第50回日本理学療法学術大会

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発達障害理学療法3

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0643] 学童期脳性麻痺児の粗大運動能力低下の要因について

~身体発育との関での検討~

古川敦 (三重県立草の実リハビリテーションセンター)

キーワード:学童期, 脳性麻痺, 肥満指数

【はじめに,目的】
脳性麻痺児(以下CP児)の粗大運動能力は学童前から学童期前半までにピークをむかえるというのが一般的となっている。学童期中盤から後半にかけての低下の一因は,身体発育が著しい時期と重なることから関連づけられることも少なくない。今回,学童期前に粗粗大運動能力のピークをむかえるGMFSCレベルIVのCP児の粗大運動能力の低下について,身体発育と関連させ検討を行ったので報告する。
【方法】
1,調査対象
当センターで学童期に長期入所していたGMFSCレベルIVに相当するCP児を後見的に調査した。調査期間を1985年4月から2010年3月までとした。この期間内に7歳から18歳まで継続して身長,体重および粗大運動に関するデータを得ることができた20名を調査の対象とした。対象者の内訳は男児10名,女児10名,CPのタイプは痙直型18名,アテトーゼ型2名であった。
2,調査方法
情報の収集はカルテ等より行った。身体発育に関する数値として,身長および体重は入所児童に対し定期的に行われている身体測定結果を用いた。同時にこの数値からローレル指数を算出した。
3,分析方法
対象者のいずれもが低学年時に可能であった,手すりに両手でつかまっての立位保持能力を粗大運動能力の指標をして用いた。
対象者を「つかまり立ち能力は維持された群(以下,維持群,10名,男児4名,女児6名,痙直型9名)と「つかまり立ち能力が低下した群(以下,低下群,男児3名,女児7名,痙直型9名)に分類し比較検討を行った。
なお,両群間の男女比についてはχ2乗検定(Yatesの修正)を行い統計的に両群間に優位差がないことを確認した上で分析を行った。
両群間での比較項目を,各群の身長,体重,ローレル指数の平均値とした。まず,学童期の18年間を「低学年期(7歳から9歳)」「高学年期(10歳から12歳)」「中学生期(13歳から15歳)」「高校生期(16歳から18歳)の4つの年齢期間に分けた。それぞれの期間の中間値を各対象者の数値とし,その平均値を各群の値として比較に用いた。平均値の比較にはt検定を用いて有意差の有無の検討をした。
同時に調査機関内の施設内での移動手段やリハ内容についても情報を整理し身体発育や粗大運動能力との変化との関連も調査した。
【結果】
1,維持群と低下群との比較
身長および体重の比較では,両群館に有意な差は見られなかった。
一方,ローレル指数の比較では全ての年齢期間で有意な差が見られた。低学年期が維持群115.8に対し低下群で133.8(p<0.01),高学年期では維持群114.0に対し低下群126.3(p<0.05),中学生期が維持群115.3に対し低下群130.7(p<0.05),高校生期が維持群120.9に対し低下群141.5(p<0.05),であり全ての年齢期間で低下群が有意に高い数値を示した。
2,粗大運動の変化
低下群がつかまり立ち能力が低下した年齢期間は10名中,低学年期0名,高学年期1名,中学生期7名,高校生期2名であった。
3,理学療法(以下PT)内容の変化
低学年期の歩行器歩行練習から座位・立位レベルの内容に移行している。特にその傾向は低下群で見られた。ローレル指数の高さが,つかまり立ち能力に悪影響を及ぼしている可能性を示した。肥満傾向に向かうことが立位領域の粗大運動能力の阻害要因の1つであることが示された。一般的には極度の肥満とは言えないローレル指数130.7(中学生期)や141.5(高校生期)であったことは障害度の高さが余力の乏しさに結びついたと考えられる。「つかまり立ち」の行い難さがPTや生活内での能力発揮の機会の減少につながりさらに能力低下につながった可能性も考えられた。
【考察】
ローレル指数の高さが,つかまり立ち能力に悪影響を及ぼしている可能性を示した。肥満傾向に向かうことが立位領域の粗大運動能力の阻害要因の1つであることが示された。一般的には極度の肥満とは言えないローレル指数130.7(中学生期)や141.5(高校生期)であったことは障害度の高さが余力の乏しさに結びついたと考えられる。「つかまり立ち」の行い難さがPTや生活内での能力発揮の機会の減少につながりさらに能力低下につながった可能性も考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
学童期の粗大運動能力への影響因子を身体発育と関連し分析することは,乳幼児期のPTおよび生活指導に有用であると考えられる。