大腿直筋厚16.7±5.1mm,内側広筋率67.9±28.0%),非支持脚(内側広筋厚10.3±5.0mm,大腿直筋厚14.7±5.9mm,内側広筋率81.8±46.0%)であり,大腿直筋厚で有意差が認められ,内側広筋厚および内側広筋率では有意差が認められなかった。CP者における膝関節屈曲拘縮の平均角度は,支持脚で-30.2±14.6°,非支持脚で-32.3±13.9°であった。
【考察】
健常者では,内側広筋厚と大腿直筋厚が同様の値であり,内側広筋率は100%に近い値となった。それに対し,CP者では,大腿直筋厚と比べて内側広筋厚がより低下しており,内側広筋率は健常者に比べ低値を示した。この結果は,CP者の立位姿勢の膝関節屈曲位により,大腿直筋と比べて内側広筋の筋活動がより低下していることを示唆している。また痙縮や活動量の低下による成長障害や,日常生活での移動を最大運動機能で行わないことによる廃用性筋萎縮の影響で,CP者の筋厚は低下していると考えられる。
CP者の支持脚と非支持脚間の比較では,大腿直筋厚で有意差が認められた。荷重量の多い支持脚では,大腿直筋の筋活動の増大により筋厚も高値を示し,内側広筋は筋活動の低下により,支持脚と非支持脚間で有意差が認められなかったと考えられる。また,支持脚と比較し非支持脚の内側広筋率が高値を示したのは,非支持脚の内側広筋厚および大腿直筋厚がともに低下しており,各測定値間の差が小さくなったためと考える。
【理学療法学研究としての意義】
Crouching postureを呈する痙直型CP者は,大腿直筋厚に比べ内側広筋厚がより低下していることが示唆された。Crouching postureには,内側広筋の筋力低下が関連している可能性がある。
脳性麻痺(以下CP)は,上位運動ニューロン障害により痙縮がみられることがある。痙縮筋は,成長・発達段階で筋の短縮や拘縮などの運動器系の障害が加わり,その結果,関節可動域の減少,筋力が低下する可能性がある。またCP者の立位姿勢は,股・膝関節屈曲位であるCrouching postureを呈する場合があり,特に膝関節伸展最終域で働くとされる内側広筋は筋力低下が起こることが予想され,大腿直筋に比べ内側広筋がより萎縮している可能性がある。また下肢への荷重量の左右差による下肢筋の左右差が考えられる。
近年,超音波画像から定量的に筋厚を計測し,その再現性や妥当性が報告されている。また一般に筋力は筋横断面積と比例関係であり,筋厚は筋横断面積と非常に強い相関を示すことから,筋萎縮の評価指標として有効であると報告されている。しかし,超音波法を使用し,CP者の内側広筋と大腿直筋の特徴を検討した報告はない。
そこで本研究では,CP者と健常者の内側広筋および大腿直筋の筋厚を測定し,1)CP群と健常群間の比較,2)CP者の支持脚と非支持脚間の比較を明らかにすることを目的とした。
【方法】
<対象>成人の痙直型CP者17名(男性12名,女性5名,43.5±7.2歳,身長148.4±7.7cm,体重52.3±11.0kg)とした。Gross Motor Function Classification System(GMFCS)による運動機能の内訳は,レベルIIIが13名,IVが4名であった。取り込み基準は,起立または歩行可能なCrouching postureを呈した人とし,無作為抽出した。健常者は,17名(男性12名,女性5名,21.4±0.5歳,身長170.6±10.1cm,体重59.3±10.4kg)とした。
<筋厚測定>超音波画像装置(本多電子社製HS-2100),リニア型プローブ(HLS-575M,7.5MHz)を使用し,内側広筋厚および大腿直筋厚を測定し,内側広筋厚を大腿直筋厚で除した値を内側広筋率として算出した。測定肢位は背臥位,膝関節伸展0°,もしくは最大伸展位とした。内側広筋厚は内側膝関節裂隙から10cm近位,大腿直筋厚は膝蓋骨上縁と上前腸骨棘を結んだ直線の中間点とした。測定は,リニア型プローブを皮膚面に対して垂直に保持し,筋を圧迫しないように接触させた時の超音波画像を記録し,各筋における浅部筋膜から深部筋膜までの筋厚を測定した。また支持脚は問診および立位姿勢から決定した。
<統計処理>CP群と健常群間の比較はt検定,またはマン・ホイットニ検定を使用した。CP群の支持脚と非支持脚間の比較は,対応のあるt検定,またはウィルコクソン符号順位和検定を使用し,有意水準は全て5%とした。
【結果】
CP群と健常群間の比較では,CP群(内側広筋厚10.8±4.3mm,大腿直筋厚16.7±5.1mm,内側広筋率67.9±28.0%),健常群(内側広筋厚20.3±4.6mm,大腿直筋厚20.7±3.3mm,内側広筋率97.9±17.1%)であり,全項目で有意差が認められた。また,CP者の支持脚と非支持脚間の比較では,支持脚(内側広筋厚10.8±4.3mm,大腿直筋厚16.7±5.1mm,内側広筋率67.9±28.0%),非支持脚(内側広筋厚10.3±5.0mm,大腿直筋厚14.7±5.9mm,内側広筋率81.8±46.0%)であり,大腿直筋厚で有意差が認められ,内側広筋厚および内側広筋率では有意差が認められなかった。CP者における膝関節屈曲拘縮の平均角度は,支持脚で-30.2±14.6°,非支持脚で-32.3±13.9°であった。
【考察】
健常者では,内側広筋厚と大腿直筋厚が同様の値であり,内側広筋率は100%に近い値となった。それに対し,CP者では,大腿直筋厚と比べて内側広筋厚がより低下しており,内側広筋率は健常者に比べ低値を示した。この結果は,CP者の立位姿勢の膝関節屈曲位により,大腿直筋と比べて内側広筋の筋活動がより低下していることを示唆している。また痙縮や活動量の低下による成長障害や,日常生活での移動を最大運動機能で行わないことによる廃用性筋萎縮の影響で,CP者の筋厚は低下していると考えられる。
CP者の支持脚と非支持脚間の比較では,大腿直筋厚で有意差が認められた。荷重量の多い支持脚では,大腿直筋の筋活動の増大により筋厚も高値を示し,内側広筋は筋活動の低下により,支持脚と非支持脚間で有意差が認められなかったと考えられる。また,支持脚と比較し非支持脚の内側広筋率が高値を示したのは,非支持脚の内側広筋厚および大腿直筋厚がともに低下しており,各測定値間の差が小さくなったためと考える。
【理学療法学研究としての意義】
Crouching postureを呈する痙直型CP者は,大腿直筋厚に比べ内側広筋厚がより低下していることが示唆された。Crouching postureには,内側広筋の筋力低下が関連している可能性がある。