[P2-B-0681] 自宅の建替えにおける訪問指導及び住環境整備を工務店と連携して行った1事例
キーワード:住環境整備, 訪問指導, 福祉用具
【はじめに,目的】
在宅生活が円滑に過ごせるように在宅復帰に先立って,住環境整備を行う事,また必要に応じて本人同行での訪問指導を行う事は理学療法士にとって重要な役割の1つである。今回,自宅の建て替えを行う事例の自宅内外の住環境整備について,計画段階からコーディネートする機会を得た。その経験から理学療法士が果たすべき役割について詳細設計の確認・検討,本人同行での訪問指導,施工者に対する福祉用具選定の情報提供の3点から反省を踏まえて報告する。
【方法】
事例は76歳男性で,身長177cm,体重66kg,要介護度3,身体障害者等級1級である。平成25年5月上旬に心原性脳塞栓症を発症し,救急病院へ搬送され保存的に2週間の治療を受ける。その後回復期リハビリ病棟に約6ヶ月入院しリハビリ継続する。家族は入院中に車椅子での在宅生活に備えて自宅の建替えを開始する。自宅完成までのリハビリ継続目的で同年10月下旬に当施設に入所となる。その他の診断名は右加齢黄班変性症,両白内障,両緑内障があり,既往歴は右膝蓋骨骨折(平成23年),左大腿骨骨折(30歳代)である。
入所時の心身機能はBRS(RT)II-II-II,感覚重度鈍麻,混合型失語,SIAS30点,立位動作全般に介助が必要であり,FIM69点であった。入所から5ヶ月時点でSIAS37点,基本動作は寝返り~立位保持まで物的介助で自立,車椅子駆動自立,歩行は四点杖と短下肢装具使用し屋内監視,階段は手摺使用し軽介助,ADLは入浴以外自立しFIM93点となった。
入所から3ヶ月経過した1月下旬,自宅の内装工事の前段階に本人・家族及びA工務店(2級建築士2名)同行で1回目の訪問指導を実施した。外構工事は盛り土の段階であったが玄関までに階段が設置されることが判明する。家屋は木造2階建て,1階は玄関框を上がればバリアフリー設計であり,車椅子移動に支障はなかった。A工務店が提示した詳細設計からトイレの扉,トイレ内の配置,幅木の設置箇所を協議し,内装工事完成前に再度訪問することを約束する。
2月下旬A工務店に外構について問い合わせしメールで詳細設計を確認する。この時,初めて外溝工事はB工務店が担当していると判明する。外構の詳細設計には階段の下側手すりの水平部分が1段目の踏み面上にあり事例には昇降の困難さが推測された。設計は家族から駐車場確保の希望を汲んだ設計であるとB工務店から確認する。そのため,駐車場の広さを保持するため,ゆとりのあった踊り場側に階段を1段移すこと,並びに手すりや階段の設計についての提案をメールで行う。1週間後B工務店から了解の返信を受ける。
3月中旬に2回目の訪問指導することをB工務店に連絡する。2回目の訪問時点で外構工事は階段の形状は完成していたが踏み板や手すりは未設置であった。家屋は内装工事が概ね終了していた。本人に自宅内を移動してもらい,その場で玄関及びトイレ内の手すりや洗面台の配置を決定した。
【結果】
6月上旬に退所に同行し3回目の訪問指導を行う。外構の手すりは提案通りに設計されていたが高さが80cmで事例にはやや低く昇降しにくいものであった。自宅内は玄関框の昇降,生活空間の移動,トイレ内動作,ベッド移乗など施設内で習得した車椅子自立レベルの能力が発揮できた。
【考察】
建替えの早い段階で訪問を行うことで自宅周辺と自宅内の住環境が把握でき,在宅復帰に備えた必要な階段昇降練習や家族指導を取り入れることが可能となった。また工務店と連絡調整し,内装工事段階に本人同行で訪問指導を行ったことで生活しやすい住環境整備が可能となった。これは訪問指導の目的に沿った結果と言える。また訪問前に詳細設計などを取り寄せで情報収集し,事例とその家族の意向を踏まえて生活しやすいものであるか検討することは今後の訪問指導においても有効な手段であると言える。
一方,関与する工務店に本人同行での実地調整の必要性を理解してもらうよう働きかけ日程調整すること,また手すりなどの詳細設計は一般的な高さで設計されていても当事者の心身機能・構造や活動に適しているか検討し情報伝達することが必要であったと言える。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が中心となって住環境整備のコーディネートする時の訪問の時期・方法,情報収集の手段,関係者との調整の一助となる。
在宅生活が円滑に過ごせるように在宅復帰に先立って,住環境整備を行う事,また必要に応じて本人同行での訪問指導を行う事は理学療法士にとって重要な役割の1つである。今回,自宅の建て替えを行う事例の自宅内外の住環境整備について,計画段階からコーディネートする機会を得た。その経験から理学療法士が果たすべき役割について詳細設計の確認・検討,本人同行での訪問指導,施工者に対する福祉用具選定の情報提供の3点から反省を踏まえて報告する。
【方法】
事例は76歳男性で,身長177cm,体重66kg,要介護度3,身体障害者等級1級である。平成25年5月上旬に心原性脳塞栓症を発症し,救急病院へ搬送され保存的に2週間の治療を受ける。その後回復期リハビリ病棟に約6ヶ月入院しリハビリ継続する。家族は入院中に車椅子での在宅生活に備えて自宅の建替えを開始する。自宅完成までのリハビリ継続目的で同年10月下旬に当施設に入所となる。その他の診断名は右加齢黄班変性症,両白内障,両緑内障があり,既往歴は右膝蓋骨骨折(平成23年),左大腿骨骨折(30歳代)である。
入所時の心身機能はBRS(RT)II-II-II,感覚重度鈍麻,混合型失語,SIAS30点,立位動作全般に介助が必要であり,FIM69点であった。入所から5ヶ月時点でSIAS37点,基本動作は寝返り~立位保持まで物的介助で自立,車椅子駆動自立,歩行は四点杖と短下肢装具使用し屋内監視,階段は手摺使用し軽介助,ADLは入浴以外自立しFIM93点となった。
入所から3ヶ月経過した1月下旬,自宅の内装工事の前段階に本人・家族及びA工務店(2級建築士2名)同行で1回目の訪問指導を実施した。外構工事は盛り土の段階であったが玄関までに階段が設置されることが判明する。家屋は木造2階建て,1階は玄関框を上がればバリアフリー設計であり,車椅子移動に支障はなかった。A工務店が提示した詳細設計からトイレの扉,トイレ内の配置,幅木の設置箇所を協議し,内装工事完成前に再度訪問することを約束する。
2月下旬A工務店に外構について問い合わせしメールで詳細設計を確認する。この時,初めて外溝工事はB工務店が担当していると判明する。外構の詳細設計には階段の下側手すりの水平部分が1段目の踏み面上にあり事例には昇降の困難さが推測された。設計は家族から駐車場確保の希望を汲んだ設計であるとB工務店から確認する。そのため,駐車場の広さを保持するため,ゆとりのあった踊り場側に階段を1段移すこと,並びに手すりや階段の設計についての提案をメールで行う。1週間後B工務店から了解の返信を受ける。
3月中旬に2回目の訪問指導することをB工務店に連絡する。2回目の訪問時点で外構工事は階段の形状は完成していたが踏み板や手すりは未設置であった。家屋は内装工事が概ね終了していた。本人に自宅内を移動してもらい,その場で玄関及びトイレ内の手すりや洗面台の配置を決定した。
【結果】
6月上旬に退所に同行し3回目の訪問指導を行う。外構の手すりは提案通りに設計されていたが高さが80cmで事例にはやや低く昇降しにくいものであった。自宅内は玄関框の昇降,生活空間の移動,トイレ内動作,ベッド移乗など施設内で習得した車椅子自立レベルの能力が発揮できた。
【考察】
建替えの早い段階で訪問を行うことで自宅周辺と自宅内の住環境が把握でき,在宅復帰に備えた必要な階段昇降練習や家族指導を取り入れることが可能となった。また工務店と連絡調整し,内装工事段階に本人同行で訪問指導を行ったことで生活しやすい住環境整備が可能となった。これは訪問指導の目的に沿った結果と言える。また訪問前に詳細設計などを取り寄せで情報収集し,事例とその家族の意向を踏まえて生活しやすいものであるか検討することは今後の訪問指導においても有効な手段であると言える。
一方,関与する工務店に本人同行での実地調整の必要性を理解してもらうよう働きかけ日程調整すること,また手すりなどの詳細設計は一般的な高さで設計されていても当事者の心身機能・構造や活動に適しているか検討し情報伝達することが必要であったと言える。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が中心となって住環境整備のコーディネートする時の訪問の時期・方法,情報収集の手段,関係者との調整の一助となる。