[P2-B-0706] 地域在住高齢者の運動機能,要介護リスク関連指標としての立ち上がりテストの有用性
Keywords:地域在住高齢者, 立ち上がりテスト, 要介護リスク
【はじめに,目的】
ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称,ロコモ)とは2007年に日本整形外科学会が提唱し,運動器の障害により要介護になるリスクが高い状況にあることを指す概念である。特に,平成25年度に改定された健康日本21(第2次)において,このロコモティブシンドロームの認知度向上と発症予防が新たな課題として加わっている。このロコモティブシンドロームの危険度を判定する評価指標として,ロコモ度テストが考案され,その一つに立ち上がりテストがある。この立ち上がりテストは,10~40cm台から両脚もしくは片脚で立ち上がれるかどうかを評価するものであり,先行研究において高齢者の下肢筋力の指標としての有用性が報告されている。しかし,実際の運動機能や要介護リスク関連指標との関連性は明らかではない。そこで本研究の目的は,ロコモ度テストとして用いられている立ち上がりテストと,地域在住高齢者の運動機能,要介護リスクの関連性を検証することとした。
【方法】
対象は京都府京田辺市の健康イベントに参加した,要介護認定を受けていない地域在住高齢者45名(71.4±6.6歳)とした。顕著な認知機能低下,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者の運動機能として,立ち上がりテスト,10m通常・最大歩行速度,片脚立位時間,握力を測定した。立ち上がりテストは,前述の立ち上がり動作を日本整形外科学会に準じて測定した。そして,立ち上がりテストは,両足40,30,20,10cmをそれぞれ0(最低点),1,2,3点とし,片脚40,30,20,10cmをそれぞれ4,5,6,7(最高点)点として計8段階のスコアに分類して解析に用いた。また,要介護リスクの指標として,介護予防基本チェックリスト(厚生労働省)を自記式にて調査し,総該当数(25項目)と運動機能低下リスク該当数(5項目)を算出した。なお,これらは該当数が多いほど,要介護リスクが高くなることを意味する。統計解析としては,立ち上がりテストスコアの下位1/4(四分位点)をロースコア群,それ以外をハイスコア群とし,両群における各測定項目の群間比較を行なった。また,立ち上がりテストスコアと各測定項目の相関関係をスピアマンの順位相関分析を用いて検討した。さらに,従属変数に上記で有意な関連性をみとめた項目を,独立変数に立ち上がりテストスコアを,それに調整変数として年齢,性別,BMIを投入した重回帰分析(強制投入法)を行なった。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
立ち上がりテストスコアの下位1/4(四分位点)は,3/4点(片脚で40cm台から立ち上がれるか否か)であった。ロースコア群,ハイスコア群間で,10m最大歩行速度,片脚立位時間,握力,基本チェックリスト総該当数および運動機能低下リスク該当数で有意な差を認めた(p<0.05)。また,立ち上がりテストスコアは,10m最大歩行速度(ρ=0.461,p<0.01),片脚立位時間(ρ=0.615,p<0.001),基本チェックリスト総該当数(ρ=-0.346,p<0.05)および運動機能低下リスク該当数(ρ=-0.488,p<0.01)と有意な相関関係を認めた。さらに,立ち上がりテストスコアは,年齢,性別,BMIで調整しても,片脚立位時間,基本チェックリスト総該当数と有意な関連性を認めた(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,40cm台から片脚で立ち上がれる高齢者は立ち上がれない高齢者と比較して,運動機能が高く,要介護リスクが低いことが示唆された。また,立ち上がりテストは,10m歩行速度や片脚立位時間といった下肢を中心とした運動機能と関連し,さらに要介護リスクとの関連性を認めた。立ち上がり動作は日常生活における中心的な動作の一つであることから,ロコモ度テストとしての立ち上がりテストは,地域在住高齢者の運動機能や要介護リスクを簡便に反映したと考える。今後は大規模な縦断的研究を行ない,この立ち上がりテストの結果が,運動機能の低下や転倒,要介護リスクを予測する指標としての有用性を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
ロコモティブシンドロームの評価指標の一つである立ち上がりテストは,高齢者の運動機能や要介護リスクと関連することが明らかになった。これは,立ち上がりテストが高齢者の運動機能低下や要介護リスクを簡便に評価できる指標であることを明らかにしたものであり,今後の予防理学療法分野を中心とした理学療法学研究の発展に有意義な結果であると考える。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称,ロコモ)とは2007年に日本整形外科学会が提唱し,運動器の障害により要介護になるリスクが高い状況にあることを指す概念である。特に,平成25年度に改定された健康日本21(第2次)において,このロコモティブシンドロームの認知度向上と発症予防が新たな課題として加わっている。このロコモティブシンドロームの危険度を判定する評価指標として,ロコモ度テストが考案され,その一つに立ち上がりテストがある。この立ち上がりテストは,10~40cm台から両脚もしくは片脚で立ち上がれるかどうかを評価するものであり,先行研究において高齢者の下肢筋力の指標としての有用性が報告されている。しかし,実際の運動機能や要介護リスク関連指標との関連性は明らかではない。そこで本研究の目的は,ロコモ度テストとして用いられている立ち上がりテストと,地域在住高齢者の運動機能,要介護リスクの関連性を検証することとした。
【方法】
対象は京都府京田辺市の健康イベントに参加した,要介護認定を受けていない地域在住高齢者45名(71.4±6.6歳)とした。顕著な認知機能低下,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。全ての対象者の運動機能として,立ち上がりテスト,10m通常・最大歩行速度,片脚立位時間,握力を測定した。立ち上がりテストは,前述の立ち上がり動作を日本整形外科学会に準じて測定した。そして,立ち上がりテストは,両足40,30,20,10cmをそれぞれ0(最低点),1,2,3点とし,片脚40,30,20,10cmをそれぞれ4,5,6,7(最高点)点として計8段階のスコアに分類して解析に用いた。また,要介護リスクの指標として,介護予防基本チェックリスト(厚生労働省)を自記式にて調査し,総該当数(25項目)と運動機能低下リスク該当数(5項目)を算出した。なお,これらは該当数が多いほど,要介護リスクが高くなることを意味する。統計解析としては,立ち上がりテストスコアの下位1/4(四分位点)をロースコア群,それ以外をハイスコア群とし,両群における各測定項目の群間比較を行なった。また,立ち上がりテストスコアと各測定項目の相関関係をスピアマンの順位相関分析を用いて検討した。さらに,従属変数に上記で有意な関連性をみとめた項目を,独立変数に立ち上がりテストスコアを,それに調整変数として年齢,性別,BMIを投入した重回帰分析(強制投入法)を行なった。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
立ち上がりテストスコアの下位1/4(四分位点)は,3/4点(片脚で40cm台から立ち上がれるか否か)であった。ロースコア群,ハイスコア群間で,10m最大歩行速度,片脚立位時間,握力,基本チェックリスト総該当数および運動機能低下リスク該当数で有意な差を認めた(p<0.05)。また,立ち上がりテストスコアは,10m最大歩行速度(ρ=0.461,p<0.01),片脚立位時間(ρ=0.615,p<0.001),基本チェックリスト総該当数(ρ=-0.346,p<0.05)および運動機能低下リスク該当数(ρ=-0.488,p<0.01)と有意な相関関係を認めた。さらに,立ち上がりテストスコアは,年齢,性別,BMIで調整しても,片脚立位時間,基本チェックリスト総該当数と有意な関連性を認めた(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果,40cm台から片脚で立ち上がれる高齢者は立ち上がれない高齢者と比較して,運動機能が高く,要介護リスクが低いことが示唆された。また,立ち上がりテストは,10m歩行速度や片脚立位時間といった下肢を中心とした運動機能と関連し,さらに要介護リスクとの関連性を認めた。立ち上がり動作は日常生活における中心的な動作の一つであることから,ロコモ度テストとしての立ち上がりテストは,地域在住高齢者の運動機能や要介護リスクを簡便に反映したと考える。今後は大規模な縦断的研究を行ない,この立ち上がりテストの結果が,運動機能の低下や転倒,要介護リスクを予測する指標としての有用性を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
ロコモティブシンドロームの評価指標の一つである立ち上がりテストは,高齢者の運動機能や要介護リスクと関連することが明らかになった。これは,立ち上がりテストが高齢者の運動機能低下や要介護リスクを簡便に評価できる指標であることを明らかにしたものであり,今後の予防理学療法分野を中心とした理学療法学研究の発展に有意義な結果であると考える。