[P2-B-0691] 屋外活動が困難な地域在住高齢者における床からの立ち上がり動作能力評価における測定の信頼性と物的介助の有無による測定結果の差異
キーワード:地域在住高齢者, 立ち上がり, 検査測定
【はじめに,目的】
和式生活を営む高齢の在宅障害者では,床上における長座位から起立して立位に至る動作,すなわち床からの立ち上がり動作が困難であることは,移動の開始が困難となり,屋内生活空間における活動範囲の狭小化や身体活動の低下をもたらす可能性があるため,その評価と介入が必要な対象者も少なくない。床からの立ち上がり動作は,動作の可否,パターン,所要時間などによって検討され,床からの立ち上がり動作の所要時間は歩行速度や下肢筋力と有意に関連すると報告されている。実際の在宅高齢者では床からの立ち上がり動作に支持台などの物的介助となる環境の有無によって動作の可否や程度に影響を及ぼすが,その際の測定の信頼性や評価結果の違いについては十分に検討されていない。本研究では,屋外活動が困難な地域在住高齢者において,床からの立ち上がり動作の所要時間による測定・評価の信頼性を検討するとともに,物的介助の有無による評価結果の差異ついて検証することを目的とした。
【方法】
床からの立ち上がり動作を独力で遂行可能で,訪問リハビリテーションを利用する地域在住高齢者27人(平均年齢75.2±12.4歳)を対象に,床からの立ち上がり動作のパフォーマンス(TSF)を調査した。TSFは,長座位から人的介助を伴わずに立位に至るまでの最速の所要時間を測定した。測定にあたり対象者には,測定開始肢位である長座位からできるだけ速く立ち上がって静止立位をとるように教示した。TSFは,40cm程度の高さの支持台を用いずに実施する条件(物的介助なし条件)と支持台を用いて実施する条件(物的介助あり条件)の2条件で,2回ずつ測定を実施した。また,床からの立ち上がり動作の習慣性を確認するために,日常的な1日あたりの床からの立ち上がり動作実施回数を調査した。
【結果】
物的介助あり条件のTSFでは対象者全員が測定可能で,物的介助なし条件のTSFは全対象者27人中12人が測定不可であった。各条件で測定したTSFの検査-再検査信頼性を検討するために級内相関係数(ICC)を算出した結果,物的介助なし条件(n=27)ではICC(1,1)=0.914,ICC(1,2)=0.955,物的介助あり条件(n=15)ではICC(1,1)=0.976,ICC(1,2)=0.988と高い値を示した。床からの立ち上がり動作遂行に対する物的介助の必要の有無で対象者を2群に分けて物的介助あり条件のTSFを対応のないt検定で比較した結果,物的介助必要群(13.7±10.2秒)は物的介助不要群(5.9±3.6秒)に比べて有意に高い値を示した。また,物的介助なし条件でTSFが測定可能であった人を対象に,物的介助の有無によるTSFの測定値を対応のあるt検定にて比較した結果,物的介助あり条件(6.2±3.6秒)と物的介助なし条件(5.9±3.6秒)の間に有意差は認められなかった。さらに,各条件のTSFと日常的な1日あたりの床からの立ち上がり動作実施回数とのSpearman順位相関係数を算出した結果,いずれのTSFにおいても有意な相関は認められなかった。
【考察】
2回測定した際の各条件におけるTSFの再現性はICC(1,1)およびICC(1,2)ともに臨床的に有用とされる高い値を示したことから,物的介助の有無を問わずTSFは再現性高く測定することが可能であると考えられた。物的介助必要群では物的介助不要群と比べて有意にTSFの成績が低かったことから,床からの立ち上がり動作に物的介助が必要となる対象者は動作能力が低下していると推察された。また,物的介助なしでTSFが測定可能であった対象者では物的介助の有無による測定値の有意差は認められなかったことから,物的介助なし条件で床からの立ち上がり動作を実施可能な人では物的介助の有無に関わらず床からの立ち上がり動作が同等に実施可能であると考えられた。さらに,各条件のTSFと床からの立ち上がり動作の日常的な実施回数との間に有意な相関が認められなかったことから,床からの立ち上がり動作の習慣性や必要性によって必ずしも床からの立ち上がり動作能力が増減するとは限らないと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動の遂行が困難な在宅高齢者において,床からの立ち上がり動作の所要時間は物的介助となる支持台の使用有無に関わらず再現性高く測定可能であり,床からの立ち上がり動作実施のために物的介助が必要な対象者は動作障害が重度となる特性を示唆した。
和式生活を営む高齢の在宅障害者では,床上における長座位から起立して立位に至る動作,すなわち床からの立ち上がり動作が困難であることは,移動の開始が困難となり,屋内生活空間における活動範囲の狭小化や身体活動の低下をもたらす可能性があるため,その評価と介入が必要な対象者も少なくない。床からの立ち上がり動作は,動作の可否,パターン,所要時間などによって検討され,床からの立ち上がり動作の所要時間は歩行速度や下肢筋力と有意に関連すると報告されている。実際の在宅高齢者では床からの立ち上がり動作に支持台などの物的介助となる環境の有無によって動作の可否や程度に影響を及ぼすが,その際の測定の信頼性や評価結果の違いについては十分に検討されていない。本研究では,屋外活動が困難な地域在住高齢者において,床からの立ち上がり動作の所要時間による測定・評価の信頼性を検討するとともに,物的介助の有無による評価結果の差異ついて検証することを目的とした。
【方法】
床からの立ち上がり動作を独力で遂行可能で,訪問リハビリテーションを利用する地域在住高齢者27人(平均年齢75.2±12.4歳)を対象に,床からの立ち上がり動作のパフォーマンス(TSF)を調査した。TSFは,長座位から人的介助を伴わずに立位に至るまでの最速の所要時間を測定した。測定にあたり対象者には,測定開始肢位である長座位からできるだけ速く立ち上がって静止立位をとるように教示した。TSFは,40cm程度の高さの支持台を用いずに実施する条件(物的介助なし条件)と支持台を用いて実施する条件(物的介助あり条件)の2条件で,2回ずつ測定を実施した。また,床からの立ち上がり動作の習慣性を確認するために,日常的な1日あたりの床からの立ち上がり動作実施回数を調査した。
【結果】
物的介助あり条件のTSFでは対象者全員が測定可能で,物的介助なし条件のTSFは全対象者27人中12人が測定不可であった。各条件で測定したTSFの検査-再検査信頼性を検討するために級内相関係数(ICC)を算出した結果,物的介助なし条件(n=27)ではICC(1,1)=0.914,ICC(1,2)=0.955,物的介助あり条件(n=15)ではICC(1,1)=0.976,ICC(1,2)=0.988と高い値を示した。床からの立ち上がり動作遂行に対する物的介助の必要の有無で対象者を2群に分けて物的介助あり条件のTSFを対応のないt検定で比較した結果,物的介助必要群(13.7±10.2秒)は物的介助不要群(5.9±3.6秒)に比べて有意に高い値を示した。また,物的介助なし条件でTSFが測定可能であった人を対象に,物的介助の有無によるTSFの測定値を対応のあるt検定にて比較した結果,物的介助あり条件(6.2±3.6秒)と物的介助なし条件(5.9±3.6秒)の間に有意差は認められなかった。さらに,各条件のTSFと日常的な1日あたりの床からの立ち上がり動作実施回数とのSpearman順位相関係数を算出した結果,いずれのTSFにおいても有意な相関は認められなかった。
【考察】
2回測定した際の各条件におけるTSFの再現性はICC(1,1)およびICC(1,2)ともに臨床的に有用とされる高い値を示したことから,物的介助の有無を問わずTSFは再現性高く測定することが可能であると考えられた。物的介助必要群では物的介助不要群と比べて有意にTSFの成績が低かったことから,床からの立ち上がり動作に物的介助が必要となる対象者は動作能力が低下していると推察された。また,物的介助なしでTSFが測定可能であった対象者では物的介助の有無による測定値の有意差は認められなかったことから,物的介助なし条件で床からの立ち上がり動作を実施可能な人では物的介助の有無に関わらず床からの立ち上がり動作が同等に実施可能であると考えられた。さらに,各条件のTSFと床からの立ち上がり動作の日常的な実施回数との間に有意な相関が認められなかったことから,床からの立ち上がり動作の習慣性や必要性によって必ずしも床からの立ち上がり動作能力が増減するとは限らないと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動の遂行が困難な在宅高齢者において,床からの立ち上がり動作の所要時間は物的介助となる支持台の使用有無に関わらず再現性高く測定可能であり,床からの立ち上がり動作実施のために物的介助が必要な対象者は動作障害が重度となる特性を示唆した。