第50回日本理学療法学術大会

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地域理学療法7

2015年6月6日(土) 13:50 〜 14:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P2-B-0678] 車椅子の整備箇所と要整備を認めるまでの期間から車椅子委員会の整備点検を考える

足立晃一, 今田健, 木村誉 (社会福祉法人こうほうえん錦海リハビリテーション病院リハビリテーション技術部)

キーワード:整備点検, 整備期間, 車椅子委員会

【はじめに,目的】
車椅子利用者に対して個々の身体状況に合わせた車椅子を選択,提供することは重要であり,そのためには,常に最適な状態で車椅子が提供できる体制が必要である。当院では理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師,介護福祉士で構成されている車椅子委員会(以下,当委員会)があり,所有する車椅子の管理,運用方法の検討をしている。当委員会では平成22年4月より定期的に整備点検(以下,点検)を実施し,すべての車椅子が最適な状態で提供できるように努めている。平成25年4月より,これまでの点検結果をもとに車椅子点検チェックシートを変更した。本調査は,点検チェックシート変更後の整備状況を把握し,当委員会の点検を顧みることを目的とした。
【対象および方法】
当院で主に使用しているモジュラー型車椅子12台を対象とし,平成25年4月から平成26年10月までの点検結果より,整備を認めた点検箇所の件数と総点検件数に占める割合,一度点検してから次回点検するまでの日数とその際の各箇所別の整備の有無を後方視的に調査した。点検箇所については駆動輪の車軸の緩み(以下,車軸),適正な空気圧(以下,空気圧),ブレーキの効き具合(以下,ブレーキ),背角度調整の緩み(以下,背角),アームサポートの緩み(以下,アームサポート),フットサポートの高さや向き(以下,フットサポート),キャスターの緩み(以下,キャスター)とした。点検には当委員会で作成した,車椅子点検チェックシートを使用した。各点検箇所別の整備の有無をχ2検定にて比較した。点検までの日数と整備の有無から,受診者動作時特性曲線(以下,ROC曲線)を求め,整備が必要になる日数を予測した。統計処理にはR―Ver.2.8.1―を使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
総点検件数は202件であった。各点検箇所の件数は,車軸が33件(16.3%),空気圧が143件(70.4%),ブレーキが24件(11.8%),背角が6件(3.0%),アームサポートが13件(6.4%),フットサポートが71件(35.0%),キャスターが9件(4.4%)であった。χ2検定では各箇所において有意差が認められた。ROC曲線では,車軸の感度は59%,特異度は66%の場合であり,そのときのカットオフ値は21日であった。空気圧の感度は78%,特異度は59%,カットオフ値は17日,ブレーキの感度は53%,特異度は64%,カットオフ値は25日,背角の感度は54%,特異度は62%,カットオフ値は29日,アームサポートの感度は47%,特異度は74%,カットオフ値は35日,フットサポートの感度は58%,特異度は54%,カットオフ値は26日,キャスターの感度は56%,特異度は57%,カットオフ値は27日であった。
【考察】
要整備箇所の割合は空気圧,フットサポート,車軸の順で多く認められ,先行研究において不備が多い箇所として報告されている,空気圧,ブレーキ,フットサポートと近似しており,空気圧やフットサポートは異常が生じやすいことが考えられた。そのなかでも空気圧は頻回に整備を要し,カットオフ値も17日と最も日数が短くなった。空気圧の減少はブレーキの効きに影響を及ぼすことが考えられるため,17日までに点検を実施する必要性やチューブの変更を含めた,空気漏れを少なくする方法を検討していく必要性があると考えられた。フットサポートについては,ネジは振動が加わると緩みやすいという特性により,フットサポートに足を乗せる際の振動が不備につながっていることが考えられ,足をゆっくり乗せるなどの工夫が整備の必要性を減少させることが推察された。その他の箇所でもネジの緩みが要因となっていることが多く,現在取り組んでいるネジの増し締めや緩み止めの使用が整備の必要性の減少につながることが考えられた。現在の点検では,月1回全箇所を点検しており,今回の結果から,空気圧以外の箇所については20日に1回点検を実施すれば異常の発生を未然に防ぐことにつながることが推察された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士は理学療法領域で使用している機器の保全,管理は責務であるとの報告がある。車椅子点検結果を通じ,整備が必要になる箇所や期間を知ることは,車椅子が起因するインシデントやアクシデントを未然に防ぐことにつながると考える。